Ⅺ 決戦
「報告します!
正面より魔王軍、およそ1万の兵がこちらに向かって、進軍しております!」
「報告します!
魔王軍、およそ30分で我が国の領地に到達します。!」
「報告します!
領内の民の避難が無事完了しました!」
先に出陣していた斥候や軍の兵士からの報告が俺たちのいる作戦会議テントに響き渡る。
ざわざわとテント内が騒ぎ始める。
それにしても報告多いな、、、一度に報告できんのかね、、、
「くっ、こちらは冒険者入れてもせいぜい100がいいところだぞっ。どうやって…って、、、、」
「奇襲でも仕掛けるか?」
「それとも防御を固めるか、、、」
「それだと根本の解決にならないだろ!!」
「では、二手に分かれて挟み撃ちではどうだ?」
「数が違い過ぎる、、、」
「・・・・・」
(会議は踊る、されど進まず、、、、意味よくわからんけど、、、)
すると軍の指揮官の一人がおもむろに、、、
「バンブーパインの皆さんは何をやっているんですか?」
「?何って、大戦の前に、栄養補給を…」
別の席で、口いっぱいに頬張りながら、軍の指揮官への疑問に答える。
「そんな悠長な!
戦力差が100倍ほどあるのですよ!?
作戦を考えないと!」
「すでに考えてます。みんなを集めてもらえますか?」
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俺達のテントの前に冒険者、兵士と今回の大戦に参加する面々が集合する。
魔王軍の軍勢を見聞きしたのか、集められたもの達がざわざわと騒ぎ始める。
ちょっと小高いところに登り、声を発する。
「みんな少し話を聞いてくれないか、、、」
俺が話し始めると、ざわざわしていた冒険者、軍人が注目し始める。
「みんなには家族がいるか?」
「な、なんだいきなり、、、」
冒険者の一人が問いかける、、、
「仲の良い友達、ケンカばかりしてしまう友達、尊敬する人、好きな人、愛する人、大切な人、、、」
「この戦いで死ぬ直前に思い出してしまう人、、、」
「みんなにはそういった人はいるか?」
と、俺は目の前の冒険者、軍人に問いかける。
「いるぞ!おれはつい先日子供が生まれたんだ!!」
「子供の為なら命だって惜しくねぇ!」
「俺だって実家には大切な家族がいる!」
「わたしだって、、、」「おれだって、、、」
続々と応える冒険者達、、、
「みんな大切な人がいるなら約束してくれ!!」
「絶対に、無茶はするな!!」
「みんなに大切な人がいるのと同じくらい、みんなの事を大切だと思って、今か今かと帰りを待ってくれている人たちがいる事を決して忘れてはならない!!」
「我々全員が大切な人達の元へ帰って初めてこの国に平和が訪れるんだ!!」
俺は、帰還こそが勝利だと伝える。
「じゃあどうすればいいんだよ、、、この兵力差、、、数が違い過ぎる、、、」
と、不安を漏らす一人の冒険者。
「我々は仲間だ!冒険者も国王軍の兵士もみんな仲間だ!」
「共に背中を預け、大切な人たちの大切な人を守りながら戦う!!」
「これはそういう戦いなんだ!!」
「共に背中を預け合い、力を合わせよう!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ」
冒険者・軍の兵士の叫びが響きわたる、、、
「では、全員に作戦を示す」
「まずこの兵力差からひっくり返そう!」
「先陣は我々バンブーパインが務めさせて頂く」
「みんなは我々の合図を皮切りに数的不利にならないように4人1組で行動して敵を殲滅してくれ!」
「わ、わかったが、合図とは、どんな合図なんだ?」
「でっかい花火が開戦の合図だ!」
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「うっし、ちょっと腹ごなしに運動しますか!」
