150 ロスフルリント共和国 part4
制御装置に触れると、アリスたちは星海の民の記憶を見ることができた。
彼らはこの塔を、星の力を利用して人々の繁栄を支えるために作ったが、その力が暴走し、逆に多くの命を奪ったという。
フノン「力を封印するか、再び利用するか……選ばなければなりません。」
ミクリは少し迷いながらも言った。
ミクリ「もしこの力が正しく使えれば、世界に平和をもたらせるかもしれない。でも……」
アリス「封印しよう。この力がまた誰かの手に渡れば、同じことが繰り返される。私たちはその危険を終わらせるためにここにいるんだ。」
三人の一致した決断により、制御装置は再び封印の儀式を開始した。
封印が完了すると、塔は静かに崩れ始めた。その光景を見たアリスたちは急いで脱出を試みる。
崩壊する塔を後に、三人は外の世界へと戻った。星海の塔は消え去ったが、その場所には美しい花々が咲き乱れ、新たな生命の象徴となった。
ロスフルリント共和国に戻ったアリスたちは、塔の封印が完了したことを王国や共和国に報告した。
星海の目の残党も弱体化し、大陸全土に平和が戻りつつあった。
ミクリ「これで一段落ついたな。」
フノン「でも、星海の目の残党が完全に消えたわけじゃないですからね。」
アリス「そうだね!」
ロスフルリント共和国で束の間の休息を得たアリスたちだったが、星海の目の残党が未だ潜伏しているという報告が舞い込んだ。
彼らは星海の塔の崩壊を乗り越え、最後の計画を実行しようとしていた。
フノン「彼らは星海の塔で得られなかった力を、別の方法で手に入れようとしているらしいです。」
フノンが集めた情報によれば、星海の目の残党たちは古代の遺物「星辰の核」を探し求めているという。
この核には膨大なエネルギーが秘められており、利用次第では大陸全土を揺るがす力を発揮する可能性があった。
ミクリ「これで最後にしたい。」
ミクリが覚悟を固めた表情で言うと、アリスも頷いた。
アリス「もう一度、みんなでやつらの野望を止めよう。」
残党たちはすでに行動を開始しており、アリスたちは彼らの足跡を追う形で旅を進めた。
星海の目が向かった先は「灰の山脈」と呼ばれる荒涼とした地帯。そこには古代文明が築いた隠された神殿が存在していた。
途中、彼らは幾度も残党の奇襲を受けたが、ミクリの剣技とフノンの魔術が光る連携でそれを乗り越えた。
アリス「星海の目は本気で私たちを妨害しようとしている。」
ミクリ「それだけ、星辰の核が彼らにとって重要なんだろう。けど、私たちは負けられない。」
やがて彼らは灰の山脈の奥深くに眠る神殿へと到達した。
荒廃した外壁の至るところに星海の民の象形文字が刻まれており、その一つが「核」の封印について語っていた。
フノン「核を起動するには特定の魔力が必要だって書いてあります。」
フノンが石板を読み解きながら言った。
「星海の目はその方法をもう知っているの?」
アリスが尋ねると、フノンは険しい顔で答えた。
「たぶん。だから急がないと。」
神殿の最奥に辿り着いたアリスたちは、ついに星海の目のリーダーである女性「サリア」と対峙した。
彼女は残党たちを率いて星辰の核の封印を解いており、核はすでに不安定な輝きを放っていた。
サリア「星海の塔の失敗を乗り越え、私はこの核で新たな世界を作る!」
アリス「それがどれだけ危険なことか分かっているのか?」
アリスが問い詰めるが、サリアは聞く耳を持たなかった。
ミクリ「話し合いの余地はなさそうだ。」
ミクリが剣を構える。
ミクリ「力で止めるしかない。行くぞ!」
サリアは核の力を取り込み、強大な魔力を操る存在へと変貌していた。アリスたちは彼女の猛攻に苦戦しながらも、互いの信頼と連携を駆使して戦い抜いた。
戦いの中で、星辰の核は暴走を始めた。
フノンはそれを止める唯一の方法を見つけたが、それには大きな魔力の代償が必要だった。
