146 ロアン王国編 part13
星界の観測儀が解放された後、アリスたちの目の前に映し出された地図には、これまで誰も知らなかった島々と航路が示されていた。
特に一つの島が光り輝き、他と異なる存在感を放っていた。
ミクリ「この島……ここに何かがあるのは間違いない。でも、ただの冒険では済まない気がする。」
ミクリが慎重な口調で言った。
「確かに。この地図は、星海の民が残した最後の試練なのかフノンもしれないですね。」
フノンが地図を見つめながら答えた。
アリスは剣を肩に乗せ、力強く言った。
アリス「さあ!おもしろくなってきた。行こう。ここまで来たんだから。」
新たな航路を進む中で、アリスたちは予想外の危険に遭遇した。
星界の地図に記された航路は、嵐が永遠に渦巻く海域「深海の嵐」を通過しなければならなかった。
アリス「この嵐を抜けないと、目的地にはたどり着けないみたいだね。」
アリスが帆を見上げながら言った。
嵐の中、船は巨大な波に飲み込まれそうになる。
ミクリは魔剣を使って風を操り、船の進行を助けた。
一方、フノンは防御の魔法で船員たちを守り、嵐の雷を受け流した。
アリス「持ちこたえろ!あと少しだよ!」
アリスが叫ぶと同時に、星の果実が再び輝き、嵐の中心に道を作り出した。
彼らは嵐を抜け出し、ようやく静かな海にたどり着いた。
嵐を越えた先に待っていたのは、光に包まれた美しい島だった。
この島は、星海の民が「エターナル・ホライズン」と呼んでいた聖地であり、彼らの文明の始まりと終わりの場所だった。
アリス「ここが……星海の民の最後の遺産か。」
アリスが島の中心にそびえる輝く塔を見上げながら言った。
島全体には静寂が広がり、奇妙な感覚が漂っていた。
塔の入り口に近づくと、三人の前に幻影のような姿が現れる。
それは星海の民の指導者だったと思われる女性だった。
幻影の女性は、優しいが厳格な声で語り始めた。
幻影の女性「ここにたどり着いた者たちよ。あなたたちの選択によって、この星界の力が未来を創り出すのか、それとも完全に封じられるのかが決まる。」
塔の中に進むと、巨大な装置があり、それが星界のエネルギーの源であることが分かった。
しかし、その装置は不安定な状態にあり、放置すれば周囲の世界を崩壊させる可能性があった。
アリスたちには二つの選択が与えられた。
星界の力を解放し、未来のすべてを変革するリスクを取る。
装置を完全に封印し、星界の民の遺産を永遠に閉じ込める。
ミクリ「未来を変える力……それは魅力的だけど、責任も伴う。私たちがその責任を取れるのか?」
アリス「でも、ここまで来て何もしないのも違う。星海の民が遺した希望を無駄にしたくない。」
アリスは強い意志を込めて言った。
フノンは二人を見つめて頷いた。
フノン「私たちは未来を守るためにここにいます。リスクを受け入れ、その力を正しく使いましょう。」
三人の意見は一致した。彼らは星界の装置の力を解放する道を選んだ。
装置が起動すると、島全体が輝き始めた。
空には新たな星々が生まれ、海は穏やかに光を反射していた。
星海の民の幻影が最後に微笑みながら姿を消し、アリスたちに感謝の言葉を告げた。
星海の民の幻影「あなたたちの選択が未来を形作るでしょう。どうか、この力を正しく導いてください。」
装置が放つ光が収まると、塔の頂上に新たな地図が浮かび上がった。
それは、星界の民が願った「希望の道」を示していた。
アリス「これが私たちの次なる冒険の道標か。」
アリスが微笑みながら言った。
島を後にしたアリスたちは、船の上で星空を見上げながら新たな旅に思いを馳せた。
アリスたちの選択によって世界は確かに変わった。
そして、それを正しく導く責任がアリスたちに託された。
