153 レイン王国編 part2
フノン「奴が操っている魔術の核を探してください!それがあれば、この幻影は消えます!」
アリス「核だな。了解!」
アリスが素早く動き出し、洞窟内を走りながら視線を巡らせる。
ディネ「見てよ!あの柱はなんか変じゃない!」
アリス「ほんとだ!」
洞窟の中央に立つ黒い石柱。
その頂点には、暗黒の泉から生まれたかのような光る球体が浮かんでいた。
アリス「フノン、あれを壊せるか?」
アリスが柱を指差すと、フノンは頷いた。
フノン「任せてください。だが、時間が必要です!」
ミクリ「時間稼ぎは俺がやるよ!」
ミクリが魔剣を握りしめ、イングリッターの前に立ちはだかる。
イングリッター「ほう、貴様が私の相手をするというのか?」
イングリッターが嘲笑しながらも一歩前に出る。その巨体と圧倒的な威圧感に、一瞬空気が張り詰めた。
ミクリ「お前なんか、この魔剣で十分だ!」
ミクリが魔力を剣に注ぎながら斬りかかる。
その間に、フノンは呪文を完成させようと全神経を集中させる。
メリッサは結界を張りながらフノンを守り、アリスは魔獣たちを次々と斬り倒していく。
フノン「あと少し……もう少しで……!」
フノンが呟いたその時、イングリッターがミクリを吹き飛ばし、柱に向かって突進してきた。
アリス「邪魔はさせない!」
アリスが全力でイングリッターに挑みかかり、彼の動きを止める。
アリス「今だ、フノン!」
アリスの叫びとともに、フノンが呪文を完成させた。
柱に向けて放たれた雷が光球を直撃し、柱全体が爆発音とともに崩れ落ちる。
イングリッター「ぐおおおおっ!」
イングリッターが苦痛の声を上げる。
柱の崩壊とともに幻影の魔獣は消え去り、洞窟内の闇も薄れていった。
アリス「これで終わりだ!」
アリスが最後の力を振り絞り、聖なる気の剣でイングリッターを貫く。
イングリッター「この泉がある限り、私は何度でも復活する!」
イングリッターが勝ち誇ったように笑うが、アリスの目は決して揺るがなかった。
アリス「なら、その泉ごと消し去る!」
アリスの聖剣が光を放ち、フノンとメリッサが魔力を注ぎ込むことで、剣は限界以上の力を得た。
ミクリがイングリッターの動きを封じている間に、アリスは剣を振り下ろした。
眩い光が洞窟全体を包み込み、暗黒の泉は蒸発するように消え去った。
それと同時に、イングリッターの身体も霧散していく。
その体が光に包まれ、徐々に消え去っていった。
アリス「やっと終わったよ。」
サラ「あんなのに手こずり過ぎじゃん!」
アリス「うるさい!あんたたちの力を借りずに勝てたんだからほめてほしい。」
サラ「まだまだだな!」
アリス「うるさい!」
洞窟から出ると、夜空には満天の星が輝いていた。
村人たちが駆け寄り、涙を流しながら礼を述べる。
村長「これで平和が戻る……!」
村長が涙ながらに感謝する。
アリス「これが村人の再生の一歩になるなら。」
アリスが笑顔で答えた。
黒の獅子を討伐した翌朝、アリスたちは村人たちの歓声に包まれて目を覚ました。
すると、村長のもとに王宮からの使者が訪れ、手紙を差し出した。
使者「レイン王国の王、キャスバル三世より申し上げます。我が国を脅かしていた黒の獅子を討ち滅ぼされた英雄たちを、ぜひ王宮へお招きしたい。」
使者は礼儀正しく深々と頭を下げた。
アリスたちは驚きつつも、招待を快諾した。
村を出発したアリスたちは、王宮へ向かう道中で豊かな自然と美しい景色に心を奪われた。
金色の稲穂が風に揺れる田園、透き通った小川で遊ぶ子どもたち、そして遠くに見える壮大な城――すべてがこの国の平和と美しさを物語っていた。
ミクリ「本当にのどかだな。これが守られるべきレイン王国の姿か。」
ミクリが感慨深げに言うと、メリッサが微笑んで頷いた。
メリッサ「でも、それを乱していた黒の獅子がいたわけだもの。私たちがその脅威を取り除けて良かったですね。」
王宮に到着したアリスたちは、その壮麗さに息を呑んだ。
白亜の城壁に囲まれた城は、まるで宝石のように輝いており、門には美しい彫刻が施されていた。
城の中へと案内されると、豪華な赤い絨毯が敷かれた広間で、キャスバル三世が待っていた。
彼は年若いながらも威厳に満ちた姿で、笑顔を浮かべてアリスたちを迎えた。
