178 パブロフ正教国の聖女編 part2
その頃、アリスはシグナス王国の王宮にいた。
シグナス王国では、幸運なことに、西の魔王軍の侵攻の影響をあまり受けずに済んだ。
ただ隣国であるイングラシル共和国、パルキニア共和国の復興のために追われていた。
アリス「ノアール。シグナス王国は大丈夫だった?」
ノアール王女「シャル。幸いにも西の魔王軍はシグナス王国を通りませんでしたから、被害はありませんでした。」
アリス「シグナス王国が無事でよかった。」
ノアール王女「でもイングラシル共和国、パルキニア共和国が壊滅的なので、隣国としてできる限りのことをしたいの。でも2国の復興に支援できる貯えがないの。」
アリス「それならシエステーゼ王国から支援を送るわ。」
ノアール王女「まあ。助かるわ。やっぱり持つべきものは友ね。」
そのとき、アリスたちのそばで、きらきらと輝く光の霧とともにマリアが現れた。
マリア「アリス様。緊急事態でございます。」
アリス「ノアール、ごめんなさい。」
ノアール王女「私は大丈夫よ。」
アリス「マリア、どうしたの。最近になってあたなが来るのは珍しいね。」
マリア「アリス様。こんなときに誠に申し訳御座いません。実は、南の魔王軍が東の魔王領に攻め込んで来たのです。」
アリス「え!南の魔王め! こんなときに何を考えているんだ。」
マリア「世界が混乱していて、西の魔王がいなくなったことで、ことに及んだようです。南の魔王軍は20万。対して、東の魔王軍は7万しかいません。このままでは、東の魔王が破れてしまいます。」
アリス「東の魔王には恩がある。ディアブロは昔からの知り合いだったわね。助けないと。北の魔王領に残った軍隊はどれくらいいるの?」
マリア「全部集めて10万足らずです。」
アリス「では、ディアブロに、10万すべてと、巨神獣のタイタン、オーディン、バハムートを連れて援軍に向かいなさい。と伝えて。」
マリア「それでは、北の魔王領の軍勢がいなくなります。」
アリス「構わない。北の魔王領はアルテミスに任せて、ディアブロを至急、東の魔王領に向かわせなさい。」
マリア「かしこまりました。」
マリアはきらきらと輝く光の霧とともにが消えた。
アリス「ノアール、ごめんなさい。」
ノアール王女「大変なときに、大変なことになったわね。」
アリス「ほんとに。ノアール、シエステーゼ王国から支援は至急、手配するから。」
ノアール王女「シャル。気を付けてね。」
アリス「ありがとう。じゃ、またね。」
アリスはきらきらと輝く光の中に消えていった。
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<北の魔王城>
きらきらと輝く光の中から、北の魔王城の広間にアリスが現れた。
アリス「アルテミスはいるか?」
アルテミス「ここにいます。ディアブロ様はすでに東の魔王領に向かいました。」
アリス「アルテミス。北の魔王領の守りは任せる。巨神獣のフェニックス、リヴァイアサンを北の魔王城に置いて、何かあったら、向かわせるように。」
アルテミス「かしこまりました。アリス様はどうされますか?」
アリス「今からシエステーゼ王国に行き、イングラシル共和国、パルキニア共和国の復興のため支援物資をシグナス王国に送るように手配して、東の魔王を助けに行く。」
アルテミス「かしこまりました。こちらはお任せください。」
アリスはきらきらと輝く光の中に消えていった。
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<シエステーゼ王国>
シエステーゼ宮殿の謁見の間に、きらきらと輝く光の中からアリスが現れた。
アリス「お父様。」
シエステーゼ国王「シャルルよ。無事だったか。」
アリス「私は無事です。シエステーゼ王国は大丈夫でしたか?」
シエステーゼ国王「我が国は大丈夫だったよ。北の魔王領の方が大変だったのではないか。」
アリス「大丈夫です。お父様。私の方は心配いりません。」
「ところで、お父様にお願いがございます。イングラシル共和国、パルキニア共和国の復興のため支援物資をシグナス王国に送るように手配していただけますでしょうか。」
シエステーゼ国王「そのくらい。すぐに手配するよ。」
アリス「お父様。ありがとう。」
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<エルムガント帝国>
その頃、聖女とアークレイはエルムガント帝国に入ったところだった。
魔王領にいる間は邪悪な魔の力に邪魔されて、聖女様の転送が使えなかった。
アークレイ「聖女様。エルムガント帝国内に入りました。邪悪な魔力の圏外なりましたが、すぐにパブロフ正教国に転送されますか?」
聖女様「おかしい。このすぐ南の国に、とてつもないパワーを感じる。すぐに対処しないと。」
アークレイ「このすぐ南の国となりますと、シエステーゼ王国になります。」
聖女様「私はパワーの源に転送する。アークレイ、後は頼む。」
アークレイ「えっ?!」
聖女は輝く光に覆われて、消えていった。
アークレイは呆然と立ちすくんでいた。
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<シエステーゼ王国>
シエステーゼ宮殿の謁見の間のアリスの前に、きらきらと輝く光のローブとともに聖女が突然現れた。
聖女は、アリスを見るなり、間髪入れずに聖なる呪文を唱えた。
聖女様「お前が元凶だな。第九位階の聖魔法、エクセリアス・セイント・フラッシュ!」
だが、アリスのオートキャンセルが発動して、魔法が打ち消された。
アリス「誰だ!何をする!」
聖女様「なんですと。第九位階の聖魔法が効かないとは。それでは、第十一位階の聖魔法、ファイナル・セイント・ボム・スパークブロー!」
アリス「第十一位階の聖魔法なんて。この国を破壊する気なの。クロノス召喚。タイムクラッシュ!」
聖女の魔法が発動する前に、すべての時間が止まった。
だが、時間が止まった中でも、アリスと聖女の思念体は動けた。
アリス「なぜ時間が止まった中でも動けるの。あなたは何者なの?」
聖女「私は、シシーリア・マクシミアヌス・アグネス。パブロフ正教国の聖女である。あなたの存在は危険だ。今すぐに消す必要がある。」
聖女の思念体は、アリスの思念体と激しくぶつかり合った。
2人のパワーのぶつかり合いは激しいもので、何回も何回もぶつかり合い、ついに時空に歪みができそうになった。
アリス「聖女様。待って。このままでは時空が避けて世界がなくなります。一旦、止めましょう!」
聖女「そうだね。このままでは世界が消滅するわね。世界が消滅するのは私の本意ではない。
ところで、あなたは何者か?」
アリス「私は、冒険者アリスだけど、シエステーゼ王国 第一王女シェラールであり、北の魔王でもあります。」
聖女「あなたが北の魔王なの?
私があった北の魔王とは違うのね。」
アリス「聖女様があったのは代理です。クロノス召喚。タイムクラッシュ・キャンセル!」
アリスは時間を戻した。
アリス「聖女様はなぜこんなことをするのですか?」
聖女「西の魔王の存在がなくなり、世界のパワーバランスが乱れたのだ。早急に対処が必要である。」
アリス「世界のパワーバランスが乱れ? どういうことですか? 詳しく説明してください。」
アリスと聖女は、王宮の宴の間に入り、紅茶を飲みながら話を始めた。