I 最強パーティ追放
「お前、明日から来なくていいよ。」
パーティメンバーの定例会議で突然そんなことをリーダーのデントに言い渡された、、、
「ちょ、ちょっと待ってよ!突然どうしたのさ!いきなり来なくていいって…
ちゃんと説明してくれよ!」
「説明って…ここまで、魔術適正がない人間を養っていただけでも感謝してほしいもんだな!王国最強パーティ、クジにはお前みたいな無能は必要ないんだわ!わかったらさっさと出ていってくれ!」
・・・
そして今、パーティを追い出された俺は路頭に迷ってしまっている、、、
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この世界では、幼いころに大きい村にでもあるギルドで魔術適正を見てもらい、
一般人でも適正があるものは日常生活で魔術を使用するほど魔術が根付いていた。
そんな世界の中、田舎に生まれた俺はわくわくしながらギルドで魔術適正を見てもらったのだが、使用する水晶がなぜか反応せず、<魔術適正なし>の烙印を押されてしまった。
魔術適正がないとわかってからというもの、村の人達のあたりは強く、親にもたくさん迷惑をかけてしまった。
それを理由に俺は村から離れ、王国に飛び出し、魔術適正が低くてもなれる冒険者となった。
今のパーティは自分に魔術適正がなくても一緒に組んでくれた初めてのパーティだった。
結成当初は初級任務の薬草探しなどでも苦戦しながらも着々と経験を積んで、
今となっては、王国最強と呼ばれるほど成長していった。
「まぁ、それもさっきクビになってしまったんだけど……これからどうするかなぁ…」
「いきなりパーティ追放って、、、これは王道ルートに乗ったのか…?乗ったんだよね!!」
今日の予定がなくなり、途方に暮れながら街中央の噴水に腰をおろし、いるかもわからない天の神に向けてヤケになっていた。
「「はぁ~」」
ほぼ同時にため息がつかれた。
同時だったためか、向こうも気になったのだろう。
僕がそちらを向くと、相手とも目が合った。
そこには、長い金髪、緑の目に、とがった耳、白い肌が印象的ないわゆる、エルフの女性がそこにいた。
「はは、お互いにため息とか、珍しいこともあるんですね。」
目が合ったエルフの女性が話かけてきた。
「そうですね、、、差し支えなければ、何があったか伺ってもいいですか?」
この流れは……アレだ!!と思い、そもそも暇なので、話をしてみた。
「実は物語開始そうそうパーティを追放されてしまいまして、、、かくかくしかじかなのです。」
超適当にアバンパートの説明を終えると、エルフも神妙な顔をしながら事情を話してきた、、、
「実は、私、冒険者になったんですが、誰ともパーティを組めていなくて…」
「ああ、なるほど…そのパターンですか、、、」
エルフは希少な種族で、その美しさから街にいても人目を引くほど目立ってしまう。
エルフを狙って来る貴族や人さらいなども珍しくない。
そんな面倒ごとを抱えたくない冒険者はかなりいると聞く。
「いろいろと試してみたのですが、どこも断られてしまい、途方に暮れていたというわけです…」
「………」
「………………(苦笑)」
「はっ!!」
彼女は何か決心したようにこちらを向き直った
「あ、あの、、、もしよかったら私とパーティを組んでいただけないですか!?」
はいキターーーー!ですよね!!!あるある、あるよね、この流れ!どうやっても仲間になるやーつ!
そして当然のようにエルフの彼女と一緒にパーティを組むことにしたのでした。
とはいえさくっとエルフの彼女を仲間にしたけど、今後の流れを確認する必要もあるし、ひとまず作戦会議をすることにした。
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「いらっしゃいませ!お好きなお席へどうぞッス!」
適当な定食屋に入ったのだが、殺伐とした雰囲気ではなく、
どこか落ち着けるような場所であった。
接客をしている店員は、髪は赤毛で二つにまとめ背が低いが皿を何十枚とジョッキを持ちながら移動するなど、力持ちという印象を受けた。
ありゃドワーフだな、、、
その店員に勧められるまま奥の向かいあわせの席に付く。
「では、まず自己紹介から、僕はユージです。
前のパーティ<クジ>では雑用や戦闘補助を中心に行ってました。
いざというときは、前衛や後衛も担ってることもあったかな。本職の人には叶わないんですけどね。」
「<クジ>ってあの王国最強パーティと名高い、あの<クジ>ですか!?!?」
「まぁ、、、元だけど……」
「元でも凄いです!!そんな凄い方とパーティ組んでもらえるなんて私達運命ですね!!」
「はは……」
この娘テンション高すぎだろ、、、
「あ、取り乱してしまってすみません、私はアリスと言います。パーティにはまだ所属したことがありません。ソロでは大体弓を使っています。」
でしょうね!!!
エルフが違う武器だったらびっくりですけどね、、、
「ところでアリス、このパーティのリーダーって、どっちがやるんだい?」
「それはもちろんユージさんが適任だと思いますよ?