キャスバル三世「よくぞ来てくださった、我が国の英雄たちよ。君たちのおかげで、この国に再び平和が訪れた。」
キャスバル三世の声に、広間に集まった家臣たちも拍手で迎えた。
その夜、城内の大広間で盛大な宴が開かれた。
サラ「ワォ!美味しそうなものがたくさんあるよ。」
アリス「食べ過ぎるなよ!」
長いテーブルには、海の幸をふんだんに使った料理や、この国特産の果実酒が並べられていた。
音楽隊が奏でる軽快な旋律が響く中、アリスたちは村人たちと違う形で感謝の意を受け取った。
アリス「このカニ、すごく美味しい!」
アリスが目を輝かせながら料理を頬張ると、フノンが皮肉めいた口調で笑った。
フノン「英雄らしからぬ食べ方ですね。」
アリス「いいじゃない、せっかくのおもてなしなんだから!」
メリッサがその様子を見て微笑んで、ミクリは少し緊張気味に食事を続けていた。
宴が進む中、キャスバル三世が立ち上がり、杯を掲げて言った。
キャスバル三世「アリスたちよ、君たちの力があれば、さらなる脅威にも立ち向かえるだろう。もし可能であれば、我が国の友として、これからも力を貸してはくれないだろうか?」
その言葉にアリスたちは顔を見合わせた。
ミクリ「もちろん協力するつもりです。ただ、私たちにも旅の目的があるので、長居はできませんが……。」
キャスバル三世「それで十分だ。この国はいつでも君たちを歓迎するだろう」
盛大な宴が繰り広げられるレイン王国の王宮。
華やかな音楽と人々の笑い声が響く中、アリスたちは王の厚意を存分に味わっていた。
ディネ「アリス。あそこに知ってる人がいるよ。」
アリス「どこ?」
アリスがキョロキョロしていると、賑やかな宴の中、ひときわ高貴な存在感を放つ一人の女性がアリスたちに近づいてきた。
シエスタ王女「お久しぶりです、アリス様。」
その声にアリスが驚いて振り返ると、そこにはシエスタ王女が立っていた。
かつてトルネキア帝国で出会ってルティアーナ王国で共に戦った聡明で優雅な彼女だ。
アリス「シエスタ王女!どうしてここに?」
シエスタ王女「あなたたちがこのレイン王国にいると聞いて、じっとしていられなくなったの。だから、急いで駆けつけたわ。」
シエスタ王女は、アリスたちを見つめながら柔らかく微笑んだ。
その笑顔に懐かしさと喜びを覚えたアリスたちは、思わず手を取り合った。
キャスバル三世もシエスタ王女の訪問を歓迎し、宴はさらに盛り上がった。
シエスタ王女はアリスたちと席を共にし、これまでの冒険や再会への喜びを語り合った。
シエスタ王女「アリス様、あなたたちが黒の獅子を討ち取った話を聞きました。さすがね。ルティアーナ王国を助けていただいた時もそうでしたけれど、あなたたちの勇気と力には本当に驚かされるばかりです。」
アリス「そんなに褒められると照れるわね。でも、みんなが力を合わせてくれたおかげよ。」
シエスタ王女とアリスたちは互いの冒険談や国の話を語り合い、宴は夜更けまで続いた。
宴が終わりに近づくころ、シエスタ王女が真剣な表情で言った。
シエスタ王女「アリス様、せっかくなのでルティアーナ王国にもぜひもう一度来てほしいの。またあなたたちの助けを必要としている人々がいるわ。もちろん、私個人としても、もっとあなたたちと一緒に過ごしたい。」
アリスは一瞬目を見開き、それから仲間たちと顔を見合わせた。
ミクリが静かに頷き、フノンとメリッサも微笑んで肯定の意を示した。
アリス「わかった。私たちは必ず行く。」
アリスは力強く答えた。
翌朝、レイン王国の王宮を後にするアリスたちは、シエスタ王女とともに出発の準備を整えた。
キャスバル三世は惜別の言葉を送りつつ、再びこの地を訪れるよう願いを込めた。
見送りに来たキャスバル三世は、最後にこう言った。
キャスバル三世「また困難が訪れた時には、どうか助けてほしい。我が国の友として。」
アリス「ええ、私たちはどこへでも行きます。」
アリスが自信に満ちた笑顔で答えると、キャスバル三世も微笑んだ。
キャスバル三世「どうか気をつけて旅を。」
アリス「ありがとうございした。ではまた。」
王宮の門をくぐり抜けると、アリスたちは新たな冒険への期待を胸に抱き、次なる目的地であるルティアーナ王国へと歩みを進めた。
こうして、再び仲間として共に過ごすシエスタ王女とともに、アリスたちの新たな物語が幕を開けるのだった。