201 星界編 ― 星詠(ほしよみ)の巫女と時の継承 ― part7
星海の空を進む《アステリア号》。
創世樹の光が静かに遠ざかり、代わりに夜空一面の流星が走る。
その中に――一際強く、脈動する光があった。
ノーム:「あの星、動いてる……?」
サラ:「ううん、違う。あれ、“こっちに来てる”!」
船の上空で、光が弾ける。
やがて、柔らかな星光が人の姿を形づくった。
ディネ:「……女の子?」
ノーム:「魔力反応、まるで星そのものみたいです。」
少女はゆっくりと目を開けた。
その瞳は、まるで宇宙を映しているように深く――
その声は、風のように優しかった。
星詠の巫女:「はじめまして。私は〈星詠の巫女〉イリス。
星の記憶を継ぐ者――そして、“時の継承”を告げる者です。」
アリス:「“時の継承”? それは……何を意味するの?」
イリスは微笑みながら、静かに指を空に向けた。
そこに星々の軌跡が線を描き、やがて“ひとつの模様”を成す。
それは――アリス自身の魂の形だった。
第二章 転生の真実 ― 精霊王の約束
イリス:「アリス・フィーネ。あなたはこの世界で生まれた存在ではありません。
異界から転生し、この世界に“核”をもたらした者――“光の種子”の継承者です。」
アリス:「……異界から……来た?」
その瞬間、アリスの胸の奥に眠る“記憶の断片”が疼いた。
見知らぬ空。崩壊する都市。
そして――最後に聞こえた声。
『お前の魂を、この世界に託す。
いずれ“原初の核”が再び芽吹くとき、
この星は生まれ変わるだろう。』
アリスは震える唇でその名を呟いた。
「……精霊王……!」
イリスは頷いた。
イリス:「ええ。あなたの魂は、彼の手で“星界へ転送”された。
それと同時に、“原初の核”――すなわち精霊王の魔力があなたの中に宿ったのです。」
ディネ:「それでアリスの魔力が、世界の理を超えてたんだ……!」
ノーム:「でも、その核が何のために?」
イリス:「それは、“世界の再創生”のため。
この星界はかつて、神々の暴走で一度滅びた。
精霊王はその再生を見越し、“異界から来た魂”を種に選んだのです。」
アリス:「私が……世界を再生させるために?」
イリス:「いいえ――“選ばれた”のではなく、“選んだ”のです。
あなた自身が、かつて絶望の中で“もう一度、生きたい”と願った。
その願いが、星の理を越えて届いたのです。」
第三章 時の継承 ― 星詠の儀
イリスは《アステリア号》の中央デッキに魔法陣を展開した。
それは古代の詠唱で構成された“星詠の陣”――
この儀式を通して、アリスの魂に刻まれた真の記憶を呼び覚ますものだった。
イリス:「これから、“星詠の儀”を行います。
原初の核の継承は、あなた自身の選択によって行われる。」
アリス:「もし……拒んだら?」
イリス:「世界は、もう一度眠りにつく。
でも、それは“終わり”ではなく、“再び始まりの待機”になるでしょう。」
アリスは目を閉じた。
胸の中で、かつての精霊王の声が再び響く。
『アリス……お前が願う限り、この世界は続くだろう。
だが、進む道を決めるのは――お前自身だ。』
アリス:「……私は、選ぶ。
“生きる”ことを。終わらない命じゃなくて、続いていく命を。
だから――継承する。」
魔法陣が光を放ち、彼女の背中から六枚の光翼が展開された。
その瞬間、アリスの魔力は宇宙全体に共鳴し、
“星々の鼓動”が再び鳴り始めた。
第四章 時の継承者 ― 星々の帰還
ノーム:「船が……浮いてる!? 重力が逆転してる!」
サラ:「違う、これ――星々が《アステリア号》のまわりに集まってきてる!」
ディネ:「まるで、アリスに導かれてるみたい……!」
イリス:「これは、“時の継承”の証。
星々は、アリスの中に宿る“精霊王の記憶”を認識したのです。
彼女が、新しい“理の継承者”になった――。」
アリスの周囲に、星の粒子が集まり、
彼女の形を取った“光の分身”が幾つも浮かび上がった。
アリス:「これが……星々の命……?」
イリス:「ええ。彼らは、あなたの中に“生の可能性”を見た。
かつて滅びた世界の欠片たちです。」
光が一斉に舞い上がり、
宇宙に散っていく――まるで再び生まれ変わるように。
イリス:「これで、“原初の核”は真に覚醒しました。
あなたは、時の継承者アリス。
過去と未来を繋ぐ、唯一の鍵。」
アリスは静かに頷いた。
そして、遠くの星を見つめながら呟く。
アリス:「……精霊王。
あなたが見た未来、私がきっと、繋いでみせる。」
第五章 新たなる航路へ
《アステリア号》は新しい光の航路を描き始めた。
その進む先には、星雲の奥深く――“時の海”と呼ばれる空域が広がっていた。
イリス:「この先に、“時を超える神殿”があります。
そこには、あなたの魂の“原点”が眠っています。」
サラ:「まだ……冒険は終わらないみたいね。」
ノーム:「当然です。星の理を継いだばかりですから。」
ディネ:「アリス、準備はできてる?」
アリス:「もちろん。――行こう、次の世界へ。」
船が光を放ち、星海を突き抜ける。
その背後では、無数の星々がアリスたちを見守るように輝いていた。




