127 聖なる気の修行編 part2
映像が消えると、次のページには、四つの試練の具体的な手がかりが記されていた。それは詩のような謎めいた言葉だった。
火の試練
「燃え尽きることなく燃え続ける炎。
その源は、砂の中に隠される。」
これは、灼熱の砂漠に存在する伝説の「永遠の火」を指していると推測された。
風の試練
「音もなく吹き荒れる風の中、
静けさを見出せ。」
アリスはこれが、嵐の山脈に隠された風の精霊の眠る地を示していると理解した。
水の試練
「滴り落ちる水が岩を穿つ。
その流れを遡れ。」
この試練は、滝の底に隠された神秘的な洞窟に関するものだと思われた。
土の試練
「揺るぎなき大地の声を聞け。
石の眠る地で目覚めを待つ者あり。」
これは、古代の遺跡がある岩山に住む「土の巨人」の存在を示唆しているようだった。
ヴォルデンは書物を閉じ、アリスにそれを渡した。
ヴォルデン「これがエリュシオンの泉へと至る道だ。ただし、試練を超えられなければ、たどり着くことは叶わない。だが、お前の決意が本物なら、道は開かれるだろう。」
アリスは書物を受け取り、その重みを感じながら深く息を吸った。
アリス「ありがとう、ヴォルデン。私は必ずこの試練を乗り越え、泉の力を手にする。」
アリスの決意は揺るぎなかった。
ヴォルデン「エリュシオンの泉は、神の領域と近しい場所にあるため、選ばれし者以外にはたどり着けない。道中、己の信念と力が試されるだろう。」
アリスは力強くうなずいた。
アリス「ああ。それでも私は必ずたどり着いてみせる。」
ヴォルデンは再び微笑み、杖を軽く掲げると、アリスの手のひらに小さな輝く石を置いた。
ヴォルデン「これは星の石。これを持っていれば、泉への道を示す星明かりが見えるだろう。ただし、油断するな。その道は危険に満ちている。」
アリスたちは感謝の言葉を述べ、塔を後にした。
霧深い森を抜ける頃、彼女の心には新たな希望と決意が芽生えていた。エリュシオンの泉が、自分の力を高める鍵であると確信し、旅の先に待つ試練を受け入れる覚悟を固めたのだった。
町へ帰って、星の石を調べたが、泉への道を示す星明かりは見えなかった。
アリス「この星の石はどうやって使うのだろう?
くそー! ちゃんと聞けば良かった。」
フノン「持っていれば、と言っていたから、まだその時ではないのかもしれませんね。」
ミクリ「とりあえず他にも情報がないか探してみよう!」
アリスたちは町中の居酒屋で、多くの旅人に、エリュシオンの泉の情報を聞いて回った。
手分けして聞きまくったけど、何も情報は得られなかった。
唯一、1人の旅の老人から王国の図書館に行くことを提案された。
旅の老人「そういえば、この王国の図書館は世界でも屈指の蔵書数を有している。研究論文、文献、古文書、碑文など数多くの書がある。きっとその中に古代史の蔵書もあるかもしれないな。」
アリス「なるほど、レンブラン王立図書館か。」
フノン「そうか。その手がありましたね。」
アリスたちはエリュシオンの泉にまつわる手がかりを求め、さっそくまずはレンブラン王国の王立図書館を訪れた。
この図書館には、古代の写本や禁書が厳重に保管されていることで知られており、アリスはそこで何か役立つ情報を得られると感じていた。
受付の図書館員の話しでは、図書館の奥深く、分厚い鉄扉で封印された「禁書室」があるらしい。
そこに足を踏み入れるには、王の直筆の許可証と、図書館を守護する司書長からの承認が必要だった。
アリスは司書長の老人リカンドに自分の目的を伝え、懇願したが、彼は厳しい顔で言った。
リカンド「禁書室は危険な知識の宝庫。ここで得られる情報は多大な力をもたらすかもしれないが、同時に災厄を招く恐れもある。あなたが本当にこれを読むことを望むのであれば、国王の許可証と図書館の司書長の承認が必要です。」
アリス「わかりました。国王にお願いしてみよう。そうだ。そういえば王女だった。クリスティーナに相談してみよう。」
アリスは、レンブラン王国の第一王女 クリスティーナにお願いして、国王の許可証と国王から図書館の司書長への承認要請を取り付けた。
リカンドはすぐに国王の許可証と禁書庫に入ることへの承認要請を取って来たアリスを不思議そうに見ていた。
リカンド「どうしてこんなにも早く国王の許可証が取れるのだろうか?通常なら、2、3週間はかかるのに。いったいこの少女は何者なのだろうか?国王が直々に禁書庫に入れるように便宜を図るなど通常はあり得ない。」
リカンドは納得がいかない様子であるが、国王の許しがある以上、やむを得ないと観念した。
リカンド「みなさま。地下へどうぞ。」
アリス「司書長殿。ありがとうございます。」
リカンドは図書館の地下の禁書庫へとアリスたちを案内した。
禁書室の中央には、古びた棚が並び、埃まみれの書物が無数に収められていた。
リカンド「アリス様。こちらでございます。」
リカンドの指示で、アリスは「戦争の年代記」という古い巻物を取り出した。その巻物には、大光闇戦争の全容が細かく記されていた。
その中には、英雄たちがいかにして暗黒の軍勢に追い詰められ、全滅寸前に陥ったかが生々しく描かれていた。
だが、その続きにアリスの目を引いたのは、**「光の奇跡」**と題された章だった。
アリス「難しい古代文字だな。フノンは読める?」
フノン「戦乱の最中、絶望の中をさまよう一人の英雄が、神秘の泉へと導かれた。その泉の水を浴びた英雄は神聖なる力を得て、圧倒的な闇の軍勢を退けた。」
アリス「なるほど。これだね。」
巻物には、英雄がどのようにして泉へたどり着き、戦局を逆転させたかが書かれていた。だがその場所についての記述はほとんどなく、ただこう書かれていた。
フノン「その泉は、神の息吹が地に降り注ぐ場所。その位置は星と風が示すだろう。」
アリス「すげ〜!でも何のこっちゃ?ここに違いないけど場所がよくわからん!」
巻物に感銘を受けたアリスは、それがただの伝説ではないと確信した。しかし、具体的な位置が不明なままでは手がかりが乏しい。
図書館を出たアリスたちはどうしたものかと悩みながら、街をさまよっていた。
そんな折、アリスは街角で偶然出会った吟遊詩人が歌う一曲に耳を奪われた。
吟遊詩人「遥か彼方、雲海の果てに。風が囁く静寂の地。泉に降るは神の涙。エリュシオン、その名を胸に秘めよ。」
その歌詞は、巻物に記された記述と奇妙に一致していた。
アリスは詩人を捕まえ、その歌の由来を問いただした。
詩人は微笑みながら語った。
吟遊詩人「これは古くから伝わる歌。旅人たちの間で語り継がれるものだよ。エリュシオンの泉にたどり着けるのは、選ばれし者だけ。だが、お前のような者なら道を見つけられるかもしれない。」
巻物と吟遊詩人の歌。二つの手がかりが一致した時、アリスの中で疑いは完全に晴れた。エリュシオンの泉は実在する。それは、彼女の求める聖なる気を高める修行の場として、最もふさわしい場所であるに違いない。
アリス「よし!私は神の息吹が宿る地へ向かうぞ。」
アリスたちは泉を目指し、星と風が導く道を歩み始めた。