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154 ルティアーナ王国編 part1

青い海が広がる港町ランバード。潮風が運ぶ賑やかな声や市場の活気も、どこか影を帯びていた。


到着早々、アリスたちは異様な雰囲気に気づいた。


アリス「ここ、なんだか変ね……活気はあるのに、以前と違って笑顔が少ない気がする。」


その言葉を裏付けるように、待っていたシエスタ王女が険しい表情で迎えた。


シエスタ王女「来てくれてありがとうございます。ここランバードでは奇怪な闇の事件が頻発しているのです。誰も原因が分からなくて……夜になると人々が行方不明になったり、町の一角が急に廃墟のように荒れ果てたりしているのです。」


フノン「闇の事件?」


フノンが興味深げに尋ねた。


シエスタ王女は頷き、さらに語る。


シエスタ王女「犠牲者の多くが同じ言葉を残しているのです。『闇が囁く声に導かれた』と。」


アリスたちはその言葉に不穏なものを感じた。


ミクリ「まずは夜に調査だね。」


ミクリが提案し、一行は町を見回ることにした。


夜になると、港町の活気は嘘のように消え、人々は家々に閉じこもる。


静まり返った通りを歩くアリスたちは、徐々に肌を刺すような冷気を感じ始めた。


ディネ「……聞こえない?」


アリス「何も……」


アリスが答えようとしたその時、薄暗い路地の奥から囁き声が響いた。


闇の声「来い……この闇の中へ……」


その声はどこからともなく聞こえ、耳に直接語りかけてくるようだった。


フノンがすかさず魔力を高め、周囲を警戒する。


フノン「ただの囁き声じゃない。この声には魔力が宿ってる。」


声の方角に向かうと、路地の奥には奇妙な黒い霧が漂っていた。その中心には一人の男性が立っている。


ミクリ「おい、大丈夫か!」


ミクリが呼びかけると、男性がゆっくりと振り返った。


だがその目は虚ろで、口元には不気味な笑みが浮かんでいた。


男性「闇が全てを飲み込む……」


そう呟いた瞬間、黒い霧が形を変え、巨大な影のような魔獣が現れた。


アリス「来るぞ!」


アリスが聖剣を構える。


影の魔獣は霧のような身体を持ち、物理攻撃がほとんど通用しない。


アリスの剣が斬りつけても霧が裂けるだけで、すぐに元に戻ってしまう。


アリス「これじゃ埒が明かない!フノン、何か分かる?」


フノン「魔力を吸収してるみたいです。弱点は光属性の魔法か、あるいは……」


ミクリ「メリッサ!光の結界を張れるか?」


メリッサ「やってみる!」


メリッサが杖を掲げ、光の魔法陣を描き始めた。


光が影を浄化し始めると、魔獣が苦しむようにのた打ち回った。


その隙を突き、アリスが聖なる気を注いだ剣を振り下ろす。


アリスの剣が魔獣の中心を貫き、黒い霧は霧散した。


同時に男性も倒れ込むが、かろうじて生きていた。


シエスタ王女「助かったわ……でもこれはまだ序章かもしれません。」


シエスタ王女が男性を治療する中で呟く。


その後の調査で、黒い霧が町外れの古い廃墟から広がっていることが判明した。


廃墟には「闇の司祭」と呼ばれる者たちが潜んでおり、古代の禁術を用いて人々を操り、闇を広げていたのだ。


アリス「次は廃墟か……ますます厄介だね。」


翌朝、港町ランバードは一夜の騒動が嘘のように穏やかだった。


しかし、アリスたちは静けさの裏に潜む不気味な気配を感じ取っていた。


ミクリ「黒い霧の正体が廃墟にあるなら、そこを叩けば全てが解決するはずだ。」


ミクリが地図を広げながら言う。


廃墟は町外れの崖の上に位置しており、地元の漁師たちからは「呪われた場所」として恐れられていた。


誰も近づかないその地には、古びた教会と壊れた塔が並び、かつて繁栄していた神秘の聖地だったという。


メリッサ「でもどうしてそんな場所が闇の司祭たちの拠点になったのでしょうか?」


メリッサが疑問を口にすると、フノンが眉をひそめて答えた。


フノン「おそらく、そこには古代の遺物が眠っているんだと思います。闇の力を増幅させる何かがある気がします。」


アリスは聖剣を握り直し、毅然とした表情で言った。


アリス「なら、それを止めるしかないね。行くよ!」


廃墟へ向かう道は険しかった。崖沿いの小道は霧で覆われ、足元の岩場は滑りやすい。


だが、さらに厄介だったのは、道中に仕掛けられた罠だった。


突然、周囲の霧が濃くなり、視界が完全に遮られた。


フノン「この霧、普通じゃない……!」


フノンが警戒する間もなく、どこからともなく闇の矢が飛んできた。


ミクリ「伏せろ!」


ミクリが叫び、アリスが盾代わりに聖剣を構える。


矢が剣に当たると、まるで意思を持つかのように弾かれた。


アリス「ここ、罠だらけだね。」


霧を切り裂くように進むと、次々と現れる影の魔獣たちがアリスたちを襲った。


狼の群れ、巨大なサソリ、翼を持つ蛇――すべてが闇の力に支配された凶暴な存在だった。


フノンが火の魔法で前方を焼き払い、メリッサが光の結界で守りながら、一行は少しずつ廃墟に近づいていった。


廃墟の中心にそびえる教会は、かつての栄光を失い、崩れかけていた。


しかし、その内部に足を踏み入れた瞬間、一行はその場に釘付けになった。


祭壇の上には巨大な水晶があり、その中には黒い霧が渦を巻いていた。


水晶を取り囲むように数人のローブを纏った者たちが祈りを捧げていた。


アリス「これが闇の司祭……!」


アリスが剣を抜くと、一人の男が振り返った。


男「よくぞ来たな、無知なる者たちよ。我らが主の力を阻止できるとでも?」


男の名はアザルス。


この地を支配する闇の司祭団の指導者だった。


彼の背後には黒い霧が具現化したかのような人型の影が立ち上がる。


ミクリ「この水晶を破壊すれば、黒い霧は消えるわけだね。」


アザルスが笑みを浮かべた。


アザルス「ふむ、だが簡単には壊させんぞ。この闇の主がいる限り、お前たちはただの塵だ!」


戦闘が始まると同時に、水晶から放たれる黒い霧が教会全体を覆った。


霧は生き物のように蠢き、アリスたちを分断しようとする。


アリス「こんなものに負けてたまるか!」


アリスは霧を切り裂きながら突き進む。


一方、フノンとメリッサは魔法で霧を浄化し、道を切り開いていく。


だが、アザルスが呼び出した影の魔獣は強大だった。


フノン「ミクリ、右です!」


フノンが雷の魔法を放つと同時に、ミクリが魔剣でとどめを刺す。


その瞬間、アリスが水晶に向かって突撃した。


アリス「これで終わりだ!」


聖剣が水晶に突き刺さると、眩い光が教会全体を包み込んだ。


闇の霧が消え、アザルスは崩れ落ちた。


戦いが終わり、朝陽が廃墟を照らしていた。


港町に戻ったアリスたちは、シエスタ王女に報告を行った。


シエスタ王女「ありがとう。これで町に平穏が戻ります……でも、この闇の事件がここだけで終わるとは思えません。」


アリスもその言葉に頷いた。


アリス「この水晶や闇の力、何かもっと大きな陰謀が絡んでいる気がする。」


こうして、奇怪な事件は解決したが、その先に待つさらなる闇が彼らを試そうとしていることを、まだ誰も知らなかった。


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