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199 星界編 ― 星を喰らう者 part5


エデン空間が震える。

無数の光の柱が立ち上がり、空間が幾重にも分割されていく。

その一つ一つが異なる“世界の断片”――創世の始まりから今までの、全ての時間の記録だった。


アステリア:「時空層が重ねられていく……まるで、宇宙の構造を再演しているかのよう……!」


セラフィス:「これは、“創世の再現”――神々の視点だ。

お前の存在が、どれほど理を乱したか、見せてやろう。」


時間が反転し、アリスの目の前に無数の“彼女自身の記憶”が浮かび上がる。

勇者を封じた日。

聖女との対立。

クロノスとの契約。

そして――異界の門を閉じた瞬間。


アリス:「全部……私が選んできた道。でも、それが間違いだったって言うの?」


セラフィス:「そう。選択は常に因果を乱す。

人間の“自由意思”こそが、創世を壊す最大の“誤差”。」


アリス:「でも――自由があるからこそ、“希望”が生まれるんでしょ!」


アリスの叫びと同時に、

《アステリア号》の魔導炉が再び輝く。

クロノスから継承した“時の核”が、彼女の剣に同調する。


アリス:「――《時神剣ルーメン・エターナ》!」


光が走る。

星々の記憶を束ねた一撃が、セラフィスの放つ創世の槍と激突する。


空間が歪み、時間が止まり、

二人の間で“存在そのもの”がぶつかり合った。


セラフィス:「理解不能……お前は、なぜそこまで抗う?」


アリス:「だって……私は、生きてるんだもん!」


アリスの叫びと共に、

彼女の背後にディネ、サラ、ノームの精霊たちが姿を現す。


ディネ:「アリス、私たちはここにいるわ。」


サラ:「だって、私たちはずっと一緒に旅してきたじゃない!」


ノーム:「あなたの選択があったからこそ、今の世界があるんです!」


三人の精霊の力がアリスに収束し、

その魔力は“生命の光”そのものとなって放たれた。


セラフィス:「……これは……創世の原初力……!」


アリス:「これが、私たちの“答え”よ!」


最後の衝突が走り、空間が白く染まる。

やがて――光が収束すると、そこには静かな“創世の庭”が広がっていた。


セラフィスは跪いていた。

その翼は砕け、代わりに柔らかな光を放っている。


セラフィス:「……我々は誤っていたのかもしれない。

理とは、停止ではなく、生の流れそのもの……」


アリス:「神々も……ただ、“止まること”を恐れていたんじゃない?」


セラフィス:「……そうかもしれない。

お前たちの世界が、我らの思い描いた“理想”を超えていることを……今、理解した。」


彼は微笑み、光の粒となって消えていった。


アステリア:「創世の中枢、再構成完了。新たな航路、開放。」


アリス:「どこへ向かうの?」


アステリア:「――“創世の果て”、神々の終焉域。

そこに、“最初の人間”がいる。」


アリスは静かに頷いた。

サラがその袖を引っ張りながら言う。


サラ:「まだ冒険、終わらないんだね。」


アリス:「終わらせない。これは――私たちの“世界の物語”だから。」


《アステリア号》は、星界の果て――時すら流れを止める灰白の空間にたどり着いていた。

そこでは光も闇も意味を失い、

存在という概念そのものが、かすかに揺らいでいた。


アリス:「……ここが“終焉域”……時間の概念が消えてる。」


ノーム:「まるで、世界そのものが夢を見ているようですね。」


ディネ:「でも、何かが息づいてる……“意志”のようなものが。」


サラ:「ねぇ……聞こえない? 誰かが……呼んでる。」


船の外に漂う光がゆっくりと人の形を取り始める。

それは一人の青年――白銀の髪に、静かな琥珀の瞳をもつ存在。

その微笑みには、どこか“懐かしさ”が宿っていた。


アリス:「……あなたは?」


青年:「エル=シオン。かつて神々に“創世”を与えられた、最初の人間だ。」


アリスの心が一瞬だけ凍りつく。

その言葉は、まるで“最初の物語”の扉を開く鍵のように響いた。


エル=シオンは、ゆっくりと空を見上げた。

そこに星はなかった。ただ、白い無音の世界。

だがその空には、無数の“壊れた世界の断片”が浮かんでいた。


エル=シオン:「私は、神々の創造の試作体として生まれた。

生命とは何か、自由とは何か――その答えを探すために創られた“最初の試み”。

だが、私は神々に言ったんだ。『世界は、繰り返す限り“生きていない”』と。」


ノーム:「……繰り返し、ですか?」


エル=シオン:「そう。神々は完璧を求め、幾度も創世を繰り返した。

滅び、再生し、また滅びる。――人はその輪の中で、魂を削られていった。」


ディネ:「だから、あなたは神々に反逆したのね?」


エル=シオン:「ああ。私は“終焉”を選んだ。

神々の創造を止め、世界を眠らせるために。」


アリス:「でも……あなたは生きてる。

この“終焉域”を守るように。」


エル=シオン:「守っているのではない。待っているんだ。」


アリス:「待ってる?」


エル=シオン:「――“君”をだよ。アリス。」


空間が波打つ。

エル=シオンの背後から、光が溢れ、まるで神話が再生されるように“原初の創造”が広がった。

浮かび上がるのは、いくつもの世界の記憶――滅びの断片。


エル=シオン:「君が“自由”を選んだことで、世界は動き始めた。

だがその代償として、理は崩壊しつつある。

いま君が歩む未来は、神々が再び“創造”を試みるきっかけになる。」


アリス:「つまり、私の存在が次の創世を呼ぶって言うの?」


エル=シオン:「そう。だから私は君を止めなければならない。

――“創世の継承者”としての責務を果たすために。」


その瞬間、空間が砕け散り、アリスとエル=シオンの間に重力波が走る。

アリスの背後では、ディネ、サラ、ノームが防御魔法陣を展開する。


アリス:「やっぱり、避けられないのね。

私たちは、“生きるため”に戦う!」


エル=シオン:「そして私は、“終わらせるため”に戦う!」


アリスが聖剣を振るう。

刃が空気を裂き、光が走る。

その光が触れた瞬間、無数の時空層が解け、過去の世界が幾重にも重なって見えた。


ディネ:「アリス! 空間が分裂してる!」


ノーム:「“時間干渉”です! 彼は……世界の時間そのものを操っている!」


サラ:「あたしたちの魔力、通じない!?」


エル=シオン:「これが“創世の理”――神々が生み出した最初の魔法。

空間も、命も、時間さえも、ただの数式に過ぎない。」


アリス:「数式じゃないわ。

“感じること”で、私たちは世界をつないでる!」


アリスの剣が光を放ち、ディネの水の魔法が霧となって流れ、

サラの炎がその中に紅の閃光を走らせ、ノームの大地がそれを支える。


三大精霊の力がアリスに集束し、彼女の背後に**“創世の羽”**が展開される。


エル=シオン:「……それが、君の“人の進化”か。」


アリス:「違う。“絆”よ。私たちは、ひとりじゃない!」


アリスの一撃が放たれ、エル=シオンの放つ“終焉の波”と衝突。

衝撃波が時空を裂き、終焉域の地平がゆっくりと崩れ始める。



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