166 サドバイン王国編 part7
魔王の声は雷鳴のように響き、闇の炎が彼の周りを舞っていた。
アズラノクス「私の名はアズラノクス、黒炎の魔王。
お前たちが挑んだ試練は、最も恐ろしい試練だ。私を倒すことができた者には、全ての力を与えよう。」
黒炎が渦を巻き、魔王の姿が歪んでいく中、彼の体が恐ろしいほどに巨大化していった。
周囲の空間がひずみ、地面が割れ、裂け目から火柱が立ち上がる。
アリスと魔王の戦いは、壮絶を極めた。
黒炎の魔王は、周囲の空間を操作し、炎の力を駆使して攻撃を繰り出してきた。
その炎はただの火ではなく、魔力で強化された闇の力が宿っており、アリスの剣さえも焼き尽くしそうな威力を持っていた。
アリスは聖剣を一閃させる。
しかし、その刃は黒炎に触れるとすぐに煙となって消えてしまう。
アリス「このままでは倒せない……!」
アリスは深く息を吸い、聖剣に込められた力を集中させた。
その瞬間、聖剣に異変が起きた。
剣の刃が輝き、聖なるエネルギーが爆発的に放たれた。
剣の中に新たな力が宿り、アリスの手の中で聖剣が進化を遂げたのだ。
それは、今までの聖剣とは明らかに異なり、光と闇を融合させた力を持つ「聖光の剣」となった。
アリスはその剣を高く掲げると、強烈な光が魔王を照らし始めた。
剣の光は闇を切り裂き、魔王の黒炎を浄化し、圧倒的な力で押し返していった。
アリスの進化した聖剣が放つ一撃一撃は、もはや単なる物理的な攻撃ではなかった。
光と聖なる魔法が融合し、アリスの意志と共鳴することで、黒炎の魔王に致命的なダメージを与えていく。
アズラノクス「ぬぅ……!」
魔王アズラノクスは呻き、黒炎を爆発的に放出して反撃しようとするが、アリスの力はそれをものともせず、さらに剣を振り下ろした。
アリス「これで……トドメだ!」
アリスは全ての力を聖剣に込め、最後の一撃を放った。
聖光の剣が魔王アズラノクスを貫き、その身体は闇の炎と共に消え去った。
神殿の空間もまた、その力によって浄化され、暗黒の力は完全に消え去った。
戦いが終わった後、神殿内は静寂に包まれ、アリスは聖剣を握りしめたまま、しばらくその場に立ち尽くしていた。
剣から放たれる光は、まるで彼女の成長を祝うように輝いていた。
ディネ「アリス……やるじゃん。まあ、私の主人ならこのくらい当たり前だけど。」
ディネが微笑みながら近づいてきた。
サラ「まぁ、私が手伝ってやったおかげだけどね。!」
アリスは微笑みながら聖剣を見つめ、その力を胸に刻んだ。
闇神殿の空間が浄化されると、神殿の奥深くから一筋の光が差し込んだ。
今まで暗闇に包まれていた場所が、聖なる光によって満たされ、辺りが静けさに包まれた。
アリスはその光を見上げ、深呼吸をした。
アリス「これで全て終わった……」
アリスは、心からの安堵の息を吐いた。
しかし、その気持ちもつかの間、ディネの声が耳に届いた。
ディネ「アリス、何か…感じる?」
アリスは眉をひそめ、周囲を見渡した。
その瞬間、聖剣が震えるように反応した。
剣の刃が微細な光を放ちながら、アリスの手のひらに強く引き寄せられる。
彼女はその力に身を任せ、目を凝らしてその先を見つめた。
アリス「何かが……」
アリスはつぶやくと、突然、地面が震え始めた。
まるで神殿そのものが生きているかのように、空間が歪み、ひび割れが起きた。
その時、神殿の中心から巨大な影が立ち上がった。
目の前に現れたのは、今までに見たこともない存在だった。
アリスの直感がそれを「神」と呼んだ。
