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160 サドバイン王国編 part1

アリスは、青く広がる海原を見つめながら甲板に立っていた。


ディネ「ねぇ、アリス。サドバイン王国の霧って、ただの自然現象じゃないらしいわ。」


サラ「嫌な予感、霧なんて瞬殺だね!」


ノーム「サドバインの霧には古代の魔力が宿っている。もしその霧が何者かに制御されたものだとしたら、それを解く必要があります。」


アリス「あなたたちはやる気満々だね。」


アリスは微笑みながら精霊たちのやり取りを眺めていた。


ディネたちはいつも賑やかで、どんな困難な状況でもアリスに笑顔をもたらしてくれる。


夕暮れ時、船は穏やかな波間を進んでいた。


しかし突如として、空気が変わった。


遠くから不気味な霧が海面を這うように迫ってきたのだ。


その霧はただの水蒸気ではなかった。


冷たさとともに、何か邪悪な気配が混じっている。


アリス「これは、警戒しないとね!」


霧の中から奇妙な影が浮かび上がった。


それは霧そのものが形を成した魔物だった。


触手のように伸びる霧の塊が船を包み込み、乗員たちは悲鳴を上げて逃げ惑う。


アリス「私に任せてください!」


アリスが、船の甲板に立つと、聖剣を高く掲げた。


アリス「サラ。お願い。」


赤々とした炎が聖剣の周囲に巻き上がり、霧の魔物に向かって放たれる。


炎は霧を焼き払い、一時的にその動きを止めた。


しかし、霧の魔物は消えるどころか再び形を取り戻す。


それどころか、霧がさらに濃くなり、彼らの視界を完全に奪った。


ディネ「アリス、私の力を使いなさい!」


アリス「わかった。」


アリスの聖剣に水の精霊の力が宿った。


アリスは聖剣を掲げ、剣先から迸る水の光が霧を裂いた。


その一撃で霧の魔物は完全に消滅したかのように見えたが、ディネは眉をひそめている。


ディネ「おかしいわね。これで終わりじゃないわ。この霧、サドバインそのものと繋がっているのかも。」


船が港に着く頃には、霧は一旦晴れていた。


しかし、サドバインの街並みはどこか静かすぎた。


住民たちは窓を閉ざし、外に出る者はほとんどいない。


アリスは港町の小さな酒場に入ると、一人の老人が彼らを見つめながら近づいてきた。


老人「お前さん、この島の者じゃないな。何をしに来た?」


アリス「この島で起きている霧の異変を調べに来たんです。」


老人は「そんな無茶な。霧の中に足を踏み入れた者は、誰一人として戻ってきた試しがない。霧には何かがいる。古代からこの島に封じられていた“何か”が……。」


老人の言葉に、アリスは互いに顔を見合わせた。


どうやら、この霧の謎は島に伝わる神話と深く関わっているらしい。


そしてそれが、新たな冒険の幕開けを告げていることを彼らは確信していた。


アリス「さあ行こう。謎を解く旅へ。」


アリスは港町を後にし、霧に包まれた街道を進んだ。


古びた石畳は湿気で滑りやすく、霧が深まるにつれ視界がほとんど利かなくなる。


ディネの力で霧を少しだけ晴らしながら進むが、その静けさが逆に不気味だった。


どこからともなく、耳元でささやくような声が響いてくる。


謎の声「アリス……進むな……戻れ……」


サラ「なんなのよ!こんな薄気味悪い真似、卑怯じゃない!」


ノームが冷静に辺りを観察しながら答える。


ノーム「これはただの霧じゃない。意識を惑わせ、精神を蝕む魔力が含まれている。まるで誰かが誘導しているかのようだ。」


道中、廃墟と化した村にたどり着いた。


建物は崩れ、地面には奇妙な黒い痕が広がっている。


ノームが地面に跪き、その痕跡を調べた。


ノーム「これは……魔力の暴発の痕だね。おそらく強力な儀式が行われた形跡だよ。」


アリスは朽ちた村の中心で、不思議な石碑を見つけた。


その表面には、古代文字で何かが刻まれている。


ディネが石碑を見つめ、口を開いた。


ディネ「これは“封印の碑”。ここにはかつて、強力な存在が封じられていたと記されているわ。」


サラ「封じられていたんだ?それじゃあ、その存在が今解き放たれたってことかもね?」


サラの言葉に全員が黙り込む。


何かが解き放たれ、霧とともにこの地を支配している――その確信が胸に重くのしかかる。


廃墟の村を進むうちに、霧がさらに濃くなり、奇妙な音が耳を刺した。


それは不協和音のような声で、アリスたちの心に直接語りかけてくる。


影の声「お前たちは何を求める……新しい世界の覇者か、それとも滅びの予言者か……」


その瞬間、霧が渦を巻き、巨大な影が姿を現した。


それは人間の形をしているが、全身が霧でできており、その目は無数に存在しているかのようだった。


影の声「私は“深淵の囁き”。この地の古代の主だ。愚かな人間たちが私を封じ、長い時を閉じ込めた。しかし、封印は弱まり、再び世界に君臨する時が来た。」


アリスは聖剣を構え、影の巨大な力に対抗しようとするが、相手の魔力は想像以上だった。


アリスは聖剣を振るうが、霧の本体にダメージを与えることができない。


アリス「これでは勝てないじゃん!どこかに何かヒントはないの!」


ディネが石碑の言葉を思い出す。封印の碑にはこう記されていた。


ディネ「“深淵を滅ぼすには、光と影、炎と氷、大地の調和が必要なり。”」


ノーム「私たちの力を一つにするしかない。アリス、私たちの力をその剣に集めるんだ!」


ディネが冷たい水の力を、サラが燃え上がる炎の力を、ノームが堅牢な大地の力をアリスの聖剣に注ぎ込む。


聖剣は眩い光を放ち、霧の影に向かって一閃の輝きを放った。


アリス「これでトドメだ!」


アリスが剣を振り下ろすと、霧の影は断末魔の叫びを上げて霧散した。


霧が晴れ、廃墟の村には静寂が訪れた。


しかし、アリスは気づいていた。


深淵の囁きが語った言葉――**“新しい世界の覇者”**という謎が、まだ解き明かされていないことを。


サドバインの霧の謎が解かれた時、新たな脅威がその背後に隠されていることをアリスは知ることになる。


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