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175 西の魔王編 part6


アリスたちは、連戦に次ぐ連戦で疲れていた。


一つ砦を救えば、また別の村が焼かれる。

一人を助ければ、別の誰かが倒れる。


どんなに戦っても、終わりが見えなかった。


サラ「……くそっ、追いつかない!」


ディネも必死に傷ついた仲間たちを癒していたが、限界が近い。


ディネ「このままじゃ……持たない。」


ノーム「……いくら僕たちが強くても、数が違いすぎますよ。

 これでは、いずれ、押し切られます。」


そんな中。


アリスは、天を仰ぎ、拳を握りしめた。

心の奥底から湧き上がる焦りと、怒り、そして決意した。


アリス「もっと、力が必要だよ。」


そう、彼女は痛感していた。


今のままでは、ギエルには届かない。

ギエル四天王でさえ、まだ"本気"を出していなかったのだ。

真の戦いは、これからだというのに。



そのとき、アリスたちの前に、月の女神セレネが現れる。


ディネ「何していたのよ。あなたも戦いなさいよ。」


セレネ「私や残りの精霊では、ギエル四天王に、あっという間に抹殺されてしまうでしょう。」


彼女は毅然と言った。


セレネ「アリスにお伝えしにきました。 "精霊の神域"が、目を覚ました。」


アリスの目が大きく見開かれる。


アリス「精霊の神域……?」


セレネは頷いた。


セレネ「そこには、精霊たちの"真なる核"が眠っています。

 もしそれを手に入れられれば、あなたたちは、今以上の"進化"を遂げることができるはずです。」


アリス「本当に――」


セレネ「そこに至るには、あなたたち自身が"己の限界"を超えなければなりません。

 それは、ただの訓練や修行ではなく、本当の意味で、自分を試される試練です。

 ……それでも、行く覚悟はありますか?」



アリス「――行くでしょ。」


サラ、ディネ、ノームも、無言で頷く。


誰も、ためらう者はいなかった。

今この瞬間、全員の心は一つだった。



そして、アリスたちは、

**精霊の神域アーク・エレメンタル**へと向かった。


そこは――

普通の人間は決して踏み入ることができない、

世界の"核"に近い、異次元のような場所だった。


時間も空間も歪み、

精霊たちの原初の力が吹き荒れる領域。


入った瞬間、

身体が重く、意識が引き裂かれるような感覚に襲われる。


アリス「ぐっ……これが、神域……っ!」


しかし、ここで倒れるわけにはいかない。

アリスたちは、必死に前へと進んだ。



そこに、彼らを待ち受けていたのは――

己自身。


そう、真なる神域の試練とは、外敵との戦いではない。


「自分自身」との戦いだった。



アリスの前に現れたのは、かつての弱かった自分。


臆病で、迷い、誰かに守られることしかできなかった、あの頃の自分。


サラの前には、激情に飲まれ、無力だった自分。


ディネの前には、孤独と不安に押しつぶされそうだった自分。


ノームの前には、臆病で、何もできなかった自分。


――影たちが、口々に囁く。


サラの影「お前にできるはずがない。」

ディネの影「お前は弱い。」

ノームの影「何も変わっていない。」


心をえぐる声。

魂を削る問いかけ。


だが――アリスたちは、立ち上がった。


それぞれが、叫んだ。


サラ「そんな私に、負けない!!」


ディネ「私は、前に進む!!」


ノーム「私は――変わります!!」


自らの影を超えたとき、

精霊の神域は祝福した。



アリスの剣が、眩い光に包まれる。

サラの火が、蒼き焔へと進化する。

ディネの水が、命を紡ぐ聖なる水流へと変わる。

ノームの大地が、創造を超えた「世界樹の力」を得る。


全員が――


「真なる覚醒」を遂げた。



