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89 ミケロス共和国 人魚姫乃伝説編 part02(改訂)

挿絵(By みてみん)

人魚姫 セイレーン

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壁に描かれていた海の生物たちの姿もまた、驚くべきものであった。


暗い洞窟の壁面に浮かび上がるそれは、まるで魂を宿しているかのような躍動感に満ちていた。


アリス:「すごいねぇ! 今にも壁から飛び出してきそうなくらい、生き生きとしているよ!」


ミクリ:「本当だね。色彩も鮮やかだし、細部まで丁寧に描き込まれている。職人のこだわりを感じるよ」


アリス:「特にこれが一番目立ってるわね! 見てよ、この巨大な海竜の姿!」


それは洞窟の主であるかのように中央に鎮座していた。深い青色の鱗は、差し込むわずかな光を反射して、本物の宝石のように輝いている。


フノン:「伝承によれば、その海竜は人魚姫セイレーンを永遠に守り続けるガーディアンらしいよ」


アリス:「めちゃくちゃ力強くて格好いいわね……。漂ってくる威厳が半端ないんだけど!」


視線を横にずらせば、そこには無数の光り輝くクラゲたちが描かれていた。

淡いピンク、幻想的な青、柔らかな緑。それらの光が壁を透過し、洞窟全体を夢の中にいるような色彩で包み込んでいる。


フノン:「これらのクラゲは、セイレーンの使いだと言われているんだ。暗い海中を照らし、進むべき道を導く灯台のような役割を持っていたらしいね」


アリス:「なるほど。海版のカーナビみたいなものね」


さらにその隣には、天使のような美しい翼を持つエンジェルフィッシュの群れが、優雅に舞う姿で描かれていた。


フノン:「彼らはセイレーンの良き友であり、海域の平和を保つために尽力していたと言われているよ。その姿を見た者には、永遠の平和と安らぎがもたらされる……という言い伝えもあるんだ」


アリス:「フノン、本当に詳しいわね! さすがパーティーの知識担当。尊敬しちゃうわ!」


ディネ:「アリスが知らなさすぎるだけじゃないの? 少しはフノンの勉強熱心さを見習いなさいよ」


サラ:「アリスはバカだから、難しい設定は右から左に受け流しちゃうんだよな!」


アリス:「バカ言うな! 私は今、この映像美をどうやって効率よく脳内フォルダに保存するかで忙しいの!」


私たちがそんなやり取りをしながら奥へと進むと、突如、足元の水面が激しく波立った。

爆発音と共に水柱が上がり、そこから巨大な水の龍が姿を現したのだ。


アリス:「うわっ、なんだこれは! 急なエンカウントはやめてよ、ビックリするじゃない!」


ミクリ:「水の龍……さん? もしかして、壁画の主かな?」


現れた水の龍は、洞窟の平穏を乱す侵入者を排除する番人であり、同時に試練を課す審判者でもあった。彼は鋭い眼光で私たちを射抜くように見つめてくる。


アリス:「……私たちは人魚姫の伝説を追い求め、はるばるこの島にやってきた冒険者よ。洞窟の番人さん、その試練、受けて立とうじゃない!」


龍は私の決意を見定めるかのようにじっと沈黙を保っていたが、やがて満足げに、静かにうなずいた。


龍:『よかろう。お前たちの意志の強さを試させてもらう。与える試練は三つだ』


龍:『まず、海の生き物たちの声を聞き分け、その悲しみを癒すこと。次に、洞窟内に隠された古代の文字を解読し、人魚姫のメッセージを見つけること。そして最後に、洞窟の最奥部にある神聖な泉から、聖なる水を汲んでくることだ。見事に乗り越えてみせよ』


