プロローグ 鶏が先か 卵が先か
数ある作品の中から、目を止めていただきまして、感謝申し上げます。
事前注意として、あらかじめ申し上げておきたいことがあります。
この作品は、ご無礼をお許しください。といった内容に該当するかもしれません。
お心を煩わせてしまいましたら、何卒ご容赦いただけますと幸いであります。
それでは、私はあなたが辛抱強くこの作品と付き合ってくれることを期待しています。
「鶏が先か、卵が先か」
俗に言う「ニワトリとタマゴのどちらが先にできたのか」という、因果性のジレンマについての問題である。
その前提を踏まえた上で。
「勇者だから英雄なのか、英雄だから勇者なのか」
この問いについて、私なりの弁論を述べさせてほしい。
ファンタジーの世界ではない現代において、魔王に立ち向かう必要の無い我々にとっての。
「勇者」とは何か?
「英雄」とは何か?
現代に、「勇者」という職業は存在しない。
「勇者」は転職し、鳴りを潜めるように名前を変え、各分野にて頭角を現している。
ある者は、「商人」となり、巨万の富を築き。
ある者は、「踊り子」となり、名声を上げ。
ある者は、「遊び人」となり、人々を魅了する。
文章や写真、動画などで自分を表現したり、コミュニケーションする、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(通称:SNS)が普及した現代において。
「勇者」とは、我々一個人であり、誰もが「英雄」たりうる存在なのかもしれない。
そういった意味でいえば、インフルエンザは、現代の「英雄」といっても過言ではないだろうか?
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『――ところで、インフルエンサーって初めて聞いた時、インフルエンザと勘違いしたりしなかった? 紛らわしくない?』
[全然紛らわしくありません。いるのでしょうか? 勘違いするような人が?]
『いるね! 絶対に! パッと見親戚みたいな者でしょ。ながら見してたら、気付かないでスルーするレベルでそっくりな双子だよ。アレは。現に、故意に間違えて書いていても、スルーしてしまった人が必ずいるね。今まさにスクロールして確認している人がいるはずだ』
[いる訳ないと思いますよ、そんな人。それよりもなんですか、あの冒頭の弁論は? 必要でしょうか?]
『要るに決まってるでしょうが! 小説なんてものはな、わざわざ難しい言葉を選んだり、婉曲な言い回しや表現を多用し、ちょっとでも文字数を稼いで、薄い本を厚くするものじゃないのか?』
[怒られますよ。ちなみに、婉曲ではなく、婉曲です。学がないのが露見するので、難しい言葉は控えて下さい]
『学がないなら、これからどうやって薄い本を厚くしていけばいいんだ……』
[ならば、いっその事。そのツルツルな脳みそを、額縁で装飾してみてはいかがでしょうか? 箔が付くかもしれませんよ]
『成る程! その手があったか! 今直ぐにでも取り掛かってくれたまえ』
[……はあ。分かりました。後でホームセンターにでも行って購入しておきます]
『なるべくなら、金ピカで派手なやつがいいな。その方が知性を感じられそうだ』
[左様でございますか。私めは不心得者であります。ゆえに、理解出来ませんね。そんな事よりも、こんなくだらない三文芝居のお陰で、テキストが1,000字を超えましたよ。良かったですね]
『これも全て計画通りだよ。事が上手く運んだ様だな』
[では、そろそろ締めて下さい。直に正子になってしまいます]
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という訳で、【きょうはなんにもないすばらしい一日だった】などと、SNSで呟くような現代の「勇者」白河流星は、現代の「英雄」たりうるのだろうか?
ここから先は、君達の目で確かめよう!