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163 サドバイン王国編 part4

氷の狼は、単なる魔獣ではなかった。


その身体は鋭い氷の結晶で覆われており、動くたびに冷気が周囲を凍りつかせた。


その瞳には知性が宿り、アリスの動きをじっと観察しているようだった。


アリス「この狼の意図を見極めないと!」


狼は低く唸りながら、周囲に冷気の障壁を作り出した。


サラが早速火の魔法を放つが、炎は冷気に触れるとすぐにかき消されてしまう。


サラ「あらら……!」


ディネ「狼が私たちを試しているんだわ。」


その言葉にアリスは気づいた。


狼は明らかに攻撃を急いでいない。


むしろ、彼らの反応を確かめているようだった。


ノーム「この試練は、氷の巨神がどれだけ信頼に値するかを見極めるものみたいだね。」


アリスは改めて連携を深めた。


アリスは狼の注意を引きつけ、サラは炎で障壁を少しずつ削り、ディネは氷の特性を利用して冷気を相殺する魔法を展開した。


アリスが聖剣を掲げて狼に向かって突進した。


剣に込められた光が狼の冷気を貫き、その身体を一瞬だけ硬直させた。


その隙にディネとサラが協力して障壁を完全に打ち破り、アリスがとどめの一撃を放った。


氷の狼は大きな咆哮を上げると、その姿を消し、氷の門が静かに開いた。


氷の門の奥から静かな声が響いた。


氷の門「試練の第一段階を乗り越えた者たちよ……次に進むがよい。」


門の向こうには、深い雪に覆われた谷が広がっていた。


冷たい風が吹き荒れる中、遠くに輝く氷の塔が見えた。


それが氷の巨神が眠る場所だと直感的に理解できた。


アリスは吹雪に耐えながら、氷の塔を目指して進んだ。


しかし途中、雪の中から奇妙な人影が現れた。


それは、氷の巨神の守護者とされる「氷の民」だった。


彼らは全身が青白い氷でできており、瞳だけが温かみのある光を放っていた。


氷の民の守護者「旅人よ、この地に何を求める?」


アリス「私たちは風の巨神の暴走を鎮めるため、氷の巨神の助けを求めています。」


守護者はしばらく黙り込んだ後、答えた。


守護者「ならば、塔へ進むがいい。しかし、巨神の目覚めには代償が伴う。覚悟があるなら進め。」


氷の塔にたどり着いたアリスは、そこに刻まれた古いルーン文字を読み解きながら、巨神を目覚めさせるための儀式を進めた。


しかし儀式が始まると同時に、塔全体が振動し、眠りを妨げる何者かの気配が現れた。


ディネ「どうやら、目覚めを阻止しようとする闇の存在がいるようね。」


そして塔の影から、闇の刺客が姿を現した――その正体は、闇の巨神に仕える「影の使徒」だった。


アリス「来た来た!」


塔の中央で儀式を進めるアリスたちの前に現れた影の使徒。


その姿は霧のように実体が曖昧で、漆黒のローブをまとい、禍々しい気配を漂わせていた。


その目は虚無を映し出すように空洞であり、視線を交わしただけで凍りつきそうな恐怖を感じさせる。


影の使徒「氷の巨神を目覚めさせるなど許されぬ!」


影の使徒が冷たく響く声で叫ぶと、周囲に暗い霧が立ち込めた。


その霧が触れた塔の壁が瞬く間に腐食し、儀式に使う魔法陣の光が薄れ始めた。


ディネ「このままじゃ儀式が止まるよ!」


アリス「なら、やるしかないな!」


アリス「私がこいつを引き受ける!」


「いや、私も行く!」サラが火の魔法を手に、アリスの隣に並ぶ。「こんな奴、放っておけない!」


アリスが影の使徒に向かって突進すると、使徒はまるで闇そのものが具現化したかのように姿を変え、剣の攻撃を霧のようにすり抜ける。


アリス「くっ、全然手応えがない!」


サラ「ならファイアボール!」


サラが火球を次々に放つが、それも使徒の闇に吸い込まれてしまう。


影の使徒「お前にはこの闇を貫けまい。闇はすべてを飲み込み、滅ぼす。」


影の使徒は嘲笑を浮かべるように言い放つと、巨大な闇の触手を召喚してアリスたちに襲いかかった。


アリスは聖剣で触手を切り裂こうとするが、切ったそばから再生してしまう。


サラも炎の魔法を放つが、触手はびくともしない。


アリス「このままじゃ埒が明かない……!サラ!力を貸して。」


サラ「わかった!」


アリスは聖剣を掲げ、剣にサラの炎を宿すように集中した。


聖剣の刃が炎に包まれ、眩しい光を放ち始める。


それは闇の触手を焼き尽くし、影の使徒が一瞬だけ後退するほどの力だった。


アリス「行くぞ!」


アリスが炎を纏った聖剣を使徒に向かって振り下ろすと、使徒の霧状の体が一瞬にして切り裂かれた。


影の使徒「馬鹿な……この闇を……破れるはずが……!」


使徒が呟きながら消え去ると同時に、周囲の闇も霧散した。


影の使徒を倒したことで、儀式を妨げる障害は取り除かれた。


ディネとノームが力を合わせ、魔法陣を輝かせる。


ディネ「これで目覚めるはず!」


塔全体が震え、天井に描かれた氷の巨神の紋章が輝き出す。


次の瞬間、塔の奥から巨大な氷の巨神が姿を現した。


その身体は純粋な氷でできており、動くたびに雪の結晶が舞い落ちる。


氷の巨神「目覚めさせたのはお前か……何者だ?」


アリス「私は冒険者アリス。この世界を救うため、あなたの助けを求めています。」


巨神はしばらく沈黙した後、ゆっくりと頷いた。


氷の巨神「よかろう。お前の覚悟と力、確かに見せてもらった。私の力を貸そう。」


巨神が力を解放すると、塔全体が輝きに包まれた。


その光は世界中の空に届き、風の巨神の暴走を鎮める鍵となる力がアリスの手に渡った。


氷の巨神から力を授かったアリスは、塔を後にした。


しかし、巨神は最後に意味深な言葉を残した。


氷の巨神「気をつけよ。風の巨神だけが問題ではない。遠い西の地で、新たなる闇が目覚めようとしている……。」


サドバインの地を後にしたアリスは、氷の巨神の言葉に重くのしかかる不安を抱えていた。


氷の巨神の言葉「遠い西の地で、新たなる闇が目覚めようとしている……。」


その言葉は一瞬で消えた脅威の安堵を覆い尽くし、新たな冒険の兆しを告げていた。


船の甲板に立つアリスは、夕日に照らされる海を見つめながらつぶやいた。


アリス「その西の地に行くしかないね。」


サラ「ま、行くけどね。」


ノーム「巨神の言葉には意味があると思う。放っておけば、世界全体が危機に陥るかもしれないもんね。」


アリス「そうだね。」


船がサドバインの港を離れ、静かな夜が訪れた。


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