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二度目の人生-1

大遅刻すみません予約投稿をミスりました……!!!!!( ; ; )



(――ここは一体……)


 まず目に入ったのは、初めて見るタイプの天井だった。

 木材を凝った形に加工し、使用しているようだ。細い木材を細かく縦横に組み合わせて作りあげた八角形が、天井いっぱいに敷き詰められている。

 そのたくさんの八角形の中にはすべて、何やら大変派手な絵画が描かれていた。

 ジゼルが見たことも聞いたこともないような特殊な意匠を凝らした天井だ。それでも精巧で繊細な技術を用いられて作られたものだということが一目でわかり、ジゼルは驚きと感嘆が混じった息を吐いた。

 それが格天井(ごうてんじょう)と呼ばれる種類の天井で、この建物が『日本家屋』と呼ばれるものだとジゼルが知るのは、もう少し後のことだ。


(……どこなのでしょうか)


 周りを見渡そうとして、違和感を覚えた。妙に頭が重く、うまく動かせない。


(な、何かの後遺症でしょうか⁉︎)


 他に何か変わったことがないかとあちこち体を動かすうちに、ハッと気づいた。


(手が……‼︎  まるでぱんぱんのパンのよう……!)


 手が、小さくまあるくなっている。

 到底自分の手とは思えない。開こうとしても手は意志に反してまあるく拳を握ったままだ。

 開くことさえもままならない自分の手に、ジゼルは愕然とした。


(あっ、足はっ⁉︎ ああっ、大変小さいことに‼︎)


 一生懸命足を動かしなんとか顔の前まで持ってくると、そこにあったのはびっくりするほど三角形の、なんともちょことんとしたいたいけな足があった。


「なあんだ? 起きたのか?」

「!」


 ジゼルが驚愕していると、ひょい、と見慣れぬ男が現れる。髪の毛と眉毛をすべて剃り落とした体格の良い男はジゼルを見ると、眼光鋭い目を細めて「起きてんなあ」と言った。


「あう、あーあ……(はじめまして、あなたは……?)」

「一丁前に喋ってやがるな」

「うー(喋れているかは疑問ですが、声が出るので嬉しいです)」

「ああ? 腹減ったってかぁ?」

「あー……んぅ(そう言われてみれば……確かにお腹が空いています)」


 噛み合っているのか噛み合っていないのか、微妙なその会話を交わしていると、不意に凄みのある低い声が聞こえた。


「何やってんだ、おめぇらは」

「組長」


 会話をしていた男が、騎士もかくやと言わんばかりの丁寧な礼をする。

 やってきたのは、初老の男だった。見たこともない服装――後に着物と呼ばれる民族衣装だと知る――に身を包んだ彼はジゼルの元に来ると、じろりとした目を向ける。


「庭に捨てられてた割にゃあ生きのいい、図太そうな目ぇした赤ん坊だな」


(庭? 捨てられていた? 赤ん坊?)


「厄介モンを拾っちまったと思ったが、いい目をしてやがる。……極道の庭に捨てられたのが運の尽きだ。可愛がって育ててやろうじゃねぇか」


 ぎろりとした迫力ある眼差しで、初老の男がニッと笑った。

 一見まるで極悪人のような顔立ちと表情だが、見知らぬ赤ん坊を可愛がって育てていこうとしているあたり、とても優しい人なのだろうとジゼルは思った。


(それにしても、夢だとは思えません。赤ん坊……?)


 思いもよらない状況に少し驚きつつも、ジゼルは状況を整理する。


(私はどうやら、本当に赤ん坊のようです。……それも、おそらく違う国の、違う時代に)


 男性たちが着ている服や身につけているもの、それから視界の範囲にあるものはすべて見たことがないものばかりだ。


(……予想外です。女神さま、これは……)


 目を瞑り、(心の中で)祈るように両手を組む。



(……ここで二度目の生を生き、『時戻り』に備えて腕を磨けということですね⁉︎⁉︎)



 歴史書には、『時戻り』で手に入れる知識や力は千差万別。己の能力や選択によって、得られるものが変わると記されていた。


(これはおそらく、あの状況を覆すために必要なものを、すべて自分で考え身につけろということなのでしょう)


 今の赤ん坊の自分では自由に動けず、観察すら容易ではないものの、この世界が非常に高度な文明を有しているだろうことは、察することができた。


(この方々の、常人にはとても醸し出せない佇まい、鋭い眼光。――相当の修羅場をくぐり抜けてきたのだとお見受けいたします。これはもう、教えられる側としても腕が鳴ります!)


「う、あー!(よろしくお願いいたします!)」


 男たちを心の中で勝手に師匠に任命し、挨拶をする。

 ジゼルの闘志に燃える姿に、男たちが顔を見合わせた。


「な、なんだ……すげぇやる気じゃねえか」

「あうあうあうあうあうあ(はい、やる気です!)」


 折角女神さまが、素晴らしいチャンスをくださったのだ。


(絶対に、何もかもを守ってみせます。女神さまからいただいたこのチャンスで!)


 常時握りしめている拳にさらに力を込める。この体で必要な知識が得られるまであとどれくらいの時間がかかるかはわからない。

 奇跡は起こせたとて、何の才もない自分のことだ。きっと時間も労力も、想像以上にかかるだろう。


(どれだけ時間がかかろうと、簡単にはうまくいかなくても、必ずやり遂げて見せます!……それにはまず、歩行から目指さねば! ああっ、頭が重すぎて寝返りもできません、これはもう今すぐにでも鍛えなくては……!)


 じたばたと手足を激しく、高速で動かす。

 非常に疲れるが、全身の筋肉に効いているようでとてもいい。


「……まるで筋トレしてるみてぇだな」

「赤ちゃん用のダンベル、作らせましょうか」

「負荷をかけるにゃあまだ早ぇだろうがバカ」


 闘志に突き動かされ奮闘するジゼルを、男たちは軽口を叩きながら圧倒されたように見つめたのだった。






明日からは7時と18時投稿です。

明日こそ必ず……!( ; ; )

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