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130 聖なる気の修行編 part5

アリスたちは最後の試練、「揺るぎなき大地の声を聞け」を解き明かすため、地図が示す古代遺跡へ向かった。


その地は「石の眠る地」と呼ばれ、長い年月を経て荒れ果てた岩山だった。


空には重い雲が垂れこめ、風が止まり、静寂が広がっていた。周囲には無数の巨石が転がり、その中には不思議な模様が刻まれたものもあった。


アリス「この場所はただ古代の遺跡というだけじゃないね。」


アリスは岩肌を見つめながら言った。

フノンが頷きながら続けた。


フノン「伝説では、この地には眠れる土の巨人が封印されているそうです。そして、彼は真の試練を乗り越えた者だけに力を授けるようです。」


ミクリが地面に耳を当て、微かに聞こえる低い音に顔を上げた。


ミクリ「確かに大地が生きているみたいだ。何かが眠っている気配がする。」


アリスたちは遺跡の中心部にたどり着いた。

そこには円形の広場が広がり、巨大な石碑が中央にそびえていた。


石碑の表面には複雑な文様とともに、古代語が刻まれていた。アリスは慎重にその文を読み上げた。


アリス「『大地に触れ、眠る者に意志を示せ。大地は静けさの中で声を響かせ、試練を始める。』」


その言葉に従い、アリスたちは地面に手を触れた。

すると、大地全体が震え、重々しい音が響き渡った。

地面が割れるようにして巨大な石の像が現れ、その中から土の巨人が姿を現した。


巨人は岩のような体躯を持ち、全身が大地そのものと繋がっているかのようだった。彼は目を開き、低く力強い声で言った。


巨人「我が眠りを妨げる者よ、お前たちの信念を示せ。この大地を揺るがすことなく、真実の意志を証明せよ。」


巨人が手を振り上げると、地面から無数の石柱が突き出し、広場全体を覆う迷宮のような地形を作り出した。その中で、巨人はゆっくりと動き始め、彼らに試練を与えた。


最初に巨人が放った試練は、地響きの衝撃だった。足を踏みしめるたびに地面が激しく揺れ、足元が崩れ落ちていく。


m「立ち止まっていたら飲み込まれる!動くんだ!」


ミクリが叫び、一行は地響きの中で立ち回った。


アリスは巨人の動きを冷静に観察しながら呟いた。


アリス「彼は力を試しているわけじゃない。この揺れの中で私たちが何を選ぶかを見ているの。」


その言葉に応じるように、彼女は足を止め、地面に手を触れた。揺れる大地に身を委ねるようにして、彼女は静かに目を閉じた。


ミクリ「アリス、何をしているんだ!?」


ミクリが驚いて振り返ったが、アリスは静かに答えた。


アリス「大地の声を聞くんだ。私たちの恐れや焦りは、揺るぎない信念を示す妨げになる。」


アリスが静けさを保つと、大地の揺れが次第に和らいだ。巨人が興味深げに彼女を見つめる中、ミクリとフノンもアリスに倣って地面に手をつけ、心を落ち着けた。


すると、石柱がゆっくりと沈み、広場全体が元の平坦な形状に戻った。巨人は再び動きを止め、大地の震えが完全に消えた。


巨人「お前たちは揺るぎない信念を持って試練を超えた。力は破壊だけでなく、調和をも生むということを知ったようだな。」


巨人は大地から輝く土の宝珠を取り出し、それをアリスに差し出した。


巨人「これが大地の力だ。お前たちが持つべき信念を忘れなければ、この力は必ずお前たちの助けとなるだろう。」


アリスは深く頭を下げ、宝珠を受け取った。その輝きは大地そのものの強さと穏やかさを象徴しているようだった。


巨人が再び眠りにつくと、静寂が広場を包み込んだ。アリスたちは手に入れた宝珠を胸に抱きながら、最後の試練を超えた達成感に満たされた。


アリス「これで四つの試練を乗り越えたぞ。エリュシオンの泉への道が開ける。」


アリスが力強く言うと、フノンとミクリも微笑みながら頷いた。


次なる目的地、エリュシオンの泉を目指して、一行は新たな決意を胸に秘境を後にした。


断崖を抜けた後、彼らが足を踏み入れたのは「幻惑の砂原」と呼ばれる場所だった。この砂原は、進む者の心を惑わせる幻影を見せると言い伝えられている。地平線がどこまでも続くかのように見え、道標になるものは何もない。


