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120 アルティエルとの決戦 part3

亡霊の女性「あなたたちは、私たちを滅ぼしに来たのですか?」


アリスは剣を収め、一歩前に出た。


アリス「いいえ。私たちは滅ぼしに来たのではない。あなたたちを助けに来た。よければ、あなたたちが何を背負っているのか、それを教えて欲しい。」


その言葉に亡霊の表情がわずかに揺れた。

彼女は深くため息をつき、そして静かに語り始める。


亡霊の女性は、かつて一つの小国の王女だった。彼女の国は資源に乏しく、隣国との争いを避けるために和平を求め続けていた。しかし、強国の策略によって和平の約束は裏切られ、彼女の国は無惨に滅ぼされた。


亡霊の女性「私は信じていた。戦争はいつか終わり、平和が訪れると……。けれど、現実は違った。信じた者たちに裏切られ、愛する人々は目の前で消えた。」


彼女の声は震え、アリスたちもその悲劇に胸を締め付けられる思いだった。フノンが涙を浮かべながら呟く。


フノン「そんな……。あなたたちはただ、平和を望んでいただけなのに……。」


亡霊の女性は頷いた。


亡霊の女性「この場所には、私たちのように戦争に翻弄され、憎しみに囚われた魂が集まている。私たちは忘れられた存在なのです。誰にもその苦しみを知られることなく、この闇に囚われ続けてきました。」


話を聞く中で、アリスたちは戦争の裏側に潜む複雑な誤解や陰謀の存在に気付いた。

和平を破ったのは彼女の隣国ではなく、さらに遠くの大国が仕組んだ策略だった。強国同士の覇権争いが、弱小国の運命をねじ曲げ、多くの悲劇を生んだのだ。


ミクリが深く眉をひそめ、口を開いた。


ミクリ「つまり、あなたたちが憎んでいた相手は、直接の加害者ではなかった……。すべては別の者たちの手によるものだったのですか。」


亡霊たちの間にどよめきが広がった。長い間、誤解と憎しみの中で囚われていた魂たちは、その真実に驚愕し、揺れ動いていた。


アリスが一歩前に出て、静かに語りかけた。


アリス「あなたたちの嘆きと悲しみは、私たちに伝わりました。あなたたちが背負ってきた痛みを私は忘れない。そして、その真実を広め、もう二度と同じ悲劇を繰り返さないと誓いましょう。」


亡霊の女性は目を閉じ、涙を流すように光が頬を伝った。


亡霊の女性「あなたたちが真実を知り、それを伝えるというのなら……私たちはもう、この苦しみから解放されてもいいのかもしれないですね。」


彼女の言葉に呼応するように、亡霊たちが次々と光となり、空へと昇っていった。

だが、その直前に、亡霊の女性は黒い石板をアリスたちの前に差し出した。


亡霊の女性「これが漆黒の奈落への道標です。そこには影の源泉があります。私たちの安息を願うなら、どうかその場所を訪れ、全てを終わらせてください。」


アリスたちは神妙な面持ちで頷き、石板を受け取った。


亡霊たちが昇った後、あたりは静寂に包まれた。

フノンが石板を分析し、低く呟く。


フノン「これを読む限り、漆黒の奈落はただの場所ではない。人々の絶望そのものが具現化した空間のようだ。」


古代の石板を解読していたフノンが、一つの仮説を口にする。


フノン「やはり、黒マントの本拠地は、この世界に存在しないと書いてあります。そして、この石板によれば、過去の戦争が始まったとされる『虚無の谷』に、次元を超える扉が隠されているらしい。」


