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142 ロアン王国編 part9


虚空の礁へ向かう航路の最初の難関は、「海流の迷宮」だった。


この海域は、星海の民がかつて魔法によって隠した秘密の道筋とされ、潮の流れが常に変化していた。


フノン「進路がどんどん変わってきます。間違えたら、船が岩礁に引き寄せられてしまいます。」


フノンが空を見上げ、魔術で風の流れを読み取っていた。


ミクリ「星の果実が光を発している……この光が道を示しているのか?」


ミクリが剣を腰に戻し、果実を手に取った。果実の光が海面に反射し、複雑なパターンを描き出している。


フノン「この光、星図の一部ですね!」


フノンが魔術で光を拡大し、その中に隠された進路を見つけ出した。


アリスが舵を握り直し、


アリス「フノンの指示通りに進むぞ!」


と叫ぶと、船員たちは一斉に動き始めた。


だが、迷宮の出口に近づいたとき、海中から魔力を宿した水の精霊が現れた。


ミクリ「邪魔するなら、力づくで通らせてもらう!」


ミクリが魔剣を抜き、剣から放たれる黒い炎が精霊を威嚇した。


フノンは素早く呪文を唱え、精霊を封じる結界を展開した。


フノン「時間を稼ぐから、この間に船を出口へ!」


ミクリの剣とフノンの魔術の連携で精霊を退け、銀翼号は無事に迷宮を抜けた。


迷宮を越えた夜、船は濃霧に包まれた。その霧は魔力を帯びており、船員たちの視界を奪い、不安を増幅させていた。


フノン「霧がただの自然現象じゃないのは明らかだ。魔術的な仕掛けがある。」


フノンが杖を掲げ、霧の中に漂う魔力の流れを探る。


そのとき、霧の中から不気味な影が現れ、船員たちを取り囲んだ。それは半透明の海蛇の形をした魔法生命体だった。


フノン「この船を狙っています。」


フノンが冷静に言い放つと、杖を振り上げて魔術の矢を放った。


ミクリ「そいつの動きが霧に隠れている。俺が引き付ける!」


ミクリは霧の中へ飛び込み、魔剣の力を解放した。その剣から放たれる闇の炎が海蛇の注意を引きつけ、姿を露わにする。


フノンがその隙を逃さず、強力な雷撃の呪文を唱えると、海蛇は光に貫かれ霧とともに消え去った。


霧が晴れると、星の果実が再び輝き、海面に道筋を描き出していた。それは虚空の礁への最後の試練を告げる道だった。


霧を抜けた銀翼号は静かな海域にたどり着いた。


その先には、虚空の礁と呼ばれる巨大な岩山が海面にそびえ立っていた。


アリス「これが虚空の礁……星海の民が守り続けた場所か。」


アリスが剣を握りしめながらつぶやく。


フノンはその光景に目を奪われながら、


フノン「ここに何が眠っているかはわからないけど、魔術的な気配は間違いなく強い。気をつけてください。」


ミクリ「どんな敵が出てこようと、俺たちで突破するだけだ。」


ミクリは剣を肩に担ぎ、不敵な笑みを浮かべた。


こうしてアリスたちは「虚空の礁」と呼ばれる孤島にたどり着いた。


島は周囲を不気味な静寂に包まれ、空には通常の星空ではあり得ないほど無数の星が瞬いていた。


アリス「ただの島じゃないな……空の星が、あんなに近く見えるなんて。」


フノン「ここには、星海の民の秘術が眠っている。その力を手に入れようとする者がいるなら、絶対に阻止しなければならない。」


ミクリは魔剣を片手に島の地面を蹴り、足跡を確認する。


ミクリ「この場所、誰かが先に来てる。踏み荒らされた跡がある。」


島の中心部に進むと、星海の民が築いた巨大な遺跡が現れた。


その壁は、星を象徴する模様や、星海の民が用いた古代文字で覆われていた。


アリス「すごい……これが星海の民の遺産……。」


アリスはその荘厳さに思わず足を止めた。


フノン「これ、ただの模様じゃないです。魔法陣の一部ですね。何かを封じている……あるいは、守っているようです。」


フノンが壁の模様に手をかざし、魔力の流れを感じ取った。


遺跡の中央には円形の台座があり、その中央には星の果実がすっぽりと収まりそうな窪みがあった。


ミクリ「星の果実が鍵になっているのは間違いない。だが、罠が仕掛けられている可能性も高いな。」


ミクリが魔剣を片手に周囲を警戒した。


アリスは果実を手に取りながら、台座を見つめる。


アリス「ここまで来たのに、立ち止まるわけにはいかない。」


