Ⅻ 世代交代
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魔王軍を退け王都を平和に導いたとして、王都では祭りが開かれた。
王都中に陽気な音楽が流れ、毎日飲めや騒げやで明かりが消えない日々が続いた。
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「魔王軍を見事退けた兵士たちと、冒険者たちに金一封を。魔王軍幹部ドーヨを討伐したバンブーパインには勲章と※今回の報酬を授ける」
ワアアアァァァーーーー
王城前広場から歓声が湧き起こる。
魔王軍を退けた冒険者達への式典が行われていた。
俺は冒険者の代表として、領民の前で、王からジェーブル王国のシンボルであるヤギが大きくあしらわれた盾を下賜される。
下賜された盾を高く掲げると、領民から再度歓声が湧き起こる。
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受け取った盾をそのまま持ちながら、今回参加した冒険者達との王都を1周するパレードが開始される。
「俺は認めねぇぞ!」
パレードが始まり少ししたところで、突然俺の前にデントが現れた。
「今回の幹部ドーヨを倒せたのもまぐれじゃねぇか!神の裁きで魔王軍がほぼ壊滅して、トドメをお前が掻っ攫ったんだ!そんなやつ、俺は認めねぇ!」
先頭だった俺の前に出たためパレードが途中で止まってしまい、観客達から、どうしたのかとざわめきが発生していく。
「………」
国総出の祭りに横槍を入れてくるデントに対し、
軽蔑の視線を向ける。
「お、俺が総大将やってても結果は同じだったはずだ!俺はお前より強いんだ!」
そう言いつつ、武器を構え始めるデント。
後ろにいたアリスが止めようと弓に手をかけようとするが、手を挙げて止める。
「平和を祝うパレード中に武器を抜いたってことはどうなるか分かってんだろうなデント。」
「はっ!そんなの知ったこっちゃねぇな!」
武器を振り上げながらこちらに向かってくるデント。
それを最低限の動きだけでかわす。
何度も剣を振るうが全てをかわす。
しまいにはデントが肩で息をしながら攻撃をやめる。
「くそっ!」
「プッ」
それを見ていた一人の観客が、あまりの滑稽さに笑ってしまう。
「あぁ?誰だ笑ったやつは!!この俺様をコケにしたやつはどいつだ!!」
標的が自分から、領民に移り、領民に対し攻撃しようとするデント。
「見損なったぞ、デント。」
剣を領民に振り上げたデントの真後ろに移動し、つぶやくと、
「ヒッ!」
と情けない声を出しながら、剣を真後ろに振るう。
その攻撃にもならない行動を避ける。
「【クジ】が」
デントのみに聞こえるぐらいの声量で、続けて話す。
「王都最強パーティと呼ばれてからの」
しかしデントは、俺からの言葉は聞きたくないのか、何度も剣を振り続ける。
「お前は、誰にでも上から目線で、」
何度も
「傲慢で」
何度も
「強欲で」
何度も
「横柄で」
俺は攻撃をすべて最小限の動きで避けながらも話し続ける。
「これ以上、俺を失望させないでくれ。」
最後にそう耳元で呟きながら、鳩尾を殴る。
そこまで力を入れていなかったが、吹っ飛んでいくデント。
「なんで、お前なんかに…くそっ!」
吹っ飛んだデントは立ち上がれないのか、そのままうずくまっている。
パチパチパチパチ
見ていた観客からは拍手と喝采をもらう。
「どうされましたか!?」
遅れてきた憲兵にことの顛末を伝え、市民を武器で傷つけようとした罪で拘束するように伝える。
「覚えてやがれ!絶対にお前にも恥をかかせてやるんだからな!!」
叫びながら、憲兵に拘束されて連れて行かれるデント。
その後は、パレードが再開され、数日間の祭りが続くのであった。
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「ふぅ……疲れたぁーーー。」
式典、パレードが終わり、まだ街中が祭りを楽しんでいる頃、自分の部屋に戻ってベットに寝転ぶ。
(デントのやつ、一体何考えてるんだ?
パーティ結成当初は、あんなやつじゃなかったのに……
思えば、突然あいつに【クジ】からのクビ宣言が俺の転換点だったのかな…
あの時は、魔術適性がない自分が一人になって、「これからどうしよう。俺にも物語とかでよくある追放されたけど大活躍!」みたいな流れがあるかもって、正直期待した…
それも現実を考えたらありえないんだよなぁって、すぐため息ついたけど…
確かそん時だよな、アリスに出会ったのは…
アリスもパーティ絡みの悩みで一緒にため息ついたんだよな…こんなことあるのかって、笑ったなぁ。
その後、方針決めてたら、その店の従業員のカンナが仲間に。あのお店、カンナの親父さんがやってるらしいけど、美味かったなぁ。今度みんなで行ってみるか!イオキなんて、美味すぎて、店の食料全部食べ尽くしたりしてな!
その後は3人での依頼が続いた。
パーティを組み始めたばかりで役割も決まっていなかったから苦労したっけ…
その時、俺の魔力適正が無いんじゃなくて、測定不能だったのには、俺自身も驚いた。
チームワークが整ってきたところだったよな。
姫様への魔族襲撃事件。
俺しか感知出来なかった怪しい子供が姫様を襲った事件。
それを防いで、姫様と仲良くなったんだよな。
王族とは仲良くしておいた方が何かと便宜を図ってくれるからね…
そこからだ。魔族の動きが活発になったのは。
あれは、魔族の斥候だったのかな。
姫様がやられていたら、どうなっていたことやら…
その後、王都は魔族の動向を調べることにしたらしい。
しばらく、自分たちのレベルアップをするために依頼を受けまくっていた。
アリスとカンナにはかなりの無理を強いてしまった。
けれど、それなりに実力はついたと思う。
魔族の動向を知った王族は、王都の実力者を集めて魔王軍の先遣隊、幹部ドーヨ討伐を依頼。
まだ実力不足だったバンブーパインは、それには参加せず、王から別の依頼を預かった。
感知出来なかった魔族を感知出来たことを買われたのか、ドーヨの裏で動いている別の幹部、リバストンの妨害だった。
そういえば、こいつをカリマサさんに作ってもらったのも、その依頼の時だった。)
そう思いながら、壁にかけられていた霖朧陽朧の双剣を見つめる。
(パーティそれぞれの特性を活かす武器。
こちらの依頼より、さらに追加ですごい機能を加えてくれた。流石、名高い武器職人カリマサさん。
この武器に何度も助けられた。
リバストン戦
立ち寄った森で仲間になったサイカのおかげで、魔族達の情報を集め、居場所を突き止めた。
ピンチになったアリス達を助けに、入り、俺が倒した魔族がリバストンだったのは予想外であったが…
この魔族討伐が後に実績になり、次の大戦の総大将に任命されたんだよな…
それで、先の大戦。
あの時は、誰が総大将になっても、やることは何もかわらかなったと思う。
自分の知恵を絞って、魔王軍をどうやって打倒するかを必死に考えた。
あれは本当にギリギリだった。
調整には前日までかかった。
なんとかうまくいって、兵士たちの士気も上がってくれたから本当に良かった…)
コンッコンッ
「ユージさん、晩御飯ご一緒しませんか?」
物思いに耽っていて、時間を忘れていたのか、もうすっかり陽が落ちていた。
「あぁ、行こうか!」
そんなこんなで、バンブーパインはこれからも続いていく。
手が届く範囲で、大切な人たちを守れるよう、これからも頑張っていこう。
完