その言葉に、仲間たちは顔を見合わせた。


アリス「虚無の谷ってどこ?」


ミクリ「聞いたことない。」


フノン「私は古い書物で見たことがあります。

虚無の谷は何千年も前に、歴史の中からその存在が消え去ったとされる伝説の場所とされています。」


ミクリ「それじゃ、わからないよ。」


フノン「でも、もしそこに行く方法を見つけられれば、全ての答えがわかるかもしれない。」


アリス「確かに。でもこの辺りのどこかにきっとあるはず。みんなで探そう!」


アリスたちは、周辺の地域を周って、古い伝承を頼りに、扉の手がかりを追い求めることにした。


ある村で東のビスト村に知ってる人がいるらしいという噂を聞いたので、行ってみることになった。


ビストの村人で、ご先祖さまからの言い伝えという話を聞いて、虚無の谷と関係のある荒野の遺跡についての情報を得た。


それはかつて巨大な文明が栄えたという砂漠の遺跡だった。その場所には、古代の王が「虚無の谷」について書き記したとされる秘文が隠されていると言われていた。


アリス「なんだよ。この砂漠は!暑いんだけど。」


ミクリ「暑くて喉が渇いた。」


アリス「ディネ!水出して!」


ディネ「だから!前にも言ったじゃん!水分があるところじゃないと水は出せないよって。」


ディネがほんの数滴の水をミクリの口元に出した。


ミクリ「全然足りないよ。」


ディネ「もうムリ」


サラ「馬鹿アリス!」


アリス「馬鹿言うな!」


灼熱の砂漠を越え、アリスたちはついに古代文明の遺跡の前に辿り着いた。

その入り口は風化した石造りの門で覆われ、砂に埋もれかけていたが、門の上部にはかすかに読み取れる古代文字が刻まれていた。


アリス「フノン。なんて書いてあるの?」


フノン「ここに入る者、覚悟を持て。さもなくば命を失うだろう。

と書いてあります。」


アリスは剣を手に取って微笑む。


アリス「さあ来い!命を懸ける覚悟なら、とうにできているぜ。」


ディネ「ことば使いが乱暴ですよ。女の子はもっと丁寧に!」


アリス「いいの!」


門を押し開け、アリスたちは中へと足を踏み入れた。


遺跡の内部に一歩入ると、すぐに砂嵐が吹き荒れる迷路が広がっていた。壁には無数の古代文字が刻まれていたが、どれも風化して判読が困難。さらに、砂嵐のせいで視界はほとんど利かず、方向感覚を失わせる仕掛けとなっていた。


アリス「フノン、解読できるか?」


アリスが壁の文字を指差して尋ねると、フノンは目を細めて集中する。


フノン「文字は読めないですが、魔力の流れが壁に埋め込まれています。ここは単なる迷路じゃない。魔法陣が組み込まれているようです。」


フノンが杖を振り、魔力を流し込むと、文字の一部が光を放ち始めた。光の流れを追うと、それは砂嵐を避ける安全な道筋を示していた。アリスたちはその光を頼りに迷路を抜け、砂嵐を越えることができた。


迷路を抜けると、彼らは長い階段に出た。


しかし、階段を登ろうとした瞬間、不気味な声が響いた。


亡霊「進む者よ、自らの罪を告白せよ。さもなくば魂を引き裂かれん。」


その声と同時に、階段の周囲から黒い霧が湧き出し、彼らを捕らえようと襲いかかる。

霧に触れると、過去の過ちや後悔が幻影となって現れ、精神を蝕んでくるようだ。


アリスは過去に守れなかった兵士の顔が浮かび、剣を握る手が少し震えた。しかし、彼女は声を張り上げた。


アリス「こんな精神干渉魔法のような攻撃はイヤというほど経験したから、もう効かないよ!私が背負うべき罪は理解している!それでも私は未来のために進む!」


その言葉に応じるように、霧が彼女の周囲から薄れていく。黒い霧を克服して階段を登った。


階段を上り切ると、最深部の扉の前に立ちはだかったのは巨大な石の守護者だった。その体は岩でできており、目は赤く光り輝いている。守護者は低い声で語りかける。


石の守護者「この扉を開く資格があるか、力で示せ。」


アリスが剣を構えると、守護者が動き出し、巨大な拳を振り下ろしてきた。アリスはそれをギリギリでかわしながら反撃を試みる。

しかし、守護者の岩肌は剣を弾き返し、傷一つつけることができない。


アリス「クソー。魔法でなんとか突破口をお願い!フノン!」


フノンが呪文を詠唱し始め、炎の魔法陣を展開する。

その間、アリスとミクリが連携し、守護者の注意を引きつける。


フノンの炎が守護者の目に直撃し、その動きが止まった隙を突いて、ミクリの魔剣がその胸部の核を打ち砕いた。そして最後はアリスが聖気を溜めた剣で真っ二つに切り裂き、守護者が崩れ落ち、扉が静かに開いていった。

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