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152 レイン王国編 part1

アリスたちは船に乗って、ロスフルリント共和国の北に位置するレイン王国に向かった。


かつて立ち寄ったルティアーナ王国の隣の島である。


レイン王国の最大の財産は、その豊かな自然と海産物だ。


島の周りには温暖な潮流が流れ、豊富な魚介類と貴重な真珠が採れる。


特に、王国名物の「銀鱗の真珠」は、高価な宝飾品として世界中の貴族たちに愛されている。


また、レイン王国は独特の造船技術を誇っており、その船は頑丈で、どんな荒波にも耐えると言われている。


これが交易を支える一方で、海賊たちにとっても目をつけられる要因となっている。


最近、この王国を脅かしているのが、「黒の獅子」と名乗る犯罪組織だ。


彼らは島の東端にある洞窟を根城にし、魔獣を使って村々を襲撃している。


王国軍も対抗しているが、黒の獅子が生み出す魔獣は凶暴かつ異形であり、太刀打ちできない状況が続いていた。


さらに、黒の獅子の頭領であるイングリッターは、恐ろしい存在として噂されている。


彼は「半分魔獣、半分魔人」と言われる異形の化け物で、並の剣や魔法では傷一つ負わせることができない。


キャスバル三世も黒の獅子への対策を進めていたが、王国の軍事力では対処しきれず、追い詰められた状態だった。


それでも、レイン王国の民は決して諦めなかった。


自然を愛し、海と共に生きる彼らは、どんな困難にも団結して立ち向かう気概を持っている。


「嵐が来ても、海は必ず静まる。だから私たちも負けない。」


そんな言葉が、この国の合言葉のように語り継がれている。


キャスバル三世もまた、その信念を胸に、黒の獅子への反撃の機会を伺っていた――そんな時、島を訪れたのがアリスたちだった。


アリス「これがレイン王国か……美しい場所だね。」


アリスが輝く海を見渡しながら呟く。


ミクリ「確かに美しいけど、裏では深刻な問題を抱えているみたいだよ。」


アリスたちの船が小さな漁村の桟橋に停まると、村人たちは困窮した表情で駆け寄ってきた。


彼らの話によると、国全体を恐怖に陥れている「黒の獅子」という組織の魔の手が、この村にも及んでいるという。


村長「お願いです……どうか助けてください!」


村長の老人が震える声でアリスに懇願する。


ミクリ「魔獣を操る頭領がいるって話か……厄介そうだな。」


フノン「厄介どころじゃないですよ。魔獣を生み出す暗黒の泉だなんて、まるで悪夢みたいですね。」


アリス「どんなに恐ろしい敵でも、放っておけない。」


アリスが村長の肩に手を置いて微笑むと、仲間たちも無言で頷いた。


こうして、アリスたちは黒の獅子を壊滅させるため、東の端にある洞窟へ向かうことを決意した。


洞窟の入り口は、異様な静寂に包まれていた。


周囲には木々や草花はおろか、生き物の気配すらない。


ただ、冷たい風が洞窟から吹き出し、腐臭を漂わせる。


岩壁にびっしりと刻まれた古代の文字は、呪詛を込めたように黒く変色しており、触れることすら憚られる雰囲気を放っている。


ミクリ「ここが噂の黒の泉の洞窟か……」


フノン「この空気、普通じゃないですね。ものすごく魔力が充満しています。」


フノンは呪文の詠唱を小声で繰り返し、いつでも戦えるように準備を整える。


メリッサ「全員、気をつけて。この洞窟自体が敵の一部かもしれないから。」


メリッサが警戒の言葉を口にしながら、光の結界を仲間たちに展開する。


洞窟を進むにつれ、異形の魔獣たちが次々と姿を現した。


最初に現れたのは、赤黒い体毛に覆われた狼だ。


四つの目が同時にアリスたちを睨みつけ、その口からは腐った血のような液体が滴り落ちている。


ミクリ「来るぞ!」


ミクリが叫び、剣を抜いた瞬間、狼は猛スピードで襲いかかってきた。


ミクリの剣が狼の牙を受け止め、火花を散らす。


その間にフノンが呪文を完成させ、狼の背後に雷を落とした。


閃光と共に狼は地面に崩れ落ちたが、すぐに次の敵が現れる。


アリス「次はあれかぁ……!?」


洞窟の奥から現れたのは、巨大なトカゲのような魔獣だった。


体からは炎が立ち上り、その瞳は獲物を狙うように赤く輝いている。


ミクリ「私が引きつける!援護を頼む!」


ミクリが叫び、トカゲに向かって突進する。


フノン「了解です!」


フノンは素早く氷の呪文を唱え、トカゲの動きを封じるべく足元に氷柱を発生させた。


メリッサ「ミクリさま、少し下がっていただけますか!回復いたしますので!」


メリッサが盾の魔法でトカゲの攻撃を防ぎつつ、ミクリの体力を回復させる。


アリスは敵の動きを見極めながら、聖剣を構えると、一気にトカゲの弱点を狙い切り込んだ。


その一撃は見事に魔獣を貫き、トカゲは苦悶の声をあげて崩れ落ちた。


ミクリ「これが、魔獣の泉……」


ミクリが指差す先には、闇色に輝く不気味な泉が広がっていた。


水面は静かに見えるが、よく見ると小さな魔獣の姿が次々と浮かび上がり、形を成しながら洞窟内に散っていく様子が確認できる。


フノン「まるで生きている泉みたいだね……!」


フノンが驚きの声を漏らす。


アリス「このまま放っておけば、魔獣は無限に生まれ続ける……私たちが止めるしかない。」


アリスたちが洞窟の奥深くへと進むと、壁には奇妙な模様が刻まれていた。


それはまるで生きているかのように脈動し、赤黒い光を放っている。


ミクリ「これって……何かの呪文の一部か?」


ミクリが魔剣で壁を軽く叩きながら尋ねる。


メリッサ「気をつけて。ここ全体が魔術の影響下にあるみたい。」


メリッサが壁から漂う魔力を感じ取りながら言う。


イングリッター「その通りだ、よく気づいたな。」


突然、洞窟の奥から響いた低い声に全員が身構えた。


暗闇から姿を現したのは、黒の獅子の頭領――イングリッター。


その姿は以前にも増して異様で、巨大な黒い翼が背中から生え、鋭い爪が何かを裂く音を立てていた。


イングリッター「貴様らが我がアジトを荒らした連中か。愚か者どもめ、この地がただの魔獣の巣だとでも思ったか?」


イングリッターの言葉に、フノンが挑発するように返す。


フノン「何を言ってるんです。こんな場所、ただの呪われた泉ですから。」


イングリッター「呪われた?ふん、これは闇の神が私に授けた力の源だ。お前たちには理解できまい。」


イングリッターが手を掲げると、洞窟内の模様が一斉に輝き始めた。


その瞬間、地面が割れ、空間から無数の魔獣が姿を現した。


だが、それらはどこか不安定で、幻影のように揺らめいている。


アリス「幻影の魔獣……だが、攻撃力は本物か!」


アリスが咄嗟に剣で迫り来る一体を斬り裂くと、霧のように消えていく。


ミクリ「数が多すぎる!どうする?」


ミクリが叫ぶ中、フノンが冷静に策を練る。


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