157 ルティアーナ王国編 part4
アリスたちが山頂へと近づくにつれ、熱気はますます強まり、皮膚を刺すような灼熱が全身を覆った。
空には黒い煙が渦巻き、火山がいつ噴火してもおかしくない様子だった。
ミクリ「ここまで来て、この山がただの自然現象だとは思えないな。」
アリス「何かが、この山を異常な状態にしている……原因を突き止めるしかないね。」
山頂にたどり着いた彼らは、巨大な溶岩湖を目にした。
その中心にそびえ立つ岩の台座には、見覚えのある「闇の水晶」が輝いていた。
その水晶は異様なほど巨大化しており、脈打つように黒いエネルギーを放出していた。
フノン「また水晶か……星海の目の仕業だな。」
突然、岩の台座の向こうから笑い声が響き渡った。
ファルクス「愚かな連中だな……ここまで来たというのか。」
現れたのは、星海の目の幹部である「ファルクス」。
全身を黒い装束で包み、彼の両手には燃え上がるような双剣が握られていた。
ファルクス「貴様たちがこの水晶を壊しに来たのは分かっている。しかし、私がいる限り、それは絶対にさせん!」
ファルクスは双剣を振るい、溶岩湖が沸き立つように熱波が巻き起こった。
その勢いで巨大な炎の獣が湖から現れ、アリスたちに襲いかかる。
ディネ「アリス。気をつけて!あの水晶から魔力を引き出してるから!」
アリス「水晶を破壊しない限り、この戦いは終わらないみたいだね!」
ミクリ「俺が水晶に近づく。その間、奴を頼む!」
アリス、フノン、メリッサは連携してファルクスの猛攻を防ぎながら、ミクリが隙を突いて水晶へと向かう。
ファルクス「邪魔をさせるか!」
ファルクスは双剣を振り下ろし、ミクリの進路を阻もうとするが、アリスが間に割って入った。
アリス「ここは通さない!」
アリスの聖剣がファルクスの双剣を弾き、火花が飛び散る。
その間にフノンが雷の魔法を放ち、ファルクスの周囲に強烈な電撃を巻き起こした。
水晶破壊、そしてミクリが魔剣を振り上げ、全力で水晶に一撃を叩き込むと、黒いエネルギーが裂けるように爆発した。
その瞬間、溶岩湖が沈静化し、炎の獣も次第に姿を消していった。
ファルクス「貴様ら……ここまでやるとは……!」
ファルクスが膝をつき、悔しそうに呟いた。
アリス「これで終わりだ。星海の目の野望もここまでだ。」
しかし、ファルクスは不敵に笑った。
ファルクス「終わりだと?これが序章に過ぎないことも知らずに……!」
その言葉を残し、彼の体は黒い霧に包まれ、跡形もなく消えてしまった。
ファルクスが消えた後、水晶の破片の中から一枚の地図が見つかった。
それは、星海の目の次なる拠点と思われる場所を示していた。
アリス「次はここかな……?」
アリスが地図を見つめると、それは東の大海原に浮かぶ孤島を示していた。
ミクリ「まだ戦いは終わっていないみたいだね。」
フノン「星海の目が本当に何を企んでいるのか、今度こそ突き止める必要があります。」
アリスたちは山を下り、次なる冒険に向けて準備を整えるべく港町ランバードへと戻るのだった。
港町ランバードに戻ったアリスたちは、星海の目の拠点を示す地図を広げ、次の目的地について話し合った。
地図に描かれていた孤島は、「カラドン島」と呼ばれる未踏の地。
航海者の間では、嵐と巨大な海獣が頻繁に現れる危険な場所として知られていた。
ミクリ「こんなところに拠点を作るなんて、星海の目も相当用心深いみたいだね。」
フノン「用心深いというより、何か重大な理由があるんだと思います。」
ミクリ「この島には、闇の力に関係する何かが眠っているのかもしれない。」
アリス「どちらにせよ行くしかないわ。準備を整えて、早速出発しましょう。」
港で最強の船と評判の「クリムゾン・ハープ号」を手配したアリスたち。
船長のタリスは無骨なベテランで、「どんな海でも俺に任せておけ」と豪語する男だった。
タリス「ただし、カラドン島は別だ。あの島の周りには『哭きの嵐』がある。海図にも載っていない、どこからともなく現れる呪いの嵐だ。」
アリス「それでも行かなくちゃならないんだ。」
アリスがきっぱりと言い放つと、タリスは驚いたように目を見開き、それから静かに笑った。
タリス「お嬢さん、いい目をしてるな。その覚悟、見届けさせてもらおう。」
航海は順調に進むかに見えたが、カラドン島に近づくにつれ、空模様が一変。
黒い雲が空を覆い、激しい風と雨が船を襲った。
さらに、海中から突如として現れた巨大な海獣が船を取り囲む。
アリス「これが哭きの嵐か……!」
ミクリ「怯むな!船を守るぞ!」
ミクリが叫び、アリスたちは力を合わせて海獣に立ち向かった。
嵐と海獣の猛攻を乗り越えたアリスたちは、ついにカラドン島へと上陸した。
島は不気味な静寂に包まれ、黒い木々が鬱蒼と茂っていた。
空には月も星も見えず、全てを飲み込むような闇が広がっていた。
ディネ「ここは普通の島じゃないかも……魔の空気が重いから。」
フノン「何かの結界が張られているみたいです。」
フノンが呪文を唱え、周囲を探ると、フノンの目が険しくなった。
フノン「中心部に強力な魔力の波動を感じるわ。」
アリス「それが奴らの拠点だな。」
アリスたちは島の奥深くへと進んでいった。
島の中心部には、闇に覆われた巨大な神殿がそびえ立っていた。
その入り口には星海の目の紋章が刻まれており、薄暗い光が不気味に揺らめいていた。
ミクリ「待ち伏せされてるだろうな。」
ディネ「そりゃそうでしょ。」
アリス「気が重くなった。」
神殿に足を踏み入れると、天井から降り注ぐ闇の光がアリスたちを照らし出した。
その奥には、大勢の星海の目の構成員が待ち構えており、中央の玉座には、彼らの首領と思われる男が座っていた。
アルトラス「ようこそ、勇敢なる諸君。」
低い声が神殿中に響く。首領は立ち上がり、その顔を闇のフードから覗かせた。
アルトラス「私はアストラル。星海の目を統べる者だ。」
アリス「お前がこの陰謀の黒幕か!」
アルトラス「黒幕?そう呼ばれるのは悪くないな。しかし、これもまた小さな歯車の一つに過ぎない。」アストラルは冷笑を浮かべる。「カラドン島に眠る力――それこそが、我々の真の目的だ。」
その瞬間、神殿全体が震え、床下から暗黒のエネルギーが噴き出した。
アリス「これは……何?」
アルトラス「この力を手に入れれば、世界そのものを覆すことができる。さあ、我が計画の幕開けを見届けるがいい!」
アストラルが高笑いを上げる中、神殿は混乱と闇に包まれていった――。
アリスたちは、アストラルの計画を阻止すべく、神殿の奥へと進む決意を新たにする。
しかし、待ち受けるのは数々の罠と、これまでに見たことのない恐るべき闇の力だった。