アリスが星の果実を台座にはめ込むと、遺跡全体が震え始めた。


壁に刻まれた文字が光り、天井に描かれた星空が動き出したかのように見えた。


その瞬間、台座の周囲に霧が立ち込め、遺跡内部に何かが現れた。


フノン「これは……守護者か!」


霧の中から現れたのは、星の光を纏う巨大な騎士のような存在だった。


その体は星々の欠片でできているように輝き、周囲に魔力の波動を放っていた。


ミクリ「力ずくで通らせてもらうしかないみたいだな。」


ミクリが魔剣を構え、戦闘態勢に入った。


騎士は星の光を刃のように操り、強力な攻撃を繰り出してきた。


フノン「正面から戦うだけじゃ武が悪いので、弱点を探しましょう!」


フノンが冷静に魔術を発動しながら叫ぶ。


アリスは戦闘の中で騎士の動きを観察し、胸元のコアが一瞬輝くのを見逃さなかった。


アリス「あそこだ!胸のコアが弱点!」


ミクリが騎士の足元を狙い、剣で動きを封じる間に、アリスはその背後を取り、剣をコアに突き立てた。


アリス「これで終わり!」


アリスの一撃が決まると、騎士は光の粒となって消えていった。


守護者を倒した後、遺跡の奥に隠されていた部屋が開いた。


その中には、星海の民が残した書物や道具、そして巨大な星の結晶が安置されていた。


フノン「これが……星海の民の秘術の真髄?」


フノンは結晶に触れ、目を見開いた。


ミクリ「いや、まだ終わりじゃないみたい。」


ミクリが結晶の奥を指差した。その先にはさらに深い地下への道が続いていた。


アリス「この結晶はほんの一部……本当の秘密は、もっと奥に隠されているんだわ。」


アリスは剣を握り直し、さらに先へ進む決意を固めた。


こうしてアリスたちは遺跡の真の秘密を求め、さらに深い場所へと足を踏み入れるのだった。


アリス「どうやら、本当の試練はこれからのようだね。」


螺旋階段を進むと、空気が一変した。


周囲の壁には、星海の民が描いたと思われる巨大な壁画が並んでいた。


そこには、星空を渡る船、異形の怪物との戦い、そして無限に続く空間を示すような模様が描かれていた。


フノン「これ……ただの壁画じゃない。何かの手がかりになりそうだ。」


フノンが魔術で壁画を調べながら言う。


フノン「文字と絵が一体になっている。読み解けば、この遺跡が何を守っているのか分かるかもしれない。」


ミクリ「急いだ方がいい。遺跡全体が動いている。長居すれば、出口が閉じるかもしれない。」


ミクリが階段を先へと進むよう促した。


階段の終わりにたどり着いた彼らは、円形の部屋に入った。


天井は星空そのもののように輝き、部屋の中央には再び台座があり、星の果実が浮かび上がる映像のようなものを映し出していた。


アリス「また星の果実が出てきた。でも、これは実物じゃなくて……投影?」


アリスが台座を覗き込む。


その瞬間、部屋の壁が回転し始め、無数の光の矢が部屋を飛び交い始めた。


フノン「罠だ!」


フノンが魔法障壁を展開し、光の矢を防いだ。


フノン「どうやらこの部屋、仕掛けを解かないと脱出できない仕組みのようです。」


ミクリ「時間を稼ぐ。フノン、謎を解け。アリス、俺と一緒に障壁を維持する!」


ミクリが魔剣を振り、次々と飛んでくる光の矢を弾いた。


フノンは冷静に台座を観察し、浮かび上がる文字や模様の意味を読み解こうとする。


フノン「星座……星海の民は星の動きを知り尽くしていた……この果実が示すのは、正しい星の配置……!」


壁に描かれた星座を正しい形に組み直すと、部屋全体が再び光で満たされた。光の矢が消え、中央の台座が静かに沈み込む。


台座が沈むと同時に、新たな道が開かれた。その先は完全な暗闇で、どこに続いているのか全く見当がつかなかった。


ミクリ「まだ終わらないみたいだな……。」


ミクリが剣を肩に担ぎ、暗闇を見つめた。


アリス「でも、確実に近づいている。この先に何があるのか、確かめなくちゃ。」


アリスが前を向き、剣を握り直す。


フノンは再び周囲を警戒しつつ、杖を手に暗闇の中に光を灯した。


フノン「遺跡が目覚めた以上、ここからが本当の試練ですよ。準備はいいですか?」


アリス「もちろん。」


こうして、星海の民が遺した秘宝と真実を求め、アリスたちはさらなる未知の領域へと足を踏み入れるのだった。



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