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174 西の魔王編 part5

ノームは、大地神殿グラン・テルスに向かっていた。

遥か東方、荒れた砂漠を越えた先に、

荘厳な石造りの遺跡がそびえていた。


それが、失われた古代文明の痕跡――

《グラン・テルス》、大地神殿。


この神殿には、大地の精霊たちの叡智と力が封じられており、

真に「大地を理解する者」のみが、その奥に至ることを許されるという。



ノームは、静かに神殿の前に立った。

風が吹き、彼のローブを揺らす。


目を閉じ、彼は呟いた。


ノーム「……大地の声を、聞かせて。」


その瞬間、神殿の扉が、重々しく開いた。

大地の震える音とともに、奥深くへと続く暗黒の回廊が現れた。



神殿内部は、ただの体力だけでは進めない。


天井から落ちる石柱、

床に仕掛けられた無数の罠、

知識と直感を問う謎解きの数々。


ノームは、冷静に周囲を分析し、

時に身軽に、時に強靭にそれらを突破していった。


ノーム「焦るな……急がば回れ、ですから。」


鋭い知恵と、少し鍛えられた肉体。

彼は、土の精霊らしく、一歩一歩着実に前へ進んだ。



だが、最深部で、彼を待っていたのは――

巨大な石の巨人テラ・ゴーレム


それはただの魔物ではない。

過去にここに挑み、敗れ、砕かれた"挑戦者たちの魂"が宿った存在だった。


テラ・ゴーレム「進む者よ、問う。」


テラ・ゴーレムの声は、地鳴りのようだった。


テラ・ゴーレム「力か、知恵か。どちらかを捨て、どちらかを選べ。」


ノームは、すぐに答えた。


ノーム「捨てない。」


テラ・ゴーレムが目を見開く。


ノーム「知恵なき力はただの破壊。

 力なき知恵はただの机上の空論。

 オレは――両方を手に入れる。」


宣言と共に、ノームは駆けた!



ゴーレムの拳が振り下ろされる。

大地を割る衝撃。


ノームはそれを、ぎりぎりで読み切り、避けた。


そして、すぐさまカウンター。

拳に、大地精霊の力を込めて打ち込む!


ノーム「グラウンド・インパクトッ!!」


ゴーレムの体が軋む。

しかし、倒れない。


次々と繰り出される超重量攻撃。

一撃でも食らえば、即死。


ノームは知恵を働かせた。

地形を利用し、ゴーレムの足元を崩し、バランスを奪い、

一点突破で急所に集中攻撃を仕掛ける。


そして――


ノーム「これで、終わりだッ!!!」


全精霊力を込めた渾身の一撃。

大地の波動を拳に纏わせ、

一直線にゴーレムの心核を砕いた。



ゴゴゴゴゴゴ……


ゴーレムは、崩れ落ちた。


その中から、

美しく光る土の結晶アース・コアが現れた。


ノームは、そっとそれに触れた。


――大地の声が聞こえる。


大地の声「賢き者よ……力を恐れず、知を奢らず、

 汝に"創造の力"を授けん。」


新たに得た力。


創地術クリエイト・ジオ》。


それは、あらゆる地形を自在に作り変え、

攻撃にも防御にも、奇策にも使える、究極の大地魔法。


ノームの目に、確かな光が宿った。


ノーム「これで……私も、アリスたちの力になれますね。」


重く、確かに大地を踏みしめ、

ノームもまた覚醒を遂げ、仲間たちのもとへ帰還するのだった。



ギエル軍四天王は、すでに侵攻を開始していた。

アリスたちは、休む間もなく、ゲルデヘルム魔王国の西側、イングラシル共和国との国境付近に集結していた。



空を覆う黒い雲。

遠く地平線には、まるで軍隊のように押し寄せる黒影。


――ギエル軍、四天王。


彼らはギエルの命を受け、

北の魔王領へ侵攻を開始したのだ。

その途中で、アリスたちを"最初の障害"として排除すべく、進軍してきたのである。



アリスたちの前に、

圧倒的な存在感を持つ四人が立ちはだかった。


✴ギエル四天王

第一軍団長《蒼雷のバルム》

(蒼い鎧を纏い、雷を自在に操る戦士。スピードと破壊力を兼ね備える。)