突然、アリスの目の前に、かつての故郷の村の風景が広がった。穏やかで平和だった日々、そしてその後の破滅をもたらした戦争の記憶が生々しく蘇る。


アリス「こんなはずはない……これは幻だ……!」


アリスは自らに言い聞かせるが、村人たちが悲しげな顔で彼女を見つめる姿は、あまりにも現実的だった。


仲間たちもそれぞれに異なる幻影を見せられていた。フノンは幼き日の師匠、ミクリは亡き戦友の姿を目の前にし、足を止めてしまう。


しかし、アリスはすぐに意識を取り戻し、冷たい声で叫んだ。


アリス「これは試練だ!進むべき道を見失うな!」


彼女の声に応えるように、ミクリとフノンも幻を振り払った。そして、アリスが持つ「氷晶の紋章」が淡い光を放ち、砂原に漂う幻惑の魔力を打ち消し始めた。


幻影を振り払った直後、突如として猛烈な砂嵐が巻き起こった。視界が完全に奪われ、砂が肌を切るように吹き付ける。


ミクリ「これ以上進むのは無理だよ!」


ミクリが叫んだが、アリスは足を止めずに進んだ。


アリス「ここで止まったら全てが終わる。前へ進むしかない!」


フノンはアリスを援護するため、風を操る魔法を唱えた。

フノンが作り出した防御の風の渦が一時的に砂嵐を弱め、道を作り出す。しかし、砂嵐の力は凄まじく、魔力を削り取るように容赦なく襲いかかってくる。


アリスは最後の力を振り絞り、凍てつく氷の結界を作り出した。結界の中で、彼らは嵐が過ぎ去るのを待つことができた。


砂嵐が収まった後、一行の目の前に突然、巨大な鏡のように光る扉が現れた。その扉は、まるで人の心を映し出すかのように微妙に揺らめき、彼らの姿を映している。


扉の中央には古い文字が刻まれていた。


フノン「汝の心の真実を映し出し、試練を越えし者のみ、先へ進むことを許される。」


フノンが恐る恐る問いかけた。


フノン「これは……私たちの心を試す扉?」


アリスは真剣な表情で扉を見つめ、力強くうなずいた。


アリス「覚悟を決める時が来た。このまま進むよ、みんな。」


扉が静かに開き始めると、彼らはゆっくりとその中へ足を踏み入れた。その先には、無数の鏡で構成された不気味な迷宮が広がっていた――光と影が複雑に交錯し、進むべき道を惑わせる「鏡の迷宮」だった。


彼らは、さらなる試練が待つ迷宮の奥へと進み始める。そこに何が待つのかは、まだ誰にもわからないまま。


アリスたちは慎重に進むが、足を踏み出すたびに景色が変わる。鏡のような地面が周囲を映し、錯覚を引き起こして方向感覚を狂わせていく。さらに、鏡面に映る自分たちの姿が、時折まるで意志を持っているかのように動き出した。


フノン「これが……鏡の迷宮なのか?」


フノンが驚きの声を上げると、アリスは静かに頷いた。


鏡の迷宮は、古代から「真実を映し出す試練の地」として知られていた。ここでは旅人の内面が映し出され、その心の弱さや恐れが具現化されるという。


アリスたちもまた、この迷宮でそれぞれの試練に直面することとなる。


進むほどに鏡の中の映像が歪み、やがてそれぞれの「影」が姿を現した。アリスの前には、冷たく嘲笑うもう一人の自分が現れる。


もう1人の自分「自分が世界を救うだって?笑わせる。お前がしているのは、ただの自己満足に過ぎない!」


影はアリスに語りかけ、その心の中に潜む疑念を掻き立てた。しかし、アリスはその声に耳を貸さなかった。


アリス「確かに私にも迷いはある。だけど、それでも前に進む。それが私の選んだ道だから!」


アリスが剣を振りかざすと、影は砕け散り、鏡面に映る世界が元の静寂を取り戻した。


幾つもの試練を経て、アリスはついにエリュシオンの泉に到達した。


そこは青々とした草原に囲まれ、泉の水面は輝く光で満ちていた。泉の中央には一本の巨大な聖樹がそびえ立ち、その根元から清らかな水が湧き出ている。


その向こう側に目を疑う光景をアリスたちは見てしまった。


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