135 ロアン王国編 part2
フノン「まず、ロアン王国の外れの村々を訪れ、飢饉や貧困の現状を記録し、王城に提出するための証拠を集めましょう。
次に、王国の中で民衆の声を届ける力を持つ人物、賢者や有力な商人を味方につけるのです。
最後に、王城の祭典に合わせて、貧困の実態を示す劇や演説を行い、人々の心を動かすというのはいかがでしょうか?」
ミクリ「でも、リディスたち盗賊団がこの計画に加わるのはまずいんじゃない?」
ミクリが不安そうに尋ねると、アリスは笑みを浮かべた。
アリス「だからこそ、僕たちが盾になるんだ。王城に行って、まずは直接王に話をつけたらいい。」
アリスたちは盗賊団と共に、ロアン王国の外れに点在する村々を訪れた。
村の人々は最初、盗賊団の姿を見て恐れを抱いたが、アリスたちの説得により、次第に協力的になった。
ある村の老婆が涙ながらに語った。
老婆「私たちは何度も王城に助けを求めました。でも、答えはいつも『余裕がない』の一点張り……」
フノンは、飢えた子供たちに食料を分け与えながら、村人たちの声を丁寧に記録していった。
その中には、干ばつで荒れ果てた農地や、崩壊しかけた家々の写真も含まれていた。
ロアン王国の祭典の日、アリスたちはリディスと一部の盗賊団員を伴い、王城へと向かった。
彼らが中央広場に到着すると、賢王エルンスト九世が玉座から群衆を見下ろしていた。
アリス「陛下、お願いがございます!」
アリスが叫ぶと、広場の人々がざわめいた。
近衛隊長「お前たちは何者だ?」
近衛隊長が剣を抜こうとすると。
アリス「私は、シエステーゼ王国の第一王女 シェラール王女です。」
エルンスト九世が手を上げて近衛隊長を静止した。
エルンスト九世「シエステーゼ王国のシェラール王女であるか。それなら、話を聞こう。」
アリスたちは集めた証拠を広場で公開し、貧困地域の実態を説明した。
さらに、リディスが仮面を外し、王の前に跪いて言葉を紡いだ。
リディス「私たちは盗賊団ではなく、絶望した民の代弁者です。この国を救うために動いてほしいのです。」
その場でフノンとミクリが即興で劇を演じた。
劇の内容は、飢えた子供が希望を求めて月影の森を彷徨う物語だった。
その劇は多くの人々の心を打ち、広場の民衆たちは次第にアリスたちに賛同の声を上げていった。
エルンスト九世は深い沈黙の後、こう告げた。
エルンスト九世「お前たちの言葉には真実がある。そして、私が気づいていなかった国の闇がそこにある。改革を始めよう。ただし、盗賊団の罪も償わねばならない。」
アリスはリディスに目を向けた。
アリス「リディス、どうする?」
リディスは静かに頷いた。
リディス「その覚悟はある。ただし、私たちが目指した未来が現実になるなら。」
王城からの命令で、農地への水路が拡張され、物資が不足している村々へ支援が送られることとなった。
リディスたちは刑罰として労働に従事したが、それは村人たちの助けとなるもので、徐々に彼らの信頼を得ていった。
アリスたちは新たな冒険に旅立つ前、リディスと固い握手を交わす。
リディス「君たちのおかげで、ロアンの未来は少し明るくなった。」
朝日が昇り、アリスたちは町の広場で少年と別れを告げる。少年は感謝の言葉と共に、一つの小さな果物を手渡した。
それは「ロアンの涙」と呼ばれる、困難を乗り越えた者に幸運をもたらすと言われる果実だった。
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<ロアン王国の王城>
ロアン王国の中心部にそびえる王城「星辰の宮殿」。
その宝物庫に保管されていた伝説の秘宝「月光の鏡」が、何者かに盗まれる事件が発生した。
「月光の鏡」は、月の光を使って未来の一片を映し出すとされ、王国の安泰を占うために使われていたが、今ではその力は封じられていると言われている。
それでも、王家にとって象徴的な存在だった。
エルンスト九世は大臣たちを集めると、事態の深刻さを語った。
エルンスト九世「月光の鏡が盗まれた。このままでは王国の権威が揺らぐ。我々が持つ唯一の手がかりは、犯人が残したこの奇妙な暗号文だ。」
大臣たちは解読に頭を悩ませる中、国王は思い切ってアリスたちを呼び寄せた。
エルンスト九世「君たちは旅の途中でこの国に来たと聞く。ぜひこの暗号を解き、秘宝を取り戻してほしい。」
暗号は短い詩のような文章だった。
アリス「星は道を示し、月は鍵を隠す。夜明けの光を避け、古の扉を目指せ。」
ミクリ「星、月、夜明けの光……これは一体?」
とミクリが呟くと、フノンが答えた。
フノン「もしかして、城内の天文台に関係があるのかも。あそこは星を観測するための場所だから。」
一行は天文台に向かい、観測室の中で古い星図を発見した。その星図には「北極星」が特別な印で示されていた。
そして、星図の裏側には小さな地図が隠されていた。
地図には島の北部にある「星の迷宮」と記されていた。
アリス「これは遺跡への道案内だ!」
アリスは目を輝かせた。
島の北部にある「星の迷宮」は、古代ロアン文明が築いたと言われる遺跡で、月と星に関する神秘的な仕掛けが数多く存在する場所だった。
迷宮の入り口には巨大な扉があり、その前には新たな暗号が刻まれていた。
アリス「月が満ちる時、鍵はその影に隠れる。」
フノンが考え込みながら言った。
フノン「これはたぶん、扉を開けるために月の光を使うってことだよね。でも、月が影を作るのってどうやるんだろう?」
遺跡内には天窓があり、満月の光が差し込む仕掛けがあった。
アリスたちは月光を反射させる鏡を使い、光の道を作ることに成功。扉がゆっくりと開き、迷宮の内部が姿を現した。
アリスたちが「星の迷宮」に足を踏み入れると、空気はひんやりと冷たく、どこからか響く水滴の音が不気味な静寂をさらに際立たせていた。
迷宮の天井には星空を模した装飾が施され、満ち欠けする月の彫刻が至る所に刻まれている。
彼らが進むにつれ、迷宮は月の周期を象徴する3つの部屋へと導いていった。
一つ目の部屋に入る。
ミクリ「ここは真っ暗だ」
新月の部屋に入ると、完全な暗闇が彼らを包み込んだ。
手を伸ばしても指先すら見えず、目を開けているのか閉じているのかも分からないほどだった。
アリス「ゆっくり進むしかない。」
アリスは剣を手にし、慎重に一歩を踏み出す。
だが、その瞬間、床が不安定に揺れ、どこかに落とし穴があることを察知した。
フノン「音を聞いてみよう。足音や風の流れを頼りに、安全な道を見つけられるかもしれない。」
全員が足を止めると、フノンは迷宮の壁に耳を当て、小さな音に集中した。
フノン「右側の壁沿いに進んでみましょう。風が微かに流れてるようです。」
彼らは慎重に歩を進め、途中で何度か仕掛けられたトラップに遭遇しながらも、フノンの正確な聴覚と指示によって無事に部屋の出口へとたどり着いた。
ミクリ「闇に潜む罠も怖かったよ。」