そそくさと出陣の準備を終わらせ、テントから颯爽と出ていくパンブーパイン。
「自由すぎる!これだから冒険者は…!我々に相談もせず、勝手に作戦を開示するなんて……!」
と後にしたテントから罵声が聞こえるが、無視無視。
「よしっ!始めよう!サイカ!」
「はい!」
サイカの風魔法が俺、アリス、カンナ、イオキ、サイカの順で体を包み込む。
「イオキ頼む!」
「おうよ!」
イオキが、ドラゴンフォームへ変身。
その背中にバンブーパインの全員が乗り、羽ばたく。
「あの雲だな…」
しばらく、魔王軍が進行している方向に飛んでいると、ちょうど、魔王軍の直上に大きな雲が滞在していた。
その中に、入っていく。
「カンナ!」
「はいッス!!」
カンナは、雲の中に風に浮くような細かい砂粒を発生させる。
「アリス!」
「はい!」
アリスは雲の中に細かい水滴や氷晶を発生させ、温度を低い状態を保つ。
「よし!こっからが正念場だ!」
陽隴と霖陽に風魔法を流し、カンナの砂粒と、アリスの氷晶を衝突させるようにコントロールする。
しばらくすると、徐々に雲の中は、暗くなっていき、轟音が響き、チカッチカッと光が瞬く。
「イオキさん!ゆっくり上昇お願いするッス!」
コントロールと温度の調節に集中している俺とアリスの代わりに、イオキに指示を出すカンナ。
集中を乱さないようにじっくりと上昇し、雲から脱出する。
ゴロゴロと轟音を轟かせる雲。
ドカーーーーンッ
瞬時、光の矢が魔王軍に向かって降り注ぐ。
当たったところは燃え上がり、パニックになった魔王軍は蜘蛛の子を散らすように陣形を乱していった。
いくつもの光の矢を魔王軍に打ち込み、大軍と呼ばれた魔王軍も大量に数を減らしていった。
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「サイカ!!」
「はい!」
大魔術の発動もうまくいき、ひと段落ついたところで、冒険者、軍の兵士たちに、突撃の合図をサイカに送ってもらう。
サイカに燃えやすい土(俗に言う火薬)を空中に魔法で作ってもらい、それにイオキが口からの炎で点火する。
それは、大きい花火として、爆発する。
さぁ、ここからは時間の勝負だ。
雷雲が収まって、撤退からの対策を立てられたら面倒だ。
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雷雲が収まり、撤退の隙を与えず進軍。
雷のおかげで数的有利はこちらにでき、
敵1vs味方4で戦いを挑んで魔王軍の数を減らしていく。
俺たちは徐々に撤退していく魔王軍を逃がさないよう、撤退し始めている先に向かう。。
退路の前にドラゴンフォームのイオキが降り立つと、
「な、なんだぁ!?」
突然のドラゴンの登場に驚く魔王軍。
「魔王軍幹部ドーヨ!逃がさないぞ!」
「くっ、お前らやっちまえ!!」
一際大きい魔族の指示により、残っていた魔族が俺めがけて襲ってくる。
陽隴に炎属性を
霖隴に闇属性を
ありったけの魔力を注ぎ込み正面に放つ。
襲ってきた魔族もろとも、幹部ドーヨを叩き斬る。
「な、んだと……!?」
撤退していた魔族を全てまとめて焼き切る。
一人、小さい子供の背格好をした魔族を除いて…
(しまった…)
ありったけの魔力を注ぎ込んだため、一瞬気を抜いたところに逃げ延びた魔族は認識阻害の魔法でこの場から姿を消してしまった。
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パパパーーーン!!
勝利のラッパが鳴り響く。
こうして魔王軍1万vs王国軍&冒険者100の大戦が終結した。
結果としては、王国軍&冒険者の勝利で怪我人は何人か出たが、死者は0人。
開戦前に空から光の矢が降り注ぎ、魔王軍を殲滅していった。
このことを人々は神の裁きと語り継がれる事となる………