ミクリ「そうだね。星海の民の意志を継ぐ者として、私たちが進むべき道を選ぶ。」
輝く星の果実を胸に抱え、アリスたちはまた未知なる海へと漕ぎ出していった。
エターナル・ホライズンを後にしたアリスたちは、星界の装置が指し示した新たな地図を胸に、ロアン王国へと帰還する決意を固めた。
船は静かな海を進み、冒険の終わりを予感させる穏やかな風が彼らを包んでいた。
だが、道中は決して平坦ではなかった。
平穏を破ったのは、突如として現れた黒い帆の船団だった。
星海の民の装置が解放されたことで、その光を目撃した者たちが目標を定めたのだ。
海賊の船長「星の果実を渡せ!その力は我らのものだ!」
アリス「バーカ。渡すわけないじゃん!」
アリスは剣を抜き放った。
ミクリは魔剣で防御の魔法を展開し、船を守りながら攻撃の準備を進めた。
一方、フノンは高い位置から正確な魔術の矢を放ち、敵の動きを封じる。
戦いは激しさを増し、海に雷鳴と閃光が走る。
だが、星の果実が放つ光が彼らに勝機を与えた。
その光を巧みに操り、海賊の船団を撃退することに成功した。
ミクリ「星海の力が、私たちを守ってくれたんだね。」
ミクリが疲れた声で言った。
フノン「でも、これが狙われる理由でもあります。急ぎましょう。」
戦いの後、彼らは偶然たどり着いた小さな無人島で一晩を過ごすことになった。
その島には、古い記録が残された石碑が点在していた。
アリス「これは星海の民の歴史……ここにも彼らの足跡がある。」
アリスが石碑を指差す。
石碑には、星海の民が何世代にもわたって星の果実を守り続けた理由が記されていた。
それは、果実の力が世界のバランスを保つために必要だったからだ。
フノン「つまり、星の果実はただの道具じゃないようです。この世界そのものを守るための存在だったみたいです。」
フノンが読み解きながらつぶやく。
その夜、アリスたちは星空を見上げながら、これまでの冒険を振り返った。
ミクリ「星海の民が託した未来を、私たちがどう形作るのか……その責任が重いね。」
アリス「でも、きっと大丈夫。おもしろいから。」
ついにロアン王国の港が見えたとき、アリスたちは安堵の息をついた。
港には、王宮からの使者や民衆が集まり、彼らの帰還を待ちわびていた。
アリス「戻ったよ!無事に使命を果たしたよ!」
アリスが声を張り上げると、群衆の中から歓声が上がった。
王宮に招かれたアリスたちは、星海の民の遺産と冒険の詳細を王に報告した。
星の果実を手にしたアリスたちの姿は、王国全体に希望を与える象徴となった。
王は星の果実を見つめながら言った。
国王「お前たちが持ち帰ったこの果実は、ただの宝ではない。王国の未来を照らす灯だ。これを正しく扱うために、我々も準備を整えなければならない。」
アリスたちは星海の民が託した意志を王と共有し、その力を濫用するのではなく、慎重に扱うことをお願いした。
アリスたちの帰還を祝う大宴会が開かれ、王国全体が喜びに包まれた。
彼らは宴の中心で、これまでの旅路を語り、民衆と共に未来への希望を共有した。
その夜、アリスたちは再び星空を見上げた。
星の果実が放つ微かな光が、これからの旅路を照らしているようだった。
アリス「さあ、次はどこに行こうか?」
アリスが微笑みながら言うと、ミクリとフノンもそれに応えた。
ミクリ「とりあえず隣の国かな。」
フノン「ロスフルリント共和国ですか?」
アリス「どんな国かな?」
フノン「魔獣の国と言われています。」
ミクリ「あっ!聞いたことある。島のほとんどが魔獣に覆われていて、一部分に要塞が作られて人々が暮らしている要塞都市国家だよね。」
アリス「おもしろそう!そこに行こう!」
こうして、ロアン王国に新たな希望をもたらしたアリスたちは、さらなる冒険の準備を心に秘め、新しい一歩を踏み出そうとしていた。