13 王宮回想録 エピソード0 part 1 転生(改訂)
アリス
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馬車は王都へと続く街道を、ゆるやかに揺れながら進んでいた。
アリスは窓の外に流れる景色をぼんやりと眺めながら、ふと遠い記憶に浸っていた。
ディネがアリスの肩の少し上に浮かび、小さく声をかける。
「どうしたの、アリス? 急に黙り込んじゃって」
アリスは小さく首を振った。
「ううん……ただ、昔のことを思い出してただけ」
隣に座るノアール王女が、優しく微笑みながら覗き込む。
「アリス、疲れた?」
「大丈夫!」
アリスは明るく笑って誤魔化した。
「王都が近づいてきたなって思ってただけだよ」
ミクリは前を向いたまま、静かに言った。
「もう少しで到着する。気を引き締めていこう」
アリスは頷きながら、心の中で前世の記憶をたどっていた。
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前世の柊アリスは、中学三年生の明るく活発な少女だった。
高校に入ったら友達と遊びまくって、青春を満喫するはずだったのに——。
ある日を境に、クラスメイトからのいじめが始まった。
無視、水をかけられる、私物を隠される。
日を追うごとにエスカレートし、ついに学校に行けなくなった。
家に引きこもる毎日。
唯一の楽しみは、ネットゲームだった。
そこで出会った仲間たちとパーティを組み、剣士「アリス」として全国的に有名になっていった。
ある夜、いつものように長時間プレイした後、突然意識を失った。
目が覚めると、そこは見知らぬ豪華な部屋だった。
天蓋付きの大きなベッド、シルクの寝間着、窓の外には手入れの行き届いた広大な庭と豪華な馬車。
鏡に映ったのは、金色の長い髪をした見知らぬ美少女。
「……誰? これが……私?」
どうやらシエステーゼ王国の第一王女、シェラール・アリスに転生したらしい。
王女としての生活は、表向きは華やかだった。
シェラール王女
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しかしアリスはすぐに決意した。
「前世みたいに、誰かに守られるだけの人生は嫌だ。
この世界では、自分で強くなって、戦える王女になる!」
国王に直談判し、近衛兵団大隊長から直接剣術の指導を受けることになった。
大隊長が剣を構えて言った。
「さあ、どこからでも打ち込んでみなさい」
アリスは勢いよく振り下ろした。
「えいっ!」
初めはことごとく跳ね返されたが、驚異的な成長速度を見せた。
大隊長が目を細めて微笑む。
「王女様は本当に上達が早い……。大剣と小剣、両方を極めるのが良いでしょう」
こうしてアリスは、大剣による華麗な舞のような戦闘術と、小剣による素早い暗殺術の二刀流を習得していった。
礼儀作法やお茶会といった王女の義務をこなしながら、毎日欠かさず剣を振り続けた。
魔法については「魔力は少ない」と言われたが、魔力を剣に込める技だけは極め、戦闘で使えるレベルまで到達した。
大隊長が感心した様子で言った。
「王女様……もう私と互角に打ち合えるまでになりました。本当に素晴らしい」
アリスは汗を拭いながら、満面の笑みで答えた。
「ありがとうございます! これで実戦でも通用しますか?」
大隊長が胸を張る。
「もちろんです。私が保証します」
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馬車の揺れで現実に引き戻されたアリスは、隣に座るミクリとノアール王女をチラリと見た。
(今は冒険者アリスとして生きてるけど……いつか、ちゃんと王女としての責任も果たさないとね)
ノアールが心配そうに声をかける。
「どうしたの? 急に黙り込んで」
アリスは明るく笑って誤魔化した。
「なんでもない。ただ……王都が近づいてきたなって思って」
馬車は王都の城壁がはっきり見えるところまで来ていた。
ディネが肩の上で小さく囁く。
「王女様、気負いすぎないでね」
ウィプスが元気よく声を弾ませる。
「僕たちがついてるよ!」
サラが笑いながら続ける。
「そうだぜ! いつでも派手にいけるからな!」
ジェイドが静かに、淡々とした口調で。
「……無理はしないで」
ノームが低く、どっしりとした声で。
「焦るな」
エントが優しく微笑むような声で。
「みんなで支えるからね」
アリスは6大精霊たちの声を心に感じながら、窓の外に広がる王都の景色を見つめた。
(ここから、また新しい冒険が始まる……!)
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