それだけを言い残すと、水の龍は霧が晴れるようにスッと姿を消した。


アリス:「……えーっと。どういうこと? わっはっはっ! 悪いけど、さっぱりわからないわ!」


ミクリ:「……今のアリスの笑い方、どっかの天才物理学者のパロディかな? ガ○レオ?」


フノン:「古いですよ! 元ネタがわかる読者も限られますから、そのボケはやめましょう!」


アリス:「はーい、反省します」


私たちは気を取り直して、洞窟のさらに奥へと足を進めた。

すると、静寂だった洞窟の中に、どこからか微かな囁き声が響き始めた。

壁に描かれていた海の生き物たちが、魔法に導かれたように動き出し、彼らの抱える「声」を話し始めたのだ。


アリス:「なになに? イベントのフラグが立ったわね」


最初に私たちの前に現れたのは、悲しげな瞳をしたイルカの群れだった。


イルカたち:『……苦しいのです。汚染された海域で、私たちは多くの仲間を失いました。その悲しみが、今も心を締め付けるのです……』


アリスは彼らに歩み寄り、膝をついて優しく語りかけた。


アリス:「そっか、辛かったわね。私たちがあなたたちのためにできることは何かな?」


イルカたち:『清らかな水を……私たちの魂を洗うような、澄んだ水を求めているのです……』


アリス:「清らかな水ね! わかった、私が出せばいいのね? はい、放水開始!」


フノン:「ダメでしょう! いくら魔法で水を出しても、今の彼らの環境が汚れたままなら、すぐにまた濁ってしまいますよ」


ミクリ:「なるほど……。汚染された水そのものを浄化して、根本から綺麗にする必要があるってことだね」


アリス:「そうそう! 今まさにそれを言おうと思っていたのよ!」


ディネ:「嘘をおっしゃい。ただフノンの話に乗っかっただけでしょ!」


サラ:「アリスはバカだからな!」


アリス:「バカ言うな! ええい、見てなさい!」


私たちは協力して、洞窟内の水域に対して広域浄化の呪文を唱えた。

濁っていた水が一気に透明度を増し、イルカたちの姿を清らかな光が包み込んでいく。


イルカたちは喜びに満ちた鳴き声を上げると、壁画の向こう側へと帰っていった。


アリス:「しかし、壁画が実体化して語りかけてくるなんて、すごいギミックね! このアトラクション、魔王城にも転用できるんじゃない?」


ディネ:「アリス……また良からぬことを考えているわね?」


アリス:「別に、そんなこと考えてないわよ(棒)」


サラ:「絶対考えてるだろ! 『壁画からモンスターが出てくるお化け屋敷』とか、そういう悪趣味なやつだろ!」


アリス:「……なぜわかった!?」


ディネ:「アリスは本当に単純なんだから。顔に書いてあるわよ」


サラ:「単純バカ!」


アリス:「バカ言うな! ……あ、次はカニさんね」


次に現れたのは、巨大なカニの群れだった。

彼らは漁師の網に複雑に絡め取られ、身動き一つ取れずに苦しんでいた。


アリス:「今度は自由を奪われたカニさんたちか。これも私がハサミでチョキチョキすればいいの?」


フノン:「網に魔法的な拘束がかかっているみたいだ。力ずくでは無理だよ。……ちょっと待って。確か、この網を解くための言葉があるはずだ」


フノンは記憶を辿り、古の呪文を紡ぎ出した。


フノン:「『リベルタス・マリス(海の解放)』!」


その言葉と共に、カニたちを縛っていた網が霧散するように消えていく。

自由を取り戻したカニたちは、カチカチとハサミを鳴らして感謝を示し、私たちに進むべき正しいルートを教えてくれた。


アリス:「カニさん、ありがとう! もう捕まらないように気をつけてね!」


そして最後に現れたのは、ひときわ巨大なクジラだった。


アリス:「今度はクジラさんか。……大きいわね」


クジラは深い哀愁を漂わせる歌を歌っていた。

彼女は長い年月、広い海で仲間とはぐれ、たった一人で孤独に過ごしてきたのだという。


アリス:「ずっと一人だったのね。寂しかったでしょ……」


アリスはクジラの額に優しく手を触れた。


アリス:「あなたは決して一人じゃないわ。私たちがここにいるし、あなたの声はちゃんと届いているわよ。だから、もう大丈夫」


サラ:「……うわ、アリスが急にいいこと言ってる。気持ちワル!」


アリス:「失礼ね! たまには真面目モードにもなるわよ!」


その真心が伝わったのか、クジラの悲しい歌声は、徐々に明るく希望に満ちた旋律へと変わっていった。

クジラは満足げに目を細めると、私たちを見守ることを約束し、再び壁の中へと溶け込んでいった。


アリス:「ほらね! ちゃんと結果を出したでしょ!」


サラ:「まあ、お約束の展開だけどな」


第一の試練をクリアした私たちは、次なる課題である「古代文字の解読」に取り掛かった。

ここでも頼りになるのはフノンだ。彼は壁に刻まれた難解な文字をじっくりと見つめ、その意味を紐解いていく。


フノン:「まず最初のキーワードは……『ラクリマ・マリス』。日本語に訳せば『海の涙』だね」


フノン:「人魚姫セイレーンは、きっと深い悲しみを抱えながらも、自らを犠牲にしてこの海を守ろうとした。その献身が、この言葉に込められているんだろうね」


次にフノンが指差したのは、より複雑な形状の文字だった。


フノン:「次は『アモール・エテルヌス』。意味は『永遠の愛』。……王子リオンへの愛は、死を超えて永遠に続くという誓いの証だ」


そして最後の一文を読み解くと、フノンは晴れやかな表情を見せた。


フノン:「『プロテクティオ・アクアトゥス(海の守護)』。これはセイレーンが守護者としての使命を完遂したことを示している。……これで全てのメッセージが繋がったよ」


