122 南の魔王の謀略編 part1
<南の魔王城 玉座の間>
魔王の手下 ゾーラはモゾモゾしていた。」
南の魔王ラファエル「ゾーラ!どうしたんだ?」
ゾーラ「何でもございません。」
ラファエル「何か隠しているな!ゾーラ!言ってみよ!」
ゾーラ「魔王様!申し訳ございません!もし戦争で負けても、また闘いを仕掛ければ勝てるかもしれないと思って、残った諜報部員に事前に策を与えていたのですが、またしても北の魔王は阻まれてしまいました。」
ラファエル「本当か?北の魔王め!何とかならぬか?」
ゾーラ「それが諜報機関の命である魔の力が破壊されてしまいました。これ以上、諜報機関を維持することができません。」
ラファエル「そうか。これ以上は無理か。こちらとの関係は気付かれないだろうな!」
ゾーラ「もちろんでございます。単独で動いていたので、こちらとのつながりはありませんので、気付かれません。」
ラファエル「それならいいが。ゾーラ!十分注意しろよ!」
ゾーラ「御意!」
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<レンブラン王国>
アリス「さあ、レンブラン王国に戻ってきたよ。冒険の旅の続きだよ!次はどこ行く?」
闘いを終えたアリスたちは、レンブラン王国の王都へ戻っていた。戦場での疲労が色濃く残る中、それぞれが安堵の中にほんの少しの緊張感を抱えていた。
戦争は終わったが、すべてが解決したわけではない。
アリスは心に秘めた事実を抱えつつ、何事もない顔で仲間たちと話していた。
カンタレラ王国宮殿の大広間で、国王カエサリス13世
と軍師グスタファンへの今回の件を報告した後、アリスたちはレンブラン王国の酒場で祝杯をあげることになった。
だが、その場で何気なく交わされた一言が、アリスの胸に隠していた秘密を暴くきっかけとなった。
ディネ「そういえばアリス。
戦場であの黒マントを追い詰めた時だけど、最後の一撃までに少し間があったでしょ!
何かあったんじゃないの?
もしくは何か見つけたんじゃないのかなぁ?」
ディネが意地悪な視線を向けた。
その問いに部屋の空気が一瞬凍りついた。
アリスは一瞬言葉を失ったが、すぐに微笑みを作り答えた。
アリス「いいや、そっ!そんなことはぜんぜん!特に何もないよ。ただ、影の源泉を破壊することに意識を集中していただけよ。」
しかし、ディネはアリスの嘘を見抜いていた。
彼は声を潜め、だが鋭く追及した。
ディネ「そうなんだ。
戦場で何か拾ったんじゃないんだ。
影の源泉の近くで、妙に長く留まっていたように見えたけど……。」
その言葉にフノンが不安げに口を挟んだ。
フノン「アリス、本当に何も隠してない? 私たちは仲間でだよね?」
ミクリとメリッサもそれぞれに疑念を抱き始め、全員の視線がアリスに集中した。
アリスはしばらく黙り込んでいたが、ついに観念したようにため息をつき、腰に付けていた小さな革袋を取り出した。
その中から、一枚の黒い羊皮紙を取り出す。
羊皮紙には不気味な紋章が刻まれていた――南の魔王の象徴である「黒炎の印」。
ミクリ「これを……影の源泉で見つけたんだ。すごいじゃん。」
アリスは羊皮紙をテーブルに置き、仲間たちに見せた。
その瞬間、全員が息を呑んだ。
フノンが静かに問いかける。
フノン「これは……南の魔王城で見た印だよね? 何故これを今まで隠していたんだ?」
アリスは視線を伏せたまま答えた。
アリス「今一確信が持てなかったから。まさか影の源泉の魔法陣の紋様の中に黒炎の印が刻まれているとは。もしこれが本当に南の魔王と黒マントの繋がりを示すものなら、下手に広めれば敵に利用されるかもしれない。まずは自分で確かめたかった。」
メリッサが羊皮紙を手に取り、魔法の力でそれを調べ始めた。
メリッサ「確かにこの紋様は強力な魔力を生み出す呪いの一部ですね。この印から察するに、黒マントの男たちは南の魔王の力を借りて、影の源泉の魔力を強化していた可能性が高いです。」
ミクリが青ざめた顔で呟いた。
ミクリ「やっぱり……影の源泉だけじゃなく、南の魔王自体がこの戦争の裏で暗躍していたんだ。」
フノンは深い溜息をつき、アリスを見つめた。
フノン「アリスの判断は間違っていなかったかもしれないけど、これはすぐに教えて欲しかった。この情報は今後の展開を考える上でとても重要だからね。」
ミクリが静かに頷き、冷静に言葉を継いだ。
ミクリ「今まで南の魔王は散々色々と揉め事を起こしてきたから、今はこれをどう活かすかを考えるべきだろう。今度こそ南の魔王を完全に封じ込める手がかりになるから。」
アリスは全員の視線を受け止め、深く頭を下げた。
アリス「そうだね。これを使って、南の魔王と黒マントの陰謀を完全に暴き、これ以上の南の魔王の陰謀への介入を終わらせるしかないね。」
ミクリ「それにしても黒マントの男アルティエルたちを倒しても、倒したはずのアルティエルが、再び別の場所で現れたのは、南の魔王の力を借りた影の源泉の存在にあったとは。」
フノン「そういえば、ある古代の文献に「幻影の儀式」という魔術が記されていたのを思いだしました。それは、特定の人物の影を利用して無限にコピーを作り出す禁忌の魔術であり、その源泉には魔王の力が必要と書かれていましたよ。」
アリス「幻影の儀式か。なるほどね。そういうことだったんだ。それで、魔王の力をどのように使っていたのかな?」
フノン「そこまで詳しくは書かれていなかったよ。」
ミクリ「もう少し詳しくわかればいいのに。」
フノン「確か灰の迷宮というところに幻影の儀式などの古代の知識が封印されていると聞いたことがあります。」
アリス「よし!そこへ行こう!」
手掛かりを求めて、アリスたちは世界の果てにある「灰の迷宮」と呼ばれる場所へ向かうことにした。
レンブラン王国の港町レブロン。朝霧の中、アリスたちはセントマッカーサ島行きの船に乗り込んだ。
その目的地「灰の迷宮」は、古代の賢者たちが隠した知識の宝庫であり、南の魔王との戦いを優位に進めるための手掛かりが眠っているとされていた。
船の甲板で、アリスたちは地図を広げながら作戦を練っていた。
フノン「灰の迷宮は、ただの遺跡じゃないと思われます。無数の試練が私たちを待っているはず。でも、そこに必ず答えはあります。」
ミクリは剣の刃を磨きながら、静かにうなずく。
ミクリ「いつも通りで、大丈夫でしょ。」
一方でメリッサは海を見つめていた。
メリッサ「嵐が来そうですね……。」
航海は順調に思われたが、セントマッカーサ島に近づいた頃、海上で急激な嵐に襲われた。
嵐の中には得体の知れない魔物が潜み、巨大な水蛇が船を飲み込もうと襲いかかってきた。
船長「全員、水蛇を倒せ!」
アリスたちは一丸となって魔物に立ち向かう。
ミクリが水蛇の尾を切り裂き、メリッサが水の魔法で船を守る中、アリスが一撃で魔物を倒す。
アリス「まあ、楽勝でしょ!」
嵐を抜けた頃、セントマッカーサ島の影がついに見えた。
島に上陸した一行を待ち受けていたのは、迷宮へ続く「裂け目の渓谷」だった。だが、その道は巧妙な罠で満ちていた。