176 西の魔王編 part7
運命の激突!アリスvsギエル、世界を震わせる決戦が始まった。
漆黒の大地。
割れた空。
燃える海。
すべてが、この二人のために存在するかのように、世界そのものが舞台になった。
◆
ギエルは、静かに宙に浮かぶ。
その背には、虚無を纏った十三本の剣――《虚無剣群》。
一振りごとに、大地が崩れ、空間がひずむ。
それはもはや、兵器ではない。"存在そのものの否定"だった。
対するアリス。
彼女は、聖剣を両手に握り、静かに目を閉じる。
アリス「――精霊たちよ。」
心の奥で、呼びかける。
すると、ディネ、サラ、ノーム、それぞれの力がアリスの聖剣に宿り始めた。
聖剣から、蒼き焔、水の輝き、大地の加護が同時に溢れ出す!
アリス「精霊魔装解放!!」
アリスの身体が、精霊たちの力と一体化し、神々しい光を放つ!
◆
そして――
アリス「行くぞ、ギエル!!!」
ギエル「来い、北の魔王!!」
二人は、同時に飛び出した!
◆
ギエルの《虚無剣》が、アリスに殺到する!
一振り一振りが世界を抉る破壊力。
しかしアリスは、精霊の加護でそのすべてを弾き、かわし、すれ違いざまに剣を振るう!
ギエルも剣で受け止めるが、衝撃で空間に裂け目が走った!
ズガァァンッ!!!
周囲の兵士たちが吹き飛ばされ、戦場そのものが沈黙する。
◆
アリス「ハァッ!!」
アリスが聖剣を振り抜くと、
巨大な光の刃がギエルを包む。
しかし――
ギエル「無駄だ。」
ギエルは指を鳴らすだけで、虚無の盾を生み出し、光刃を消し去った。
アリス「……っ!」
アリスが歯を食いしばる。
ギエル「貴様では、俺を止められない。」
ギエルの身体から、さらに禍々しい魔力が噴き出す。
それは、彼の存在そのものを異次元へと進化させる魔力だった。
◆
ギエル、さらなる覚醒。
彼の周囲に、十三本の《虚無剣》だけでなく、
**"零域"**という絶対支配空間が広がっていく!
そこでは、あらゆる魔法が無効化され、
物理法則すらギエルの意思によって支配される!
ギエル「ここでは、俺が"神"だ。」
冷たく言い放つギエル。
アリスの呼吸が重くなる。
ディネ、サラ、ノームたちも、空気の重さに息を呑む。
しかし――
アリスは、一歩も引かなかった。
アリス「だからこそ……私が、"光"になる。」
アリスは、心の底から力を呼び起こす。
アリス「精霊たちよ――もっと力を貸して!」
その声に応え、ディネ、サラ、ノームが絶叫する!
◆
ディネ「アリス、絶対に負けないで!!」
サラ「全部燃やし尽くしな!!」
ノーム「私たちは、アリスを信じます!!」
精霊たちの魂が、アリスに重なる。
聖剣がさらに輝き、
その輝きは、ギエルの"零域"すら貫き始める!
◆
アリスは、全ての力を込めて、剣を構えた。
そして――
アリス「――精霊聖剣奥義。」
剣を振り上げると、
空から降り注ぐ星々すら呼応する。
アリス「ラグナ・エレメンタル・ブレイク!!」
全ての元素の力を束ねた究極の一閃が、ギエルを襲う!!
ギエルも全虚無剣を操り、迎え撃つ――!!
◆
空間が砕け、
時間すら歪み、
世界が、二人の戦いを中心に震え上がった――!
◆
天地を引き裂く閃光と轟音――
アリスの《ラグナ・エレメンタル・ブレイク》と、
ギエルの虚無剣群による絶対防衛が、真っ向からぶつかった。
刹那、戦場は"白"と"黒"、ふたつの色だけに染まった。
兵士たちは、ただその光景を呆然と見上げるしかなかった。
そこにはもはや、人の領域を超えた"神々の闘争"があったからだ。
◆
ギエル「……チッ」
ギエルの顔に、初めて焦りが浮かぶ。
虚無剣の結界を、アリスの剣閃が、確実に削り取っている。
ギエル(バカな……俺の力が、押されている……!?)
ギエルの脳裏に、初めて"敗北"の二文字がよぎった。
だが、ギエルは笑った。
ギエル「ならば――"これ"も、見せてやろう。」
彼の身体から、異様な黒い光が爆発する!
◆
ギエル、真の奥義解放――
《黒翼王・ギエル》
ギエルの背中から、巨大な黒い翼が三対、羽ばたく。
その一振りで、大地が陥没し、天空が裂ける。
ギエルは、"世界そのものを塗り替える存在"へと至ったのだ。
◆
ディネ「アリス!!こいつは、次元が違うわ!!」
だがアリスは、微笑んでいた。
アリス「大丈夫。……みんなの力があるから。」
彼女は、聖剣をぎゅっと握りしめた。
アリス「私たちの未来は、渡さない!」
そして、最後の決意と共に――
アリスは聖剣を、両手で高々と掲げる!
◆
アリス「――全精霊たちよ!!」
叫ぶアリスに応えて、
ディネ、サラ、ノーム、さらには遠くにいるすべての小さな精霊たちが力を貸した!
大地が光り、水が歌い、火が舞い、風が駆ける。
自然界そのものが、アリスに祝福を与えた。
◆
アリス「最終奥義――!」
聖剣が、宇宙すら震わせる光を放つ。
「エターナル・エレメンタル・インフィニティ!!!」
無限の精霊の力を束ねた一閃が、ギエルへと放たれる!!
ギエルもまた、黒翼を広げ、闇そのものを凝縮した刃を繰り出す!
ギエル「来い、アリス!!ここで、貴様を超える!!!」
二つの究極の力が、真正面から激突する――!!
◆
轟音。
閃光。
崩壊する世界。
だがその中で――
アリスの剣が、ギエルの闇を切り裂いた。
ギエルの胸を、光が貫く――!
ギエル「が、ぁっ……!!」
ギエルの身体から、黒い魔力が噴き出し、霧散していく。
彼は、倒れなかった。
それでも、膝をついた。
ギエル「……認めるしか、ない……」
ギエルは、悔しそうに、しかしどこか満足したように呟いた。
ギエル「貴様は……俺を超えていた……」
そして、ギエルは静かに笑いながら、意識を失い、崩れ落ちた。
◆
勝った。
アリスたちの勝利だった。
◆
疲労困憊のアリスに、ディネたち精霊が駆け寄る。
ディネ「アリス!よくやったよ!!」
サラが泣きながら飛びつき、
ディネがそっとアリスの頬を撫で、
ノームは静かに、誇らしげに微笑んだ。
アリスも微笑み返す。
アリス「……はぁ、やっと終わったね。」
◆
だが、その空を、どこか遠くから見つめる影の存在があった。