その姿は人の形をしていたが、肩からは黒い翼が生え、眼は二つの赤い光を放っていた。
まるでその存在が全ての闇の力を象徴しているかのように、圧倒的な威圧感を放っていた。
アスラフェノックス「私は……アスラフェノックス。貴様たちが挑んできた闇の根源だ。」
その声は空間を震わせるほどの力を持ち、アリスたちはその場で息を呑んだ。
アズラフェノックスは、過去に存在したどんな神や魔物とも異なる。
闇の力が集まり、形となった存在。
彼こそが「虚無の核」を生み出した張本人だった。
アスラフェノックス「貴様たちが闇を滅ぼしたと思うな。お前たちが消し去ったのは、ほんの一部に過ぎない。私の力が復活した今、世界は新たな秩序へと変わる。」
アズラフェノックスはそう告げると、周囲の空間がさらに歪み、辺りを巻き込んで黒い炎が燃え上がった。
アリスはその言葉に驚きと共に深い警戒を抱いた。
彼が言う「新たな秩序」とは、どういう意味なのか。
それは、まさにアスラフェノックスの支配下で世界を変えようとする意図が込められていることを示している。
アリス「それなら、私がその新しい世界を許さない。」
アリスは強く剣を握り締め、目を鋭く光らせた。
聖剣が再び輝きを放ち、彼女の周囲に光の力が満ちていく。
アリスはディネ、サラ、ノームに目配せをし、全員が準備を整えた。
アリス「みんな、力を貸して!」
アリスが力強く叫ぶと、三大精霊がその力を共鳴させ、聖なる魔法が一つになってアリスの聖剣に宿る。
アリスが一気に駆け出し、聖剣を振り下ろした瞬間、神殿が再び震え、黒い炎と光の衝突が巻き起こる。
アズラフェノックスはそれを受け、怒りの咆哮を上げた。
アスラフェノックス「愚かな者よ!私を倒すことなどできぬ!」
その声とともに、彼の体から黒い炎の波動が放たれ、アリスたちの前に立ちはだかる。
しかし、アリスはひるまず、聖剣を強く振りかざし、全身の力を込めてその波動を切り裂いた。
その瞬間、聖剣の力が何倍にも膨れ上がり、アリスはその新たな力でアズラフェノックスを捉えた。
剣の先から放たれる光の閃光は、闇を超えて真っ直ぐにアズラフェノックスを貫いた。
アリス「これが……私の……すべてだ!」
アリスの最後の一撃がアズラ=フェノックスを貫き、闇の神は崩れ落ちる。
その衝撃で神殿が崩壊し、周囲の空間が崩れ去る中で、アリスは立ち続けた。
闇の神アズラフェノックスの力が消え去り、神殿の中に静けさが戻った。
アリスはその場に膝をつき、汗と傷で疲れ切っていた。
しかし、彼女の心はすでに次の目標を見据えていた。
アリス「終わった……」
ディネ「まあ、よくやったね、アリス。」
サラも「なかなかやるじゃねぇか。」
だが突然、神殿の崩壊が始まり、アリスは周囲の震動と崩れ落ちる瓦礫の中を駆け抜けた。
ディネが水の魔法で瓦礫を押し流し、ノームが地を動かして崩落を抑える。
一方で、サラが炎の力で前方を明るく照らし、脱出路を見つけ出していく。
アリスは聖剣を構え、闇の残滓を切り裂きながら走った。
ディネ「急いで!神殿そのものが消滅しようとしている!」
背後では、アズラフェノックスの消滅によって生まれた虚無の力が暴走を始めていた。
それは空間そのものを飲み込むように広がり、神殿の一部を次々と消していく。
サラ「やべー、飲み込まれるぞ!」
サラの声は崩れる石材の轟音にかき消されそうだった。
アリスは咄嗟に聖剣を掲げた。
アリス「聖剣よ導いて!」
剣から放たれる光が出口への道を照らし出した。