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162 サドバイン王国編 part3

炎の巨神が立ち上がると、その動きだけで地面が割れ、周囲の砂漠が焼き焦げていった。


炎そのものが形を持ったかのような存在感は、圧倒的だった。


巨神はゆっくりと手をかざすと、空間が歪み、無数の火球がその手の中に浮かび上がった。


炎の巨神「資格を示せ」


アリスは聖剣を構え、仲間たちに視線を送る。


ディネはすでに水の盾を展開しており、サラは火の巨神に対して挑発的な笑みを浮かべていた。


サラ「炎対炎、私が一番役に立つってところを見せてやる!」


サラが火球を片手で受け止めると、逆にそれを巨神へ投げ返した。


だが、その攻撃は巨神の胸に触れた瞬間、煙のようにかき消される。


サラ「あれれ?効かないのか……!」


ノーム「この巨神……体そのものがこの土地のエネルギーと繋がっている。普通に倒そうとしたら無限に再生する!」


アリス「じゃあ、どうする?」


ノーム「この砂漠のエネルギー源を断ち切る必要がある!あの炎の柱がその鍵だ!」


巨神の背後にそびえる炎の柱――それがこの存在の力の源であるとノームは見抜いていた。


しかし、柱に近づくには巨神を正面で引きつけなければならない。


アリス「私が引きつける!」


彼女は巨神の攻撃をかわしながら正面から挑んだ。


ノームはディネの水のバリアを受けながら、砂の中を掘り進む。


柱の基部に到達したノームは、その構造が古代のルーン文字で覆われていることに気づいた。


ノーム「この柱には何か封印が施されているみたい……!」


柱に触れた瞬間、ノームの意識の中にビジョンが流れ込む。


それはこの砂漠がかつて緑豊かな大地だった頃の記憶と、巨神がその土地を守るために作られた存在であることを示していた。


ノーム「巨神は敵じゃない。彼はこの地の守護者だ!」


ノームの声がアリスたちに届いた。


巨神が真に求めているのは、自らを倒す力ではなく、砂漠を救う方法を見つける知恵だったのだ。


ノーム「柱を壊すのではなく、封印を解く必要がある!」


アリスは攻撃を止め、ノームが柱のルーン文字を慎重に解読し始めた。


ノーム「解放せよ、忘れられし緑の心を――」


ノームがその言葉を唱えると、柱が輝き始め、巨神の目が穏やかに光りを帯びた。


柱が崩れるのではなく、エネルギーが空へ放出されると、炎の巨神の体が徐々に縮んでいき、最後には小さな光の玉となった。


それはアリスの手のひらに乗り、静かに語りかけた。


炎の巨神「感謝する……新たな守護者よ。この地は再び命を取り戻すだろう。」


その瞬間、砂漠に奇跡が起きた。


赤茶けた大地が緑の草原に変わり、枯れた木々が再び芽吹き始めた。


泉が湧き出し、かつての豊かな大地が蘇りつつあった。


アリスは守護者となった証として、小さな光の玉――「再生の灯火」を手に入れた。


それが次なる冒険への鍵となることを、彼女たちはまだ知らなかった。


船を待つ港に戻る途中、遠くの空に新たな不穏な雲が広がっていくのが見えた。


サドバイン砂漠を緑豊かな大地に変えた奇跡の光景を背に、アリスたちは近くの村へ戻った。


村人たちは歓喜し、アリスたちを救世主として迎え入れた。


賑やかな祝宴が催される中、アリスは胸の奥に奇妙な不安を覚えていた。


遠くの空に広がる黒い雲――それはただの嵐ではない、何か別の、より大きな力を秘めているように感じたからだ。


宴が終わるころ、村の長老がそっとアリスに近づいた。


彼は震える手で一冊の古い書物を取り出し、アリスに差し出した。


村の長老「この地に伝わる古文書です。貴方が解放した巨神は、五つの守護者の一つだと言われています。他の四つもいずれ解放されるべき時が来るでしょう。しかし、それには大きな危険が伴います。」


アリスはその言葉に耳を傾け、書物を慎重に開いた。


そこには「五つの守護者」と題されたページがあり、それぞれが異なる場所に封印された守護者について記されていた。


長老「この守護者たちの力が揃えば、世界を滅ぼすほどの力にもなると恐れられてきました。ですが、本来はそれぞれが大地と調和を保つ存在なのです。」


長老の話を聞いている最中、外から叫び声が聞こえてきた。


アリスたちが駆けつけると、村の子供たちが空を指さして震えていた。


見上げると、黒雲が異様な速さで迫ってきており、ただの嵐ではないことが明らかだった。


ディネ「この風……自然のものじゃない!」


その瞬間、雲の中から巨大な竜巻がいくつも地上に降り立ち、村の家々を吹き飛ばし始めた。


サラが急いで防御の炎を放つが、竜巻はそれをものともせず、まるで意思を持っているかのように彼女たちに向かって突進してきた。


ノーム「アリス!この嵐、風の巨神の力が暴走しているよ!」


アリス「巨神が……目覚めかけているのね。」


長老の助言により、風の巨神を鎮める鍵は、凍れる谷に眠る氷の巨神の力を借りることであると分かる。


氷と風の巨神は対となる存在であり、片方が暴走した場合、もう片方を解放しなければならない。それが古代の掟だった。


アリスたちは長老に別れを告げ、旅の準備を整えた。


サドバイン砂漠を越え、北に広がる雪と氷の世界、凍れる谷へ向かう。


その途中、


ディネ「どうしてあんた、あんなにむちゃなのよ!」


サラ「はぁ?私の炎がなきゃさっきの嵐で危なかったでしょ!」


ノーム「それよりも、この先どうやって氷の巨神を起こすか考えないと。」


ディネとサラがノームを睨んだ。


ノーム「コワ」


北の地に向かう道中、気温は急激に下がり、雪が視界を遮るほどの吹雪が彼らを迎えた。


谷の入口には、氷で作られた巨大な門が立ちはだかっていた。


その表面には、複雑な模様のルーンが刻まれており、アリスが手を触れると冷たい輝きが広がった。


アリス「ここからが本番みたいね……」


ノームが再び地面に手を触れ、言った。


ノーム「門を開くには、氷の巨神の心に触れる覚悟が必要だ。だけど……その覚悟を試すものが待っている。」


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、門の模様が動き出し、中から氷でできた狼が現れた。


アリスが構えた瞬間、氷の狼が鋭い爪を振り上げて襲いかかってきた。


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