138 ロアン王国編 part5
アリスたちは協力して魔獣を引き付けながら、巧みに攻撃をかわした。
アリスは剣を構え、フノンは正確な攻撃魔法で魔獣の目を狙い、ミクリは洞窟の壁を利用して立体攻撃を行なった。
激しい戦いの末、ついにアリスが決定的な一撃を放ち、海王魚を倒した。
海王魚が倒れると、洞窟内は再び静寂を取り戻した。
水たまりの底には、虹色に輝く「深海の貝殻」が眠っていた。
アリスがそれを慎重に拾い上げると、手にした瞬間、ほんのりとした暖かさが伝わってきた。
アリス「これが……深海の貝殻か。」
アリスが感慨深げに言う。
フノンが微笑みながら答えた。
フノン「確かにこの素材で作られる武器はきっと、ただの武器じゃないですね。」
彼らは慎重に崖を登り直し、無事に地上へ戻った。
風に乗って虹色の貝殻が光を反射していた。
最後の素材「海霧の糸」は、夜の海辺に広がる霧の中で織られる、幻の蜘蛛の糸だと言われていた。
アリスたちは、霧が立ち込めるという海辺の森に足を踏み入れた。
月の光が薄雲を通して地上を照らす中、森は静寂に包まれていたが、霧の中に潜む未知の危険が彼らを警戒させた。
アリス「海霧の糸か。どんなものなんだろう?楽しみだね。」
フノン「霧が深くなる場所でしか見つけられないらしいですよ。普通の蜘蛛の糸と違って、月光を受けて微かに光るんようです。」
ミクリ「ただでさえ見つけにくいのに、森に霧が立ち込めてるから、迷わないように気をつけないとな。」
ミクリが足元の道を慎重に確認しながら進んだ。
霧は彼らの周囲をじわじわと覆い、視界を奪っていった。
森の木々は影のように揺れ、耳を澄ませば、微かな風音と水滴が落ちる音が聞こえるだけだった。
ミクリ「この霧、まるで生きてるみたいだ。」
突然、霧の奥から怪しい音が響いた。
低いうなり声と共に、霧の中から現れたのは、霧をまとった狼の群れだった。
その目は赤く輝き、明らかにこの森の守護者として彼らを試そうとしているかのようだった。
アリス「迎え撃つぞ!」
アリスは剣を構え、フノンとミクリもそれぞれ武器を手にした。
狼たちは鋭い動きで襲いかかってきたが、ミクリが閃光攻撃で敵を引き離し、フノンが仕掛けた植物のツルを出す魔法トラップで狼たちの足を絡めて進行を鈍らせた。
そして、アリスの会心の一撃で群れのリーダーを打ち倒すと、他の狼たちは霧の中へと消えていった。
狼たちが去った後、霧の奥で微かに光るものが見えた。
近づくと、それは無数の蜘蛛の巣だった。
巣はまるで月の光を反射するように虹色に輝いており、その糸こそが「海霧の糸」だった。
フノン「これが海霧の糸……」
フノンが感嘆の声を漏らしながら、魔法を使って慎重に糸を絡め取った。
ミクリ「傷つけないように気をつけてね。」
全員の協力で無事に糸を集めることに成功した頃、霧が静かに晴れていき、森には月光が優しく降り注いでいた。
素材をすべて集め終えたアリスたちは、レーナの工房に戻った。
工房の中央には大きな鍛冶台があり、レーナが準備を進めていた。
アリス「これが全ての素材です。よろしくお願いします。」
アリスが素材を差し出した。
レーナ「いや、これはあなたたちが作り上げるのよ。」
レーナが真剣な眼差しで答えた。
アリス「えっ、私たちが?」
アリスが驚いて聞き返す。
レーナ「素材は完璧だわ。でも、この武器を本当に完成させるのは、持ち主であるあなたたちの絆と信念。それがなければ、ただの飾り物にしかならないのよ。自分で子供を生み出すことに意義があるの。子供は親のためなら、全力で頑張るでしょ。もちろんやり方は教えるし、手伝うわ。」
彼女の言葉に納得したアリスたちは、それぞれの役割を果たし始めた。
フノンは「海霧の糸」をしなやかに張り巡らせ、ミクリは「深海の貝殻」と「月影珊瑚」を細部にまで丁寧に配置した。
そしてアリスは剣の刃を研ぎ澄まし、最後に自らの聖なる気を剣に込めた。
ついに完成した剣は、青白く輝き、まるで海そのものの力を宿しているかのようだった。
その刃は柔らかな光を放ち、持つ者に勇気と決意を与えるような感覚を与えた。
アリス「これが……俺たちの力の結晶だね。」
アリスが剣を手に取り、その感触を確かめた。
レーナ「強さだけじゃないわ。この剣には、あなたたちが乗り越えた試練と思いが込められている。それが本当の力よ。」
レーナが満足げに微笑んだ。
アリス「ありがとう、レーナ。この剣でどんな困難でも乗り越えてみせる!」
アリスの目には新たな冒険への決意が輝いていた。
こうしてアリスたちは「珊瑚の剣」を手に入れ、未来へと進むための力を得た。
ロアン王国の「夜市」は、日が沈むと共に活気づく市場だ。さまざまな商人や旅人が集い、珍しい品々や異国の特産物が並ぶ。
しかし、その賑やかな表の顔の裏に、もう一つの顔が隠れているという噂があった。
アリス「闇市場……その正体を暴けば、王国の密輸問題を解決できるかもしれない。」
実はアリスたちは、ギルドから闇市場の調査依頼を受けていた。
ミクリ「でも、正面から乗り込んだらすぐに追い出されるよ。ここは変装して潜入するしかないね。」
ミクリが笑みを浮かべながら道具袋を漁り始めた。
夜市の片隅で、アリスたちはそれぞれ別の人物になりきる準備を整えた。
アリスは無口な武器商人、フノンは得体の知れない放浪者、ミクリは熱心な収集家として装った。
アリス「いやー。こんなローテクの潜入調査は久しぶり。」
ミクリ「アリスは魔力が使えないからね。」
アリス「最近。ほんと魔力の有り難みを感じております。」
夜市を進むと、次第に人々の会話がひそひそ声になり、路地裏に進むと、黒い布で覆われた隠し通路が見つかった。
その先に広がっていたのは、どこか不気味な雰囲気の市場だった。
灯りは薄暗く、あちらこちらで怪しげな商談が行われていた。魔獣の牙、古代の石板、盗まれた宝飾品……見たこともないような品々が並び、異様な熱気が漂っている。
奇妙な商人「お客さん、珍しいものがお好きかな?」
アリスたちが足を止めた店の奥から、派手な衣装をまとった男が笑いながら出てきた。
その背後には不気味な目をした部下が控えている。
奇妙な商人「この島でしか手に入らない貴重品ばかりだよ。たとえば、失われた古代の artefact なんて興味ないかい?」
アリスたちは警戒しながらも会話を続け、男から次第に情報を引き出した。
どうやら、この市場の目玉となる品物は、夜遅くに行われる秘密の競りで取り扱われるらしい。
そして、その中にはロアン王国の遺産とされる artefact が含まれているという。
深夜、競り会場に通されると、そこには完全に別世界が広がっていた。
遮光布で覆われた空間に、影のような商人やバイヤーが集まり、それぞれの顔は仮面やフードで隠されていた。
競りの開始を告げる鐘が鳴り響き、場内に静寂が訪れる。
司会者「最初の品は、古代の artefact『月の涙』だ。」
司会者が声を上げた瞬間、ざわめきが起こる。
artefact は透明な結晶で、内部に月光が閉じ込められているかのように光っていた。