私は初心者ですし、ユージさんはあの最強パーティに入っていた経験もあるので。」
「わかった。
それと、パーティを組むにあたって一つ約束してくれ。」
「はい。何でしょう?」
「敬語はやめよう。作るなら、上下関係がないパーティを作りたいんだ。敬語だとなんか……堅苦しいだろ?」
「うん、わかった!!よろしくねっユージ!!」
満面の笑顔で返答するアリス、、、やばい惚れそう……
そんな雑談をしつつ会議を進めていった。
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「お客様!!」
しばらくアリスと話していると、突然出入口から怒声が響いた。
「失礼ですがまだお会計が済んでないッス!」
「そりゃあ、ドワーフが作ってる飯なんてまずくてかなわねぇし、そんなんに金は払えねぇよ。(笑)」
と、男性の客。
「失礼致しました、、、豚鼻の家畜にはこの味がわからないッスよね、、、」
「んだと、こらぁ!」
売り言葉に買い言葉で男性客が店員に殴りかかろうとする。
「はぁ……」
瞬間、2人の間に割って入るユージ
「え?え?」
殴り掛かる直前まで自分の目の前にいたのに、今はなぜか店員さん達を割って入っているのを信じられない目で見ているアリス。
「まぁまぁ、お客さん抑えて抑えて。」
「んだ、てめぇ?」
邪魔するんじゃねぇとぎろりと男性客に睨まれる。
「それにしてもおかしいなぁ…」
「何がだ!?」
質問には答えずに話を進めたため、イライラしている男性客。
「いや、だってね、あんた言ったよな?ここの飯はまずくてかなわないって!」
「だったら、どうした?」
「いやね。あんた料理全部食べてるよな?
それなのにまずくてかなわないって、おかしいなって。」
「あ、もしかして、うまいかどうか一口二口じゃわからないバカ舌の方だったりします?」
「ぷっ」
俺の煽り文句に思わず吹き出してしまうドワーフの店員。
「それであれば、失礼!気づかなかった僕の方が悪かった。」
顔が真っ赤になっていく男性客。
「くそっ!ほらよ代金だ!」
そういいつつ、俺に代金を握らせつつ、店を出ていく男性客。
「ふぅ、全く…困った人もいたもんだ。はい。店員さん。あのお客の代金。釣りはいらないみたいです。」
そういいつつ、自分の席に戻っていく。
「ありがとうございますッス。」
何か熱い視線を浴びているようなそうでもないような気がするが、気にせず戻っていく。
これはアレだな、、惚れられたな、、、
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再度、アリスと今後の確認をしていると。
先ほどのドワーフ店員がコトッと僕たちの席にデザートを運んできた。
「あれ?注文してないですけど?」
「さっきはありがとッス。これ、私からのサービスッス。」
「わー、パフェだー!!せっかくのご厚意だし、いただこうユージ。」
嬉しそうに言うアリス、このエルフ甘い物が好きなんだな、、、
何かを察したかのようにアリスはサービスのデザートを食べ始める。
それならと自分もデザートをもらう。
おぼんからデザートがなくなってもその場から動かずもじもじしてるドワーフ店員。
「アノ…ウチ…」
「?」
席の前に立っていても聞こえづらいぐらいの小声だったため、
何事かとドワーフ店員の顔を見ると顔を真っ赤にして呟いていた。
「あ、あの、どうしました?」
あからさまに様子がおかしい店員に声をかけた。
「よ、良かったら、うちもあなたたちのパーティに入れてもらえないッスか?
うちも冒険者やってるけど、まだどこのパーティにも属してなくって、さっき新しくパーティメンバー募集するって聞いて、もしよければ、お願いしたいなって。あ、矢継ぎ早にしゃべっちゃってごめんなさいッス。でも、ここで声かけないと一生後悔しそうだし、でも迷惑だったら断ってもらっても……」
はいはい、先程僕あなたの事助けましたもんね、、、
その時からこんな気はしてました、、、
「ひとまず落ち着いて。要約すると、僕たちのパーティメンバーになりたいってことでいい?」
「はい!そうッス!」
「まぁ、まだメンバー二人だし、アリスが良ければ」
「是非に!」
食い気味に返事をするアリス
「わかった。じゃあ、加入ってことで!
それと、敬語はなしでやってるんでそこはお願いね。えっと…」
「カンナッス!」
「そうか!よろしく。カンナ」
「はいッス!!」
ガシッと握手をカンナと交わした。
「良し、今日は一旦解散して、明日またここで待ち合わせしよう。
ギルドにパーティ申請して、早速活動開始だ!」
そう号令をかけ、その場で解散。
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前のパーティではセーフハウスで寝泊りしていたため、近場の宿をとり、明日の準備を整える。
「あーーつかれたーー!!!パーティをクビになったと思ったら、女の子2人が仲間になってパーティを組む、、、
怒涛の一日だったな…」
「まぁ、でも、明日が楽しみだ。」