24 世界一格闘技大会編 エピソード13 part2(改訂)
アリス
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カサドニアの巨大闘技場は、観客で超満員だった。
決勝戦のゴングが鳴る直前、空気は張りつめ、誰もが息を飲んでリングを見つめていた。
昨日の不思議な戦いの余韺がまだ残り、観客の目には期待と不安が混じっていた。
まず登場したのは、昨年の優勝者——王国の魔剣士フレデリック。
金髪をなびかせ、優雅に剣を構えるその姿に、観衆から大歓声が沸き起こった。
「フレデリック! 今年も頼むぞ!」
フレデリックは準決勝でも時間魔法で圧勝していた強者だ。
アリスは試合直前、密かに指輪を掲げていた。
アリス:「時空神クロノス、召喚!」
インビジブルで姿を消したクロノスには、控室で頼んでおいた準備をすでに完了させていた。
決勝のゴングが鳴った。
フレデリックが即座に動いた。
フレデリック:「クイック! アンド クイック!」
アリスが何か唱える前に時間を止める作戦だった。
しかし——
フレデリックの時間魔法が発動した瞬間、カウンターでタイムクラッシュがオート発動した。
フレデリックの時間魔法はあっけなく破壊された。
フレデリック:「クソー! ストップ!」
再びカウンターでタイムクラッシュ。
時間魔法が二度も無効化され、フレデリックの表情が大きく歪んだ。
アリスは一気に間合いを詰め、剣を振るった。
フレデリックは剣で受け止め、二人の激しい打ち合いが始まった。
金属音が響き渡り、剣と剣が激しくぶつかり合う。
フレデリックは魔力を込めた強撃を繰り出し、アリスも気を込めて受け止め、互角の攻防が続いた。
凄まじい打ち合いの中、ふと間ができた瞬間——
アリスは聖なる気を静かに溜め始めた。
十分に聖気が溜まったところで、アリスは大きく踏み込んだ。
アリス:「気を剣に込めて、横一文字! えい!」
聖なる気を乗せた一撃が、フレデリックを吹き飛ばした。
リングに倒れ込んだフレデリックは、動かない。
審判が大きく手を上げた。
審判:「アリスが優勝です!」
観衆が総立ちで叫んだ。
観客:「ウォーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
小さな声で「インチキじゃないのか」「ふざけるな」という不満も聞こえたが、大半は熱狂の渦に飲み込まれていた。
アリスは倒れたフレデリックに近づき、手を差し伸べた。
フレデリックは苦笑しながらその手を取り、立ち上がった。
二人は固く握手をした。
観衆は再び大歓声で沸いた。
こうして、世界一格闘技大会は幕を閉じた。
控室に戻ると、ミクリが興奮気味に聞いた。
ミクリ:「フノン! タイムクラッシュって何!?」
フノンが青ざめた顔で答える。
フノン:「またこれも伝説上の魔法です……
時間魔法が使えるだけでもほんの一部の魔術師しかいないのに、
さらにその時間魔法を破る魔法を習得できた人なんて聞いたことがありません。
しかもカウンターで発動するなんて……伝説でも聞いたことがありません」
ミクリ:「伝説でも聞いたことがないなら、いったい何をしたんだろうね?
アリスが戻ったら聞いてみよう!」
三人は群衆に紛れて宿に戻った。
部屋で、アリスは楽しそうに今回の準備を説明し始めた。
アリス:「実はね、指輪の召喚獣を使って、アルテミスとクロノスに頼んだの!
タイムクラッシュの魔法式を解析して、カウンター発動タイプに書き換えてもらったんだよ!」
ミクリとフノンはただただ唖然としていた。
まさか召喚獣をそんな使い方をするとは……
アルテミス
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アリス:「アルテミス様の補助系魔法はすごい! 凄すぎる!
これは本当に神様だよ!」
頭の中で精霊たちが一斉に反応した。
ディネ:「ふふっ、同じ月の力なら、セレネも使えるわよ?」
アリス:「そうなの? 回数や制限時間もないの?」
ノーム:「ないですよ」
アリス:「めちゃくちゃ強いじゃないですか? セレネさん!」
セレネ:「当然ですけどね。
アルテミスは同じ月の女神で親戚ですから」
アリス:「今後は使わせてもらいますので、よろしくね♪」
セレネ:「仕方ないですね……」
サラ:「優勝だぞ! まぐれでしょ! 僕は信じないからな!」
ウィプス:「おめでとうアリスちゃん! すごいね!」
シルフ:「やったー! 優勝おめでとう!」
エント:「お疲れ様ですわ。でも無茶はしないでね」
ジェイド:「……危なかった……でも勝ってよかった……」
アリスは笑顔で拳を握った。
アリス:「何を言われても気持ちいいですね!
みんな、ありがとう!」
宿でゆっくり休んでいると、部屋のドアがノックされた。
三人が警戒しながらドアを開けると、宮廷騎士が立っていた。
国王からの手紙を渡され、中を見ると召集状だった。
明日の朝、宮廷に来て欲しいという。
アリス:「もしかして国王からご褒美が出るのかな?」
ミクリ:「宝石とかもらったらどうしようかな」
フノン:「格闘技大会に優勝してご褒美が出たという話は聞いたことがないけど……」
アリス:「とりあえず明日行ってみましょう!」
翌朝、カンタレア王宮。
アリスは門番に召集状を見せると、彼女だけ中に通された。
長い廊下を抜け、広い客室に案内されると、そこには先日戦った四天王——
フレデリック、ヘルナンデス、パトリオット、ジルがすでに揃っていた。
さらに王室へ通されると、豪華な玉座にカンタレア国王が座っていた。
カンタレア国王:「よく参られた。
連日の死闘でお疲れのところ申し訳ない。
おや? 懐かしいお顔に思うのだが……
もしかすると、シエステーゼ王国のシェラール王女様ではないかな?」
アリスは小さく頭を下げた。
アリス:「実はそうです」
国王は目を細めて微笑んだ。
カンタレア国王:「なんということか。久しぶりじゃのう。
小さな頃にお会いしたきりだが、皇后陛下に似ていらっしゃるのでもしやと思ったが……そうか。
先日のエルムガンド帝国との戦いでの武勲も聞いておる。
そうなると話しやすくなったのう」
アリス:「いったいどうしてお呼びになられたのでしょうか?」
国王は表情を引き締めた。
カンタレア国王:「実はみんなも気づいておると思うが、最近、北の魔族の動きが怪しい。
密かに調べさせたところ、北の魔王が好戦的な闇の魔王に変わったということだった。
闇……」
(続きは次話で)




