168 ロッフェル島編 part1
ロッフェル島にたどり着いた一行を待ち受けていたのは、島の住人に扮した「闇の賢者」の手下たちだった。
村人に見える彼らは笑顔を浮かべながら近づいてきたが、その目には不気味な光が宿っていた。
ディネ「気をつけて、なんか怪しいから。彼らの中に闇の魔力を感じるような。」
案の定、村人たちは正体を現し、アリスたちを囲むように攻撃を仕掛けてきた。
ディネが冷静に呪文を唱えて敵の動きを封じ、ノームが地面から土の槍を召喚して対抗する。
アリスは精霊たちの力を剣に込め、一撃で複数の敵を撃破していく。
アリス「闇の賢者に近づくたびに、敵が強くなるわね。」
サラ「まあ、それが楽しいんだけどね!」
サラが笑顔を見せると、ディネもつい笑みを浮かべた。
闇の賢者が待ち受ける塔は、ロッフェル島の中心にそびえ立っていた。
その周囲には不気味な紫色の光が渦巻いており、まるでアリスたちを拒絶しているようだった。
アリスは塔の中へと足を踏み入れた。
塔の扉を開けると、内部は異様な光に包まれていた。
紫と黒の魔力が渦巻き、壁には不気味な紋様が刻まれている。
空気は重く、まるで闇そのものが意識を持ち、アリスたちを押し潰そうとしているかのようだった。
サラ「うわっ、なんか嫌な感じ!」
ディネ「闇の魔力が濃すぎるわね。普通の人間なら近づいただけで気を失うほどよ。」
ノーム「慎重に行こう。闇の賢者は罠を仕掛けているはずだ。」
アリスは聖剣を握りしめ、精霊たちの力を剣に込めながら進んだ。
塔の奥へ進むと、目の前に巨大な鏡が現れた。
鏡の中にはアリスたちの姿が映っている——しかし、それは彼女たちの“闇の分身”だった。
サラ「おもしろいじゃない。私の闇バージョン?どれだけ強いか試してみようじゃない!」
サラが炎を纏い、鏡の中の自分へ向かって突撃する。
しかし、その瞬間、鏡の分身もまったく同じ動きで炎を繰り出し、サラを吹き飛ばした。
サラ「なに!?私の動きを完璧にコピーしてる!?」
ディネ「単純に戦っても勝てないわよ……。」
アリス「どうすればいい?」
アリスが問うと、ノームが鏡をじっと見つめた。
ノーム「彼らは『自分のコピー』だから、意識して違う行動を取ればいい。」
アリス「なるほど!やってみよう!」
アリスは聖剣を振るうフリをして、逆方向に回転斬りを放った。
すると、鏡の分身は予測を誤り、動きが崩れる。
そこでディネが水の魔法で鏡の表面を覆い、サラが一気に炎で焼き尽くす。ノームがとどめの土槍を突き刺し、鏡は粉々に砕けた。
ディネ「ふぅ、なかなか手強かったわね。」
サラ「まあまあよね!」
次の部屋には、一人の男が立っていた。
黒い鎧に身を包み、長剣を携えた闇の剣士——その名はグレイヴ。
グレイブ「よくぞここまで来たな、冒険者アリス。」
低く響く声が、塔全体にこだまする。
彼の足元には黒い霧が渦巻き、剣の先からは禍々しい魔力が漏れ出していた。
アリス「お前が闇の賢者か?」
グレイブ「違う。我は闇の賢者に仕える騎士。お前の剣の力、試させてもらおう。」
次の瞬間、グレイヴが猛スピードで襲いかかる。
アリスは咄嗟に聖剣を構え、彼の一撃を受け止めたが——その衝撃は想像を超えていた。
アリス「くっ……強い!」
アリスは深く息を吸い、剣に精霊の力を込める。
アリス「なら、全力で行くわよ!」
剣を振るうたびに、光と闇の火花が散る。
グレイヴは一切表情を変えず、冷静にアリスの攻撃を捌く。しかし、彼の剣にはどこか迷いが感じられた。
アリス「あなた、本当に闇の賢者に仕えたいの?」
アリスの問いかけに、グレイヴの動きが一瞬だけ鈍る。
グレイブ「……黙れ!」
だが、その迷いは確かだった。
アリスはその隙を突き、聖剣を渾身の力で振り下ろした。
アリス「聖なる剣よ、彼の迷いを断ち切れ!」
光が炸裂し、グレイヴの剣が弾き飛ばされる。
彼は片膝をつき、息を荒げながらアリスを見つめた。
グレイブ「お前の力、そして心の強さ……見誤っていた。」
アリス「なら、闇の賢者のもとを去る?」
グレイヴは苦笑しながら立ち上がる。
グレイブ「俺の主はすでに狂っている。お前に止められるなら、やってみろ。」
彼は剣を収め、闇の障壁を解いた。
サラ「アリス、やったじゃない!」
サラが駆け寄る。
ディネ「……でも、これが終わりじゃない。」