フノン「核の力を逆転させて封じ込めるには、莫大な魔力が必要です。僕がそれを引き受けます。」
アリス「ごめん……!今の私は魔力が使えない!」
フノン「ここまできたらやってみるしかありません。」
ミクリも一度反対しようとしたが、フノンの覚悟を見て、それ以上言葉を紡げなかった。
フノンは星辰の核の力を封じ込めるために全魔力を発動し、神殿全体を光で満たした。
その光景は、まるで星空そのものが地上に降りてきたかのようだった。
フノンの全魔力を使った封印魔法が成功し、星辰の核は静かにその光を閉じ込められた。
神殿の揺れが止まり、辺りに静寂が訪れる中、アリスとミクリはほこり舞う遺跡の中心で倒れ込むフノンの姿を見つけた。
アリス「フノン!」
アリスは駆け寄り、その身体を揺り起こす。
彼の顔は青白く、呼吸も弱々しかったが、それでも微かに微笑んでいた。
フノン「核は……もう大丈夫だよ。」
彼は囁くように言った。
ミクリが急いで回復薬を取り出し、フノンに飲ませる。
ミクリ「無茶しやがって……けど、生きててくれてよかった。」
彼はフノンの肩を叩いた。
フノンは薄目を開け、二人を見つめる。
フノン「僕は……まだみんなと一緒にいたいんだ。だから、諦めなかった……。」
その言葉にアリスは涙を堪えきれず、静かに頷いた。
遺跡の崩壊を免れたアリスたちは、フノンを支えながら神殿を後にした。
封印の力を使い果たした彼は、一時的に魔力を失っており、自力で歩くのも難しい状態だった。
アリス「戻るまで、しっかり休むんだよ。」
アリスがフノンを支えながら冗談めかして言うと、フノンはかすかな笑みを返す。
フノン「君たちがこうやって支えてくれるなら、安心して休めそうだ。」
道中、ミクリは護衛役として常に周囲を警戒し、アリスとフノンの安全を守った。
彼らは少しずつ回復していくフノンの様子に安堵を覚えながらも、星海の目の脅威が完全に去ったことを噛み締めていた。
要塞都市に戻った彼らを迎えたのは、歓喜に満ちた住民たちだった。
星海の目の脅威が去ったことを知り、王宮や市民たちは彼らを称えた。
要塞都市の指導者「本当にありがとう、アリスたち。」
要塞の指導者が深々と頭を下げる。
アリス「いや、私たちだけじゃない。ここにいるみんなの協力があったからこそ、成し遂げられたんです。」
アリスはそう言って笑った。
フノンも、その場で感謝を述べたかったが、未だ消耗した身体では声を出すのも一苦労だった。
それでも彼の目には、深い安堵と感謝の光が宿っていた。
数日後、フノンの魔力も徐々に回復し、彼は杖を使いながらも歩けるようになっていた。
フノン「まだ本調子じゃないけど、これくらいなら平気だよ。」
フノンが笑顔を見せると、ミクリが肩を叩いた。
ミクリ「無理はするなよ。その杖、飾りじゃないんだからな。」
アリスは笑いながら二人のやり取りを見守る。
アリス「さあ、これからどうする?まだロスフルリントを見て回る?それとも次の冒険を探す?」
フノンは少し考えた後、小さく頷く。
フノン「まずはゆっくりしたい。それに……」
アリス「それに?」
アリスが首を傾げる。
フノン「少し休んで、次はもっと大きな冒険に備えたいんだ。」
フノンは微笑んだ。
その夜、三人は久しぶりに穏やかな時間を過ごしていた。満天の星空の下、彼らは次の冒険に思いを馳せていた。
アリス「星海の目の脅威は去ったけど、この世界にはまだまだ謎が溢れている。」
アリスが空を見上げながら呟いた。
フノン「そうだね。僕たちならその謎を解き明かせるからね。」
フノンも同じ空を見上げる。
ミクリ「けど、その前に……やっぱりちょっとのんびりしたいな。」
ミクリが笑いながら言うと、三人は声を上げて笑った。
こうしてアリスたちは、星辰の核を巡る一連の冒険に終止符を打ち、新たな未来への一歩を踏み出したのだった。
夜空に輝く星たちは、彼らを見守るように優しく瞬いていた。