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03ー7 啖呵を切る

 目を覚ました僕の視界には、いつか見たであろう、言い表わすならば、倉庫に使われている部屋のような場所があった。

 その状況を理解した途端、込み上げてくる不快感から耐えるようにして、部屋のドアから脱兎のごとく逃げ出すと、路地裏で胃の内容物を盛大にぶち撒けた。


「……うっ……、はぁ。くそっ……。おいっ! 聞いているんだろ、れもんさんよぉ!」


『(……はあー。そう喚き散らすなよ。耳にしたくもない嘔吐物の奏でる旋律を聞かされる、こちらの身にもなってほしいものだね)』


 どうやら、今の状況ならスマートフォンを介せずとも、れもんさんと会話が出来るらしい。

 ということは、やはり条件としては過去にいる場合による、何かしらの要素が関係しているのだろうか?

 

 とはいえ、これはまだ憶測の域を出ない話である。

 

 スマートフォンが現在使い物にならないのは、だった今拾って確認した。だからといって使えない、イコール過去にいると判断するのは、やはり、まだ早計かもしれない。


 ――それよりもだ。

 

 今猛烈に腹の底から湧き上がる怒りを、ぶつけなければ気が済まないでいた。

 

「何してくれてるんだ、この野郎!! あれのどこが手助けだって言うんだよ!!」


『(別に優しく手引きしてやるなんて、誰も言ってないだろうよ。ウジウジ無駄に時間ばかりかけていた相棒に、親切にデリhellを派遣してやったんだ。むしろ感謝してほしいね)』


「全っ然嬉しくないですね!! ――この際だからはっきり言っておきますが、僕は、貴方が英雄だと思っていました。……だが今は、アンタをぶん殴りたくて、仕方がないですよ!!」


『(これは、これは。随分と乱暴なラブコールですなあ。全くもってらしくない。――だが、どのような結果であれ、ヤル気があるのは大いに結構。その望みを叶えたければ、存分に励むが良いさ)』


「勝手にそうさせてもらいますよ!! 首を洗って待っていやがれ!!」


『(もしも首が洗えたなら、その時は洗って待っておきますよ)』


 啖呵を切るのは、この辺でいいだろう。

 

 後は、確かめておかなくてはならないことが残されている。


「それと一つ、確認しておく必要がある」


『(ん? どうしたんだい? これまた随分と神妙な口調ではないかね)』


「アンタは――霧崎朱きりさきしゅう本人なのか?」


『(――んー。それはどうだろうかね?)』


「あくまで、シラを切るってことですか?」


『(そういう話ではないんだが。ちと、関係が複雑でな。はっきりと言えることは、相棒を殺したのは、この私ではないということかね)』


「それを示す根拠は?」

 

『(無いよ。だから、それを信じるか信じないかは、相棒に任せるとしよう)』


「……そうですか。今はまだ、その話を信じておきますよ」


『(それは結構。理解してもらえて嬉しいよ)』


 勿論、これら全ての話を全て信じた訳では無い。

 

 かといって、今の現状では、れもんさんを切り離して考えることは難しい。


 ならば、利用するしか手立てはない。

 

 癪だが、事が運びさえすれば、後のことはその時どうにかすればいい。


 とりあえず、当面は現状を維持しつつ、真相を調べることに力を尽くすべきだろう。


 そして全てが終わった後に、きちんとケリをつけてやる。

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