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II 新生パーティ結成


「このままだと、申請を認可できません。」


と、ギルド受付の女性から書類を返される。

早速冒険者ギルドのパーティ申請をしにきたのに、パーティを組めない…だと…



「何か不備とかありました?」

淡々と仕事をこなすクールビューティーの受付さんに、改めて聞き返した。



昨日あんなにパーティについて話したのに、パーティ申請に不備があったなんて、、、

ん?なんか後ろから

「この人大丈夫か?」みたいな視線が当たっているような…



「あ、説明足りなくて、ごめんなさい。先にあちらの職業適正と魔術適正を受けてください。パーティ申請の時に虚偽の申請をされたら困るので。」

ほっ…

なるほど、申請する前にやることあるのね。

全然知らんかった。



「ごめん。先に職業適正と魔術適正を受ける必要があるんだって」

申請受付の後ろで待っていたアリスとカンナに説明した。

「「あ、やっぱり」」

「え?二人とも知ってたの?」

「何回かパーティ組んでた時に適正審査はしていたので。」

「新人研修で教わったッス。」

「教えてくれても良くない!?」

「「元【クジ】のメンバーだから、その辺免除なのかと思って」」

【クジ】の中でも最底辺だった僕がそんな特権持ってるわけが…

デントはそんな特権持ってんのかな?

それにしても、あんたたち仲良すぎない?

エルフとドワーフって仲悪いんじゃなかったっけ??



「「??」」



「まぁ、いいや!ともかく適正審査に向かおう!」



=========



そう言えば、適正審査なんていつ以来だ?

昔、王都に来る前に田舎のギルドで適正なしになったんだよな…



「ユージさん、審査の順番どうする?」

「ああ、僕は最後にしてくれ。多分、後の人が時間かかっちゃうから。」

「「???」」



「了解ッス!じゃあ自分から!!」



昔も大変だったんだよな。その時も自分が最後だったから待ってる人達の迷惑にならずに済んだんだけど…



数分後…



茶色光りが部屋から輝き、中から胸を抑えながら出てくるカンナ。

「ふぅ…緊張したッス。」

「カンナちゃんどうだった?」

「土属性の前衛職ッス!」



まぁ、そうだよね!

イメージ通り!



「じゃあ、次は私が行ってくるね!」



少し緊張気味に適正検査室に向かうアリス。



アリスが入って数分後…



青色の輝きが部屋からあふれ、ニコニコと適性検査室から出てくるアリス。

「私は水属性のヒーラーだったよ!ちょっと、魔力が増えてたよ!」



ほう……

エルフの看護婦さん…いいね!(チクッ!)



「ユージさん!次ッスよ?」



「気が進まないけど、行ってくるよ…」



「「頑張ってください(ッス)!」」



適正検査室には担当のギルド職員さんと、いかにも怪しげな占い師のそれのような、両手でやっと持てるほどの水晶が置かれていた。

田舎の鑑定水晶より一回りでかいな。これなら大丈夫かも…?



「あ、一応ちょっと離れていた方がいいですよ。」



すぐ真横で確認しようと構えているギルド職員さんに一言注意をする。



「なぜです?近くで確認されるとまずいことでもあるのですか?」

「一応注意はしましたからね?」



僕を訝しんでいるのか、ピッタリとくっつくほど近くで水晶を確認しようとする職員さん。



「じゃあ、始めますね。」



水晶に手をかざし、魔力を込める。



水晶が光り輝く!!

・・・ことはなかった。



<適正なし>の反応を見たのが始めてなのか、職員さんはどうしたものかと戸惑っていた。

すると、水晶から徐々に音が響き、ひびが入っていき、しまいには内側から割れてしまう。



飛び散った水晶の破片が職員を襲う!



割れた瞬間、職員を割れた破片が届かないところまで引き離す。

何が起こったのかわからないまま、その場で固まってしまう職員。



(あぁ、やっぱりダメだったか。前回も同じように水晶割っちゃって、適性なしになったんだよな…)



一瞬呆けた顔をした職員であったが、何が起こったか理解したのか、すぐに行動に移した。



「しょ、少々お待ちください!別の職員に確認してきます!」



そういいながら、検査室を飛び出していった。

今回の担当は新人さんだったのかな?