第二軍団長《獄炎のマリアス》

(黒炎を操る女魔導士。通常の炎ではなく、魂を焼き尽くす"業火"を操る。)


第三軍団長《深淵のヴァルツ》

(闇と毒を操る暗殺者。音もなく敵を仕留める冷酷な剣士。)


第四軍団長《巨岩のドランガ》

(大地を操る巨躯の男。圧倒的な防御力と破壊力を持つ。)


サラ「……っ、なんて圧だ!」


ディネ「これが……ギエル軍……!」


ノーム「四人とも、並みの魔王クラスだ。油断したら即死だぞ。」


アリス「でも、負けられない。私たちが、ここで終わらせないと世界が滅びる。」


アリスの言葉に、皆が頷いた。



そして、戦いは始まった。


第一次衝突! 四天王VSアリスたちの戦いが始まった。


バルムが先陣を切った。


バルム「雷閃砲ッ!!」


蒼い雷光が、空気を裂いてアリスたちに襲いかかる!

即座にディネが聖水の壁を展開!

しかし、バルムの雷は水をも穿ち、ディネの肩をかすめる。


ディネ「くっ……強いっ!!」


サラ「そんなにビリビリしたいなら、こっちから熱くしてあげる!!」


――《火炎砲ブレイズキャノン》!!


サラの業火が、バルムの雷を押し返し、空中で爆発する!!



だが、すかさず、マリアスが黒炎を纏い現れた。


マリアス「甘い。……焼き尽くしてやる。」


黒炎は、通常の火や水では防げない。

一気に空間を焼き払い、アリスたちを包囲する!


ノームが地面に拳を叩きつけた。

ノーム「《創地術:土壁陣》ッ!!」


大地が盛り上がり、黒炎を防ぐための巨大な防壁を作り出す。

しかし、黒炎は土すらも蝕み始めた。


アリス「マズいぞ……あの女……!」


アリスは聖剣を構え、飛び出す。


アリス「突破口を作る!! みんな、援護して!!」


聖剣に、精霊たちの力を宿し――


《精霊剣・聖なる煌刃セイクリッド・ブレード》!!


一閃。

空間すら斬り裂く白銀の刃が、黒炎の壁に穴を穿つ!



しかし、そこへ。

今度は、音もなく近づいた影――ヴァルツがアリスに奇襲を仕掛けた。


アリス「チィッ……!」


アリスが振り向いた瞬間、

ヴァルツの毒を纏った黒剣が、彼女を狙ってきた――!


ディネ「アリスッ!! 今っ!!」


ディネの聖水魔法が、ヴァルツの動きを一瞬止める。

アリスはその隙に回避、ヴァルツと激しく剣を交える!


一方、巨岩のドランガは、

重力魔法と大地操作で地面を粉砕しながら前進してきた。


ノーム「なんですか、あいつ、動く災害ですね……!」


ノームが冷や汗を流しつつも、迎撃態勢に入る。



――戦いは、完全なる混戦へ突入する。


アリスたちは連携を取りながら、

ギエル四天王に互角以上に食らいつく。


だが、四天王たちは本気ではなかった。

彼らの目的はただひとつ――


バルム「我らの力を見せることだ。お前たちにはまだ、"絶望"を味わってもらう。」


そう言い残し、バルムたちは撤退を開始する。


彼らは"まだ本気で倒す気"ではなかったようだ。

真の侵攻は――「ギエル」そのものが、前線に出るときに始まるときである。



戦いの余韻の中で、

アリスたちは、深い息を吐いていた。


アリス「……強すぎる。でも、絶対負けられない。ギエルを――止めるために。」


そして、静かに、夜が明ける。


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