私たちはついに洞窟の最奥部、神聖な泉へと辿り着いた。

そこはまばゆい青い光が満ち溢れ、泉の水はそれ自体が意思を持っているかのように、キラキラと生命の輝きを放っている。


だが、その泉の前には、あの巨大な海竜が再び姿を現し、私たちの行く手を阻んだ。


アリス:「私たちが最後に来たわよ。私たちはセイレーンの祝福を受け、その遺志を継ぐ覚悟がある。どうか、その聖なる水を分けてくれないかな?」


海竜は無言のまま、私たちの目を覗き込むように見つめてきた。

嘘や虚飾がないかを確認するかのような数秒の沈黙の後、彼は静かにうなずいた。

海竜の尾が泉の表面に触れると、波紋が広がり、水は一瞬にして宝石のような透明度へと変化した。


アリスは慎重に泉の水を汲み、その冷たく清らかな感触を肌で感じ取った。

私たちはセイレーンの勇気と愛をしっかりと胸に刻み、試練を終えて洞窟の出口へと戻った。


洞窟の外へ出ると、あの水の龍が再び私たちの前に現れた。


龍:『見事だ。試練を乗り越えし者たちよ。お前たちに、人魚姫の遺産を授けよう』


龍が差し出したのは、虹色に輝く美しい貝殻に包まれた魔法のペンダントだった。


アリス:「わあ……! すごくきれいなペンダント!」


貝殻の中に埋め込まれた宝石は、深海の青をそのまま結晶化させたような不思議な輝きを放っていた。


龍:『これはセイレーンの愛と力が込められた特別な遺産だ。これを持つ者には、海の加護が与えられる』


その力は多岐にわたる。

一つ。手をかざすだけで水を自在に操り、荒波や嵐さえも静めることができる「水操作」。

アリスが試しにペンダントを手に取ると、近くの小さな水たまりが生き物のように形を変え、宙に浮き上がった。


一つ。水中で息を止めることなく、自由に呼吸ができる「水中呼吸」。

これがあれば深海の探索も、危険な海域の突破も容易になる。水中での会話さえ可能にする魔法の力だ。


一つ。海の生物たちの「心の声」を直接聞き取る能力。

イルカやクジラ、小さな魚たちの願いや悲しみを聞き、彼らと対話することができるようになる。


そして最後の一つ。持ち主をあらゆる危険から守る「水の防壁」。

敵対する生物の攻撃を防ぎ、仲間をも包み込む強力なシールドを展開することができるのだという。


龍:『ただし、この力は正しい心を持ち、自然を愛する者のみが使える。悪用は決して許されぬ……。セイレーンの遺志、頼んだぞ』


それだけを言い残し、龍は光の粒子となって消えていった。


ペンダントを手にした私たちは、再び神殿の人魚姫の石像の前に立ち、その勇敢な魂に感謝の祈りを捧げた。


アリス:「……すごいペンダントだけど、私にはディネがいるし、アクエリアスもいるから、水系の力はもうお腹いっぱいなのよね。これ、フノンにあげるわ!」


フノン:「えっ!? いいの? これ、水系魔法使いにとっては究極のアーティファクトだよ?」


アリス:「いいのいいの。フノンが持ってた方が、パーティー全体の戦力バランスが良くなるでしょ。ありがたく使いなさい!」


フノン:「ありがとう、アリス。……大切にするよ」


アリス:「よし! これでフノンもパワーアップしたし、最強の4人で天下を獲りに行くわよ!」


ミクリ:「天下って……一体何の天下を獲るつもりなんだい?」


アリス:「……考えてないわ!」


サラ:「やっぱり。考え無しのバカだったね!」


アリス:「バカ言うな! そんなこと言ったら、読者の子供たちの教育に悪いだろ!」


サラ:「どこの子供だよ?」


アリス:「『なろう』を読んでる良い子の読者たちよ!」


サラ:「大丈夫だよ。読者の子供たちはアリスよりずっと賢いから。みんな、アリスみたいにならないように気をつけてね!」


アリス:「失礼ね! ……まあいいわ。いつまでもここにいても始まらないし、次の国へ行くわよ!」


メリッサ:「アリス様! 舟の用意はバッチリできていますよ!」


アリス:「……また、あの小さなボートじゃないでしょうね?」


メリッサ:「失礼ですね! 今度はちゃんとパワーアップしていますから!」


期待して海岸へ向かうと、そこには立派な大型の帆船が停泊していた。


アリス:「良かった! 今度はちゃんとした『船』だわ!」


メリッサ:「そうですよ! こちらです!」


メリッサが意気揚々と指差した先。

……その巨大な帆船の「隣」に、ちょこんと浮いている10人乗りの小舟。


メリッサ:「見てください! さっきのより大きくなって、安定感も抜群ですよ!」


アリスたちは、再び訪れた絶望感に肩を落とした。


メリッサ:「さあ、皆さん乗ってください! 今度はフノン様がペンダントで水を操ってくれますから、もっと快適ですよ!」


アリス:「フノン……お願いだから、ゆっくり進めてね。私の三半規管はもう限界なんだから」


フノン:「……善処するよ。任せて!」


フノンが授かったばかりのペンダントに魔力を込めると、小舟がゆっくりと滑り出した。

最初は優雅な速度だったのだが、ペンダントの魔力が想定以上に強かったのか、速度はみるみるうちに上昇していく。


結局、私たちは時速200キロを超える激流に身を任せることになった。


フノン:「……ごめん! やっぱり上手く制御できない! これ、出力が高すぎるよ! 今度練習しておくから耐えて!」


阿鼻叫喚の悲鳴が海上に響き渡る。

そして、私たちは命からがら、カンタレラ王国の南に位置する島に着いた。


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