表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

143/189

143 ロアン王国編 part10

新たに開かれた暗闇への道は、不気味なほど静まり返っていた。


アリスたちが一歩踏み出すごとに、足元の石畳が低く振動し、かすかな光が広がる。


それはまるで遺跡そのものが彼らの行動を監視し、導いているかのようだった。


アリス「ここ、どれだけ深くまで続いているんだろう?」


フノン「遺跡の構造は異常だ。物理法則すら無視している気がします。」


フノンが魔術で壁に触れ、感覚を研ぎ澄ませる。


フノン「魔力が濃すぎて、全体像を掴むのも難しいですね。」


ミクリ「それでも進むしかないよね。」


ミクリが前を睨むように言い放つ。


彼らは通路を進み、やがて広大な空間へと出た。

天井は途方もなく高く、星空のような光が満ちている。

中央には巨大な水晶の柱があり、その中には星々が閉じ込められたかのように輝いていた。


アリス「これが……星海の民の秘宝?」


アリスが呟いた瞬間、水晶の柱が低く振動し、部屋全体が震え始めた。


アリス「なぁ!なに?」


突然、水晶の前に幻影のような存在が現れた。


それは星の光で構成された人型で、まるでこの場所を守護する意志そのもののようだった。


幻影「侵入者よ。この地は星海の民が遺した秘密。真にその価値を理解する者のみが触れることを許される。」


幻影が深く響く声で言う。


アリス「私たちは秘宝が欲しいんじゃない!この地に眠る真実を知りたいだけです!」


幻影はしばらく沈黙した後、


幻影「ならば、その覚悟を見せよ」


と告げ、部屋全体を光で満たした。


光が消えたとき、アリスたちは突然見覚えのある場所に立っていた。


それは彼らがこれまでに訪れた戦場や危機的状況の再現だった。

しかし、目の前には過去に戦った敵たちが現れ、以前よりもさらに強力な姿に変貌して立ち塞がった。


ミクリ「これは……私たちの記憶なのか?」


フノン「いいや、これは試練です。私たちがどれだけ成長したかを試されているようです!」


ミクリが魔剣を抜き放つ。


ミクリ「やるしかない!」


アリスも剣を構えると、試練の敵たちが一斉に襲い掛かってきた。


アリスは聖気を使って剣技を駆使しながら、正面から敵を切り裂いた。


アリスの剣の動きは以前よりも鋭く、敵の攻撃を受け流しつつ、的確に反撃を加える。


ミクリは魔剣を使い、敵の魔力攻撃を吸収しては放出し、敵陣に混乱を与えた。


さらに、ミクリの剣から放たれる炎の一撃は、周囲の敵をまとめて打ち倒す威力を持っていた。


フノンは敵の動きを封じる結界を展開し、仲間の動きをサポートした。


フノンの魔術は複雑な呪文を伴いながらも精密で、敵の弱点を突く攻撃を的確に繰り出した。


アリス「全員で一気に行くよ!」


アリスの掛け声と同時に、三人は息を合わせて最後の一撃を放つ。


爆発的な光が部屋を包み、敵たちは消えていった。


試練を乗り越えたアリスたちの前で、幻影が再び現れた。


幻影「お前たちは認められた。この秘宝の真実を明らかにしよう。」


水晶の柱が輝き、その中から浮かび上がったのは、一冊の古びた本だった。


その本には星海の民の歴史、知識、そして彼らが何故姿を消したのかが記されているという。


アリス「これが彼らの真実……。」


アリスが慎重に本を手に取る。


ミクリが本を見つめながら言った。


ミクリ「さてと、この知識をどう活かすか?」


フノン「そうですね。だけど、この旅で学んだのは、私たちが一緒ならどんな試練も乗り越えられるってことです。」


フノンが微笑んだ。


こうして、アリスたちは星海の民の遺産を手にし、新たな決意を胸に遺跡を後にするのだった。


遺跡を後にしたアリスたちは、手に入れた古代の本を慎重に保管しながら、ロアン王国へと戻る航海に出た。


しかし、彼らの行く手には、星海の民の遺産を狙う謎の勢力が待ち構えていた。


帰路の途中、アリスたちの船の前に巨大な黒い船団が現れた。


その船は古代の技術を利用して作られたもので、通常の船よりも速く、攻撃力も高かった。


船団を率いていたのは、「虚無の手」と名乗る謎の組織で、星海の民の遺産を狙う者たちだった。


虚無の手のリーダー「貴様らが遺産を手にした者たちか。その本を渡してもらおう。」


船団のリーダーが甲板から叫ぶ。


アリス「渡せるわけない!よし!面白い!」


アリスが剣を抜き、構えを取る。


ミクリが冷静に指示を出す。


ミクリ「フノン、敵の船の弱点を探って。アリスは船と本の防衛に集中するんだ。」


フノンは船首に立ち、結界魔法を展開しながら敵の動きを観察。


フノン「あの船、推進力が魔力に依存している!エンジンを止めれば足止めできるはず!」


ミクリ「よし、それなら行きますか!直接乗り込むしかないからね。」


ミクリが魔剣を掲げ、星海の民の技術を駆使した敵船へと跳び込む。


アリスたちは防衛し、ミクリは黒船のエンジンを破壊するための戦いを繰り広げた。


敵は魔法と武器を巧みに使いこなし、容易には崩れない防御を見せたが、フノンの正確な魔術支援とミクリの魔剣技が道を切り開いた。


アリス「ミクリ、ここは任せて!」


アリスが剣を振るい、敵の猛攻を受け止める間に、ミクリがエンジンの中枢を破壊した。


ミクリ「これで終わりだ!」


ミクリが叫ぶと同時に、エンジンが爆発し、黒船が動きを止めた。


虚無の手のリーダー「撤退する!」


虚無の手のリーダーは悔しげに命じ、船団は次第に霧の中へと消えていった。


ロアン王国に帰還したアリスたちは、手に入れた古代の本を王宮の賢者たちに託した。


賢者たちは本を慎重に調査し、星海の民が消えた理由と、遺産の力の代償について解明し始めた。


賢者A「この本には、星海の民が虚空のエネルギーを利用して繁栄したが、その代償として世界に異常をもたらした記録がある。」


賢者B「もしこの力が再び利用されれば、世界が歪む可能性がある。」


アリス「つまり、この力を守るだけでは不十分ってことなんだ。」


アリスが険しい表情を浮かべた。


そのとき、本が淡い光を放ち始め、中から一枚の地図が現れた。


地図には、新たな遺跡があると思われる場所が示されていた。


アリス「なんか。別の遺跡?」


ミクリ「どうやら、まだ旅は終わらないみたいだね。」


ミクリが笑みを浮かべる。


フノン「これを放っておくわけにはいきません。私たちが先に行って調べるしかありませんね!」


フノンが決意を込めて言う。


地図が示すのは、遥か東にある「霧の峡谷」と呼ばれる地。


そこは常に濃い霧に覆われ、星海の民が最後に残した遺跡があると言われている。


しかし、そこに行った者で帰還した者はいないという噂もあった。


アリス「霧の峡谷か……また厄介な場所みたいだね。でも、面白そう。」


アリスが微笑む。


こうして、アリスたちは再び冒険の旅路へと乗り出した。

星海の民の秘密を完全に解き明かすため、そして虚無の手の魔の手から遺産を守るため――新たな試練が、彼らを待ち受けているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