ディネが天井を見上げた。そこには、不気味に光る黒い魔方陣が刻まれていた。
塔の最上階——そこには、漆黒のローブを纏った男が玉座に座っていた。
その顔は影に包まれ、無数の魔力が渦巻いている。
ゼオルド「よくぞここまで来た、聖剣士アリス。」
低く響く声に、アリスは聖剣を構えた。
アリス「あなたが闇の賢者なのね。」
ゼオルド「そうだ。我が名はゼオルド。光と闇が交わる時、新たな世界が生まれる。」
彼は手を掲げると、塔全体が震え、黒い魔力が奔流となって溢れ出した。
アリス「ここで終わらせるわよ、ゼオルド!」
塔の最上階にそびえ立つ漆黒の玉座。
その中央で、闇の賢者ゼオルドが立ち上がる。
彼のローブは闇そのもののように揺らぎ、まるで異次元の存在のようだった。
ゼオルド「ついにここまで来たか、聖剣士アリス。」
ゼオルドの声が響くと同時に、塔全体が震え、黒い魔法陣が床に広がっていく。
そこから湧き出る邪悪な魔力は、まるで世界を呑み込もうとしているかのようだった。
アリスは聖剣を構え、背後には水の大精霊ディネ、火の大精霊サラ、土の大精霊ノームが並ぶ。
アリス「あなたの野望はここで終わらせる!」
ゼオルドは静かに笑った。
ゼオルド「ならば、試してみるがいい。絶望という名の闇をな!」
ゼオルドが杖を振るうと、塔の天井が割れ、星空が見えた……かと思えば、それは歪んだ虚空だった。
空間が裂け、無数の黒い手がゆらめきながら現れる。
ゼオルド「この空間は、私の支配する次元だ。」
ゼオルドが手をかざすと、黒い稲妻がアリスたちに降り注ぐ。
ディネ「やばいわね……あれを喰らったら一発で消し飛ぶわよ!」
ディネが即座に海の障壁を展開し、雷撃を防ぐ。
しかし、闇の魔力が壁を蝕み、すぐに崩れそうになる。
ノーム「これだけの魔力を操るなんて、まるで神の力……!」
ノームが驚きながらも、地面から巨大な石壁を作り出し、さらに防御を固める。
サラ「防いでる場合じゃないわよ!攻撃しなきゃ勝てない!」
サラが怒りの炎をまとい、天井を覆う闇の手に向かって超高温の火柱を放つ。
ドゴォォォォン!!
塔の天井が炎に包まれ、一瞬だけ闇が後退する。しかし、ゼオルドは微動だにせず、むしろ満足そうに微笑んだ。
ゼオルド「ふむ……悪くない。しかし、私を倒せるとでも?」
彼が再び杖を振るうと、闇の手が暴走し、塔全体が崩壊し始める。
ノーム「まずい……ここが崩れたら私たちも——!」
ノームが焦りの声を上げるが、アリスは一歩も退かず、聖剣を高く掲げた。
アリス「——聖剣よ、光をもたらせ!」
剣が眩い光を放つと、その光が精霊たちへと広がる。
サラが聖なる火炎を作り出す。
ディネが純粋な聖水を召喚した。
ノームが巨大な聖なる大地の槍を出現させる。
そして——
アリス「行くわよ!!」
アリスは三人の力を剣に宿し、ゼオルドに向かって全力で斬りかかる!
ゼオルドはすぐさま黒い魔剣を取り出し、アリスの一撃を受け止める。
キィィィィン!!
光と闇の剣がぶつかり合い、強烈なエネルギーが炸裂する。その衝撃で塔の床がひび割れ、周囲の空間が歪む。
ゼオルド「この力……お前はただの人間ではないな。」
ゼオルドの目に、わずかに驚きが宿る。
アリス「私は、この世界を守るために戦う人間だ!」
アリスはさらに剣に力を込め、ゼオルドを押し返す。
しかし、ゼオルドはにやりと笑うと、急に後方へ飛び退いた。
ゼオルド「ならば——お前に絶望を見せてやろう。」
ゼオルドは両手を広げ、塔の最上部にある巨大な魔法陣を起動させた。
ゼオルド「目覚めよ、闇の神ノクトゥス!」
塔全体が黒いエネルギーに包まれ、空がさらに暗くなる。
そして、その中心から、漆黒の巨人が現れた。
ディネ「……まさか、闇の神を召喚したの!?」
ディネが驚愕の声を上げる。
サラ「こりゃあ、大ごとね……!」
サラが拳を握り、炎を燃やす。
ノームは冷静に敵を観察しながら言った。
ノーム「アリス、あれはゼオルドの魔力の源だ。あれを破壊すれば、ゼオルドの力も消える!」
アリスは頷き、聖剣を高く掲げた。
アリス「全員の力を貸して!これが、最後の戦いよ!!」
ゼオルドが笑う。
ゼオルド「ならば、我が神の力でお前たちを葬ろう。」
そして、闇の神が吠える。
世界の命運をかけた、最終決戦が幕を開ける——!!