魔術適正なしの人は確かに少ないけど、あんな慌てて上司を呼びに行かなくても…



「ユージさん!何があったんですか!?」

「なんかすっごい音が聞こえたッスけど!?」



職員さんと入れ替わりで検査室に入ってくるアリスとカンナ。



「あー、実は水晶壊しちゃって…」

「「ええぇぇーーーーー!」」

「そんなの聞いたことないですよ!?」

「え?」



「おいおい…うっせーなぁ。声が外まで響いてるんだよ…」



そう言いつつ、検査室の扉をかがみながら入ってくる人物が入ってきた。



「おいおい、何かの冗談だろ?お前かよユージ。」

「キンヤギルド長!!お久しぶりです!実は水晶を割っちゃいまして、、、」



キンヤギルド長とは、前のパーティ【クジ】の時にいろいろとお世話になった間柄だ。

嫌々な対応をしているが、ただのめんどくさがりで根はいいギルド長だ。

あれ?ギルド長の手になんかさっきのより二回りほど大きい水晶玉が…?



「ユージ!もう一度、この水晶玉に魔力を込めてくれ。」

「わ、わかりました…一応、離れていてください。」



ギルド長が持ってきた水晶玉を割れてしまった水晶玉と同じ位置に置き、再度魔力を流し込む。

先ほどと同じく、水晶玉は光り輝くことはなく、水晶の内側から割れる音が響いてくる。

最終的に二回り大きい水晶玉も先ほどの水晶と同じように砕け散ってしまった。



「「・・・・」」



水晶玉が砕け散ったことに驚き唖然とする一同。



「おいおい、まじか…

ユージ!ちなみにあとどれぐらい魔力を込められそうだ?」

「まだ、やるんですか?

このギルドにどれだけ水晶があるかは知らないですが、

あるだけ込められると思いますよ?

全部割っても文句言わないでくださいよ!」

「はははは!お前どんだけだよ!?

誰が、お前を魔術適正なしって判断下したんだ?」



げらげらと笑うキンヤギルド長を見てるとなんだか恥ずかしくなってきた。



「どういうことだよ!説明してくれよ、ギルド長!!」

「すまんすまん。ちなみに、そこの娘達の検査は終わってるんだよな?」



コクリとうなずくアリスとカンナ。



「部屋から光りが漏れていたと思うんだが、大体はその色によって、属性が決まる。

じゃあ、ユージ。お前が検査をしたときに光らなかったのはなぜだと思う?」

「なぜって……言われても…」

「それぞれの属性は、土属性は茶色、水属性は青、炎属性は赤で、風属性は緑、光属性は白、闇属性は黒、」

「他に属性ってあったっけ?」



それぞれの属性と色を出した僕に、疑問に思うアリス。



「もしかして…新」

「そう!全属性だ。」



あ、思わず、この世界になかった新しい属性なのかと思ったが、

ギルド長の食い気味なセリフに違うのだと理解した。

ちょっと、気まずい空気が流れたが、その空気を戻すために、ギルド長が説明を進める。



「ごほんっ、さらにお前は、簡単に水晶玉を割って見せたな。」

「はい。」

「水晶玉を割るには相当な魔力量が必要になる。それを難なく割って見せたんだ。

お前の魔力量も相当なものってことだ!」

「はぁ……」



まだ自分が全属性持ちという実感がわかずにギルド長には微妙な返事を返してしまう。



「まだ、実感がわかないようだな。

よし、ちょっとついてこい。」



==============



そういいつつギルド長は、関係者以外立ち入り禁止の場所へと案内してくれる。

一回り大きい扉を開けると、そこには剣を振り回してもぶつからない程の広さと、人型の鉄の塊や、鉄の棒の先に鉄の塊がくっついたようなものなど、武器としては使え無さそうなものが、綺麗に並べられていた。

「ここは?」

「トレーニングルームッスか?」



アリスもカナンもなぜ立ち入り禁止エリアにトレーニングルームがあるのか疑問に思っていた。



「ここは、俺専用のトレーニングエリアだ。

俺も緊急時には戦わなきゃいけねぇが仕事でギルドから抜けられねぇからな。

時間が空いた時にここで鍛えてるってわけだ。

ほれっ。」



説明しながら、次々と本を投げてくるギルド長。

何回か左右の手を行ったり来たりして、何とか受け取った本を開いてみる。

そこには、各属性の基本魔術について書かれていた。



「ここで一通り基本の魔術を使ってみるといい。

ここまで魔術を使ってこなかった奴が初めて魔術を使うんだ。

ここなら相当なことがない限り壊れないから安心して試せ。

落ち着いたら、外の職員に声をかけて、執務室まで来てくれ。

じゃ、俺は仕事があるから、これで。」



そういいつつ、トレーニングルームに僕たちパーティを残し、仕事に戻っていくギルド長。

アリスとカンナと基本魔術の本を頼りに、魔術の練習をすることに…



ギルド長のトレーニングルームを借りて数時間、

部屋を壊すことはなかったが、ギルド全体を揺らすこと数回。

後にギルド長の怒りが爆発した日などと呼ばれるがそれはまた別の話。



「おう、思ったより時間がかかったな。

早速なんだが、お前たちに依頼を頼みたい。」



執務室に入るなり、ギルド長は依頼の説明を始めた。



==============



「今回はよろしくお願いします。」



パーティ申請から数日、

僕たちは王都から隣町までの護衛の依頼を受けていた。

何やらギルド長が最近懇意にしている商人さんらしい。

安全に隣町まで送り届けたいが、まだ小さい商店で、そこまでお金はかけられず、高ランク冒険者を雇うお金はないとのこと。

そこで、僕たちにこの依頼が回ってきたのだ。



初心者パーティがよくやる薬草探しよりいくらか身になるから全然いいけどね!



