幕間 リハーサル
『ふん ふふ ふん ふん ふーん』
[ご機嫌ですね、なにかいいことでもありましたか?]
『ないんだなあ、これが。でも、これからあるかもしれないけどね!』
[そうですか。それは、頭が楽しそうでなによりです]
『そりゃあもう、心躍ってブレイクダンスしちゃう勢いだよ』
[それではもれなく脳震盪ですね。頭は大丈夫ですか? 記憶障害はありませんか? だるさ、めまい、物が二重に見えるなどの症状に覚えがあるなら、セカンドインパクト症候群にご注意下さい]
『ハハッ! こいつはガチなのか、冗談なのか、絶妙に分かりづらい心配を、どうもありがとう!』
[ところでなのですが、――本当にコレで装飾されるおつもりでしょうか? やはり、以前より錯乱していらっしゃいましたか……]
『――いいかね? 自分との感性が、如何に他人とズレていたとしていても、むやみやたらに否定してしまっては、個性は育たないと思うのだよ。蓼食う虫も好き好きラブユーってね』
[……これは失礼しました。では、金ピカで派手な額縁で装飾させていただきます]
『うむ。――それと水槽をクリーニングした後、仕上げにコーティング剤を使って、表面をツヤッツヤに仕上げてくれたまえ。曇りがあっては見栄えが悪いからのう』
[馬子にも衣装というやつですね。普段は粗末なものでも、良い額縁で飾ると、とても立派に見え……、ますか?]
『それをいうなら、鬼に金棒といいたまえよ。元より、脳裏に焼き付くインパクトには、定評があるのだからね』
[インパクトといっても、ジャンプスケア要素です]
『感動とは、喜びと驚きの感情の組み合わせらしいよ。きっと感激もひとしおだろうし、それぐらいの要素でトントンだろうさ』
[とはいえ、絶望と希望も紙一重らしいので、失意の底に沈まれないことを希望しております]
『それもこれも、全ては相棒次第ってことだな。私に出来ることは残り僅かだが、その瞬間の為に、念入りなリハーサルは怠らないさ。例え、ドッキリがネタバレされていたとしても、全力で驚いてみせるのが、プロの仕事だよ』
[さすが、道化のプロですね]
『……それは、褒められてますか?』
[ええ、誰しも真似の出来るものではありません。とても立派なものだと思います]
『そっかー、えへへ。それじゃあ、頑張ってやっていきまっしょい!』
[――果たして、この結末はどのようなものになるでしょうか? 見守らせていただきます]