そして、アリスは静かに呟いた。


アリス「待ってろよ、ギエル。今度こそ――必ず、お前を倒す。」



ギエル軍が本格的侵攻を始めた。

夜明けとともに、世界が震えた瞬間であった。


北の大地に、轟音が鳴り響く。

大地を割り、空を裂く――ギエル軍の本格的な侵攻が、ついに始まったのである。


無数のギエル兵たちが、北の魔王領の各地を襲撃し始める。

ただの兵士ではない。

一人一人が、常人の何倍もの魔力を持つ、"超兵"たちだった。


北の魔王軍は、圧倒的な数と力に押され、次々と城砦を落とされていく。

地上は、まさに戦火の海と化していた。



北の魔王領、最後の砦。

そこに集まった北の魔王軍の残存兵たちは、絶望の淵にいた。


北の魔王軍の残存兵A「もう、これまでか……」


北の魔王軍の残存兵B「ギエル軍には、勝てない……」


誰もがそう思ったその瞬間。


――ザァァッ!


突風と共に、白銀の閃光が降り立つ。


アリス「諦めるのは、まだ早い。」


そう言って現れたのは、

**"聖剣士アリス"**だった。


その背後には、

燃えるような蒼き焔を纏うサラ、

命の輝きを宿した清水を操るディネ、

そして世界樹のオーラを纏ったノーム。


誰もが、以前とは比べ物にならないほどの気配を放っていた。


アリスたちが精霊の神域から帰還したのである。



ギエル軍もまた、ただならぬ気配に気付いていた。


四天王の一人、漆黒の竜騎士ザルバートが、

前線でアリスたちを迎え撃つ。


ザルバート「おもしれぇ……!どこまでやれるか、試してやる!!」


彼の竜槍が、大地を裂きながら突き進む!


だが――


アリス「遅い。」


アリスの聖剣が、

まるで空間ごと切り裂くように、竜槍を弾き飛ばした。


ザルバートは目を見開く。


ザルバート「な、に……?」


続けざまに、サラの蒼炎が彼を包む。

これまで無敵を誇ったザルバートの黒竜の鎧が、みるみるうちに焼き焦がされていく。


ザルバート「ぎぃやあああああっ!!!」


ザルバート、戦闘不能――!!



それを合図に、アリスたちは怒涛の進軍を開始した。


ディネの水流が戦場を洗い流し、傷ついた兵士たちを癒し、敵軍を押し流す。

ノームの大地の力が、鉄壁の防壁を築き、ギエル軍の猛攻を封じる。


アリスの剣はまるで、戦場を照らす光そのものだった。



――だが、その光を見つめる者がいた。


ギエル。


彼は高台から、無表情で戦場を見下ろしていた。


その隣には、ギエルの側近たち、ギエル新四天王。

(ザルバートが倒れた今、残る三人が控えている)


ギエルは、淡々と呟いた。


ギエル「なるほど……覚醒したか。」


そして、右手をゆっくりと掲げた。


ギエル「ならば、こちらも"本気"を出すしかないな。」



大地が震え、空が裂ける。


ギエルの周囲に、異様な黒き魔力が集まっていく。

それは、まるで世界そのものを蝕む呪いのようだった。


その瞬間――

ギエルの姿が、変わる。


人間離れした、神にも似た存在へ。


漆黒の翼を持ち、

黄金の魔眼がすべてを睥睨し、

背後には、無数の虚無の剣が浮かぶ。


ギエル、本格覚醒。


ギエル「来い、北の魔王。

 貴様を超えた先に、俺の未来がある。」


低く、静かな声。

しかしその言葉には、絶対の自信と破壊の意志が宿っていた。



戦場の空気が、一変する。


アリスは剣を構え、精霊たちも臨戦態勢に入った。

これまでとは次元の違う敵。

だが、逃げる理由など、どこにもない。


アリス「ギエル……!」


アリスが静かに名を呼ぶ。


ギエルもまた、剣を一閃。


ギエル「行くぞ、北の魔王!!」


そして、再び史上最大の戦いの幕が上がる!!


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