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03ー12 コーヒーブレイク

 ○月29日 (平日・午前12時)


 館内の事務所で椅子に座り、束の間の休息を取っていた二人がいる。


 一人は若い風貌の男性、もう一人は髭を蓄えた強面の男性である。


 同じ制服を着た二人は、今回の美術館で行われる設備点検の際に配属された警備員である。


〈あっ、電気消えましたね。ってことは、早速仕事を始めますか?〉


 事前に消灯することが分かっていた為、今は事前に用意されていた充電式の間接照明が部屋を照らしていた。

 

 若い風貌の男性は、髭を蓄えた強面の男性に仕事を促している。


《そう慌てるなよ。おめぇはとりあえず、施錠の確認にでも行ってこい》


〈それなら消灯前にやったじゃないですか? またやるんですか?〉


《だからやるんじゃねえか。一度確認したから大丈夫なんて保証が何処にあるんだよ? 何かあった時に確認したって言っても意味なんかねえぞ。何も起こさない為におれぁたちがいるんだろが》


〈なるほど、それもそうですね。で、先輩はどうするんですか?〉


《どうもしねえよ。ここで待機してるだけだ。二人で行ったら、中の人手がいなくなるだろが》


 そう言うと、机に置いてあった飲みかけの缶コーヒーを口に運んだ。


〈そんなこと言って、自分だけサボる気じゃないですよね? ズルいっすよ!〉


《無駄口を叩いてねえで、さっさと行ってこいや。ちゃんと内と外の確認を怠るなよ!》


〈はっ、はいー! 直ちに行ってきます!〉


 若い風貌の男性は椅子から勢いよく立ち上がると、事務所のドアに手をかけた。


《おい! 待て!》


 髭を蓄えた強面の男性が、声をかけて呼び止めた。


〈どうしたんすか?〉


《どうしたじゃねえだろが。ハンディライトを持たずに何処行くつもりだぁ?》


 テーブルに置きっぱなしになっていたハンディライトがあるのに気づいた若い風貌の男性は、踵を返し、ハンディライトを手に持った。


〈いやー、すみません〉


《ったく。いいか、急いで行って怪我でもされたら迷惑だ。ゆっくりでも確実に確認してこい》


〈分かりました! 行ってまいります!〉


 そう言うと、若い風貌の男性は事務所から出て行った。


──────


 若い風貌の男性が事務所に帰ってきたのは、大体30分の時間が過ぎた頃であった。


〈施錠の確認終わりました。どこも問題無しです〉


《おう、ご苦労さん》


 髭を蓄えた強面の男性は、若い風貌の男性に缶コーヒーを差し出した。


〈あざっす! いただきます!〉


 若い風貌の男性は、貰った缶コーヒーを口にして、暫しのコーヒーブレイクをしていた。


《ところでよぉ、おめぇに言っておいたトイレの確認は、ちゃんとやったんだよなぁ?》


〈あっ、……あのー。言ってましたっけ?〉


《あぁん! やってねえのか、この馬鹿もんがぁ!!》


〈すっ、――すみませーん!〉


 若い風貌の男性はもの凄い勢いで、何度も何度も頭を下げていた。


《ったく。謝っていても意味がねえだろがよ。今からでも確認しに行くぞ!》


 髭を蓄えた強面の男性は、椅子から立ち上がった。


〈はっ、はい!〉


 そう言うと、二人はハンディライトを手に持ち、事務所を後にした。


 ハンディライトで歩く先を照らしながら、二人はトイレの前までやって来た。


《おめぇは男子トイレを確認してこい。おれぁ女子トイレを確認する》


〈ズルいっすよ、俺だって女子トイレ入りたいっす〉


《あぁん!?》


 髭を蓄えた強面の男性は、厳つい顔を更に強張らせた。


〈やっ、やだなぁ。――冗談ですって〉

 

《無駄言いってねえで、さっさと確認してこい!》


 そう言うと、髭を蓄えた強面の男性は、女子トイレ内部に入って行った。

 

〈はい! 男子トイレ行ってきます!〉


 続いて、若い風貌の男性も男子トイレ内部に入って行く。


 女子トイレ内部をハンディライトで照らしながら、髭を蓄えた強面の男性は、何か異常はないかと観察していた。


 トイレの個室は4個あり、それらを順番に一つ扉を開けて確認しては、また一つ扉を開けて、確認していく。


 それを繰り返していき、最後の扉に手を掛けようとした、その時であった。


〈大変です先輩! 一大事ですよ! 助けて下さい!〉


 男子トイレを確認しに行った、若い風貌の男性の声を聞くと、髭を蓄えた強面の男性は、すぐさまその場から急いで男子トイレに向かって行った。


《おいっ! いったい何事だ!》


 男子トイレ前にいた若い風貌の男性に、髭を蓄えた強面の男性は、問いつめる。


〈とにかく中を見てくださいよ!〉


 二人は男子トイレ内部に入ると、ハンディライトで辺りを照らした。


 すると床には、おびただしい水が溢れており、異常であることが誰の目にも明らかな状態であった。


《こりゃあ、何がどうなってやがる……》

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