59 ルティア共和国編 part 03(改訂)
ディアブロの秘書 マリア
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アリスたちの目の前に、前触れもなくマリアが姿を現した。
アリス:「えっ! どうしたの、マリアさん。そんなに慌てて」
マリア:「アリス様! 大変でございます! ついに、ついに……!」
アリス:「だから、何が?」
マリア:「ラインリッヒ共和国が、ついに軍を動かしました!」
アリス:「ついに来たか。……で、狙いはシエステーゼ王国?」
マリア:「いいえ!」
アリス:「そう。じゃあ、侵略しやすいアルメール王国を狙うつもりだね?」
マリア:「いいえ!」
アリス:「じゃあ、海を回ってリンデン王国とか?」
マリア:「いいえ!」
アリス:「ええええ……じゃあ、どこなのよ!」
マリア:「バーストエンドミラージュの報告によりますと、ラインリッヒは『ゲルデヘルム魔王国』を侵略すべく、北部に大軍勢を集結させているようです!」
アリス:「バカじゃないの!? そこ、わたしの領地(魔王領)だよ!」
マリア:「そうなのです! 彼らは無謀にも、魔王領を侵略しようとしているのです!」
アリス:「なんでそんな無茶を……。ん? なんだか嫌な予感がする」
マリア:「ラインリッヒの軍勢には、魔族が数万人加わっているとの報告があります。さらに、彼らの重装歩兵には、魔法防御に特化した未知の装備が支給されているそうです」
フノン:「魔法防御特化……。もしかして、イングラシル共和国製の魔道具でしょうか?」
マリア:「なぜそれをご存知なのですか!? 私もつい先ほど、バーストエンドミラージュから報告を受けたばかりなのに!」
アリス:「……なるほどね。全部繋がっちゃった」
マリア:「現在、ディアブロ様がどのように対処すべきか苦慮されています。アリス様には、至急魔王城へお戻りいただきたいとのことです!」
アリス:「そうは言っても、こっち(ルティアの革命)もこれからだし……あっちもこっちも大変だなぁ!」
ミクリ:「アリス、こっちは僕たちだけでも大丈夫だよ。一番厄介なのは『トリプルS』だけど、これまでの敵に比べればなんとかなるはずさ!」
アリス:「そうだね。ミクリとフノン、それにメリッサがいれば、大概の敵なら大丈夫か」
アリス:「よし、わかった。魔王城に行こう!」
マリア:「では、私がお連れいたします!」
まばゆい光とともに、アリスとマリアはワープでその場から消え去った。
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舞台は変わって暗黒旅団のアジト
グエスト
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グエスト:「ヴァイオレット様。ラインリッヒ共和国より、使者が参っております」
ヴァイオレット:「ラインリッヒだと? また遠いところから何の用じゃ。……まあよい、通せ」
使者:「ヴァイオレット様。お初にお目にかかります」
ヴァイオレット:「して、何用か?」
使者:「この度、我が国は戦を始めることとなりました。つきましては、暗黒旅団を傭兵として雇いたいのです。報酬は言い値でお支払いいたしましょう」
ヴァイオレット:「ほう! 随分と魅力的な提案ではないか。言い値とはな。……それで、相手はどこだ?」
使者:「北の魔王国でございます」
ヴァイオレット:「北の魔王国だと!? ……ラインリッヒの兵力はどれほどだ?」
使者:「魔法防御装備を纏った重装歩兵が二十万。魔術師部隊が十万。魔族が十万。さらに魔法科学武装の新兵器部隊が十万。合計五十万の大軍勢です。対する北の魔王軍は、先の戦いで消耗しており、かき集めても三万程度でしょう」
ヴァイオレット:「五十万対三万だと! 圧倒的ではないか! ……くふふ、ざまあみろ! あのクソアリスめ、とっとと滅ぼされてしまえ!」
グエスト:「ヴァイオレット様。……少々、お耳を」
ヴァイオレット:「なんじゃ?」
側近のグエストが、ヴァイオレットに何事か耳打ちをした。それを聞いた彼女の顔が、みるみるうちに青ざめていく。
ヴァイオレット:「ラインリッヒの使者よ! 今から検討するゆえ、少し控え室で待て!」
使者:「……。かしこまりました」
使者が部屋を出たのを確認し、ヴァイオレットが叫んだ。
ヴァイオレット:「どういうことだ、グエスト!」
グエスト:「密偵からの報告によれば、アリスたち数名だけで、先の北の魔王の『五十万の闇の軍勢』を壊滅させたとのことです」
ヴァイオレット:「なっ……! 五十万の軍勢を、たった数人で!? そんなバカなことがあり得るか!」
グエスト:「さらに、南の魔王領にいた魔族の四分の一をも、たった四人で滅ぼしたそうです。中央の精鋭であるブラックドラゴンの部隊も、魔人部隊も、すべて壊滅したとの報告が……」
ヴァイオレット:「南の魔王領の四分の一を!? 精鋭ブラックドラゴンが壊滅……!? ありえん! そんなことは許されんぞ! 相手は南の魔王なのだぞ!? ……それは、本当なのか?」
グエスト:「間違いございません」
ヴァイオレット:「…………」
ヴァイオレットは、ガタガタと震えながら絞り出すように言った。
ヴァイオレット:「……すぐに、ラインリッヒの使者を通せ!」
再び広間に現れた使者に、ヴァイオレットは殊勝な態度で告げる。
ヴァイオレット:「悪いが、暗黒旅団の大多数は現在出払っており、そちらに人を割く余裕がない。……本当は、本当は受けたいのじゃが! どうしても人が用意できんのじゃ。誠に残念ながら、今回の要請はお断りさせていただく!」
使者:「……承知いたしました。その旨を本国に伝えます。お時間をいただき、ありがとうございました」
使者が去ったのを見届け、ヴァイオレットは即座に指示を飛ばした。
ヴァイオレット:「グエスト! すぐに北の魔王へ伝えろ! 『暗黒旅団は傭兵として加勢する』とな!」
グエスト:「承知いたしました」
ヴァイオレット:「本当に、あの化け物どもは五十万を壊滅させたのか……?」
グエスト:「ヴァイオレット様。……あの者たちは、わが団の『十妖騎士』と『三鬼神』を秒殺したのですよ?」
ヴァイオレット:「……。当分、大人しくしておこう。北の魔王には、十妖騎士と三鬼神を援護に向かわせろ!」
グエスト:「御意」
ヴァイオレット:「ああ、忌々しい……! アリスめ、クソ……! やっぱり、わらわは当分引きこもるぞぉ!」
ヴァイオレット
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その頃、魔王城に戻ったアリスを出迎えたのは、召喚獣のウィンちゃんだった。
しかし、その姿は以前見た時よりも、また一段と成長しており――。