王都から隣町へはしっかりと街道が通っている。

その街道以外は、石造りの門で区切られ、

門番の検問が敷かれている。

また、時間外の出入りができないように、堀を作り、時間外は橋を上げ出入り出来ないようにしている。

王都の中心街に行くのにその門を2つ通る必要がある。

その門を通り抜け、街道へ出ると、森へ続く道と、遠回りになるが、森を迂回する道へと分かれる。



今回は、早急に届ける必要があるとのことで、森へ続く道を通る必要があるとのこと。



さらに、その森に最近商人を襲う盗賊が出没しているらしく、今回の商品を一つでも盗られるわけにはいかないと、ギルド長から念を押されていた。



「そろそろ森に入りますね。」

「ああ、商人さん。馬車に乗せてもらいますね。」

「は、はい!お願いします!」



盗賊の目撃情報が上がっていた森へ入ったため、馬車を操作している商人さんにも緊張が走る。



しばらく森を進み、人気がなくなる頃に・・・

・・・

・・・

森の奥からゾロゾロと盗賊が出てくる。



ま!当然、襲われるよね!!



「さっさと荷を置いていけば、見逃してやるぜぇ?」



盗賊のリーダーと思われる男が前に出てくる。

商人を守るために、僕たち冒険者も馬車から降りる。



「おお?いい女も連れてるじゃねぇか。

そこの女達も置いていってもらおうか?へへっ。

逆らおうと思うなよ?この人数相手に何も…」



盗賊のリーダーの言う通り、馬車の前後の道を塞ぐほどの盗賊が現れる。



「おっと」

「ぎゃぁぁあああ」

盗賊のリーダーが言い切る前に、こちらから魔法を放つ。

出来るリーダーだったのか、突然の魔法にも反応して避けられたが、その後ろの部下の大体はその魔法で倒れていた。



「ちっ!やりやがったな!!お前らやっちまえ!」



「アリス、カンナ、後ろ任せた。」

「うん!」

「了解ッス!」



後ろの盗賊を二人に任せ、

前方のリーダーと残党に目を向ける。

突撃してくる残党を魔法で軽くあしらい、

後ろで様子を見ているリーダーには後ろから、魔法を浴びせる。

リーダーの体には燃えるような痛み、水中にいるかのような息苦しさ、風に裂かれるような痛み、逃げようと足を動かそうとすると足が埋まったように動かず、そのまま意識を失ってしまった。



「うわ〜、エグいッスね。。。」

「何度も見ましたけど、威力も基本魔術とは思えない…」



二人の対応も終わったのか、合流するなり、感想を述べる。



その後は、商人からもらった縄を使用して、

盗賊を縛り、なぜかガラガラに空いている馬車に詰め込み、隣町に向かう。



「商人さん。もしかしてギルド長とグルだったりします?」



あまりの準備の良さに盗賊を捕まえるために一芝居打たれたのかと疑ってしまった。



「そ、そんなことあるわけないじゃないですか?」



=========



盗賊を隣町のギルドに引き渡し、依頼の報酬と

どうやら指名手配されていた盗賊だったらしく、追加の報酬も受け取った。



そして俺たちは王都に戻るべく帰路につくところで、、、



鉢合わせてしまった。



前のパーティ【クジ】に…



「ちっ、なんでお前がこんなとこにいんだよ…」



「そっちこそ、なんで?」

「はっ、お前と言うお荷物がいなくなったからな。早速、魔王幹部のドーヨの討伐に向かうんだよ。」

「魔王幹部って、まだ俺が抜けてからそこまでたってないんじゃないか?。パーティの連携は大丈夫なのか!?」

「そんなの必要ないだろ。お荷物が抜けて、守りに使っている人員が攻撃に回れるようになったからな!」

「…ああ、そうですか……」



これ以上デントに何を言っても無駄だろうと、その場を去ろうとする。



「あ、お嬢さん方!そのお荷物と一緒のパーティなんてさっさと抜けといたほうがいいぜ。ハハハハ」



と、別れ際にアリスとカンナに忠告をしてきやがった、、、

あんなやつもう知らん!!



もうこちらから関わることはないだろうと、その場を去り、王都に戻るのであった。


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