119 アルティエルとの決戦 part2
レイ「一方、サクミリア共和国では、黒マントの男が別の方法で混乱を生み出していました。彼らは戦後の混乱に乗じ、民間人に密かに武器を供与していたのです。
黒マントの男「王国支配を終わらせる時だ。我々が自由を取り戻す手助けを我々がしよう。」
こうして、サクミリア共和国各地で反乱が勃発しようとしています。政府の支配は急速に弱まり、内戦状態に陥る国が瓦解していくのを、黒マントの男は陰で笑みを浮かべながら見ていたとのことです。」
アリス「戦争が終結したはずなのに、世界を再び混乱に包みこもうとしているとは許せない。各地で新たな争いが勃発する前に、一刻も早く黒マントの男たちを潰しておかないと。
」
ミクリ「すでに国同士の緊張は高まり続けている。」
アリス「そうなると。」
フノン「また戦争になってしまいますね。」
アリス「黒マントの男たちは何者なんだ。」
ミクリ「そもそもカンタレラ王国を巻き込んで、アリスを引きずり出して。」
フノン「聖騎士団とアリスが闘うように仕向けるメリットがあるのは?」
アリス「南の魔王かぁ!」
フノン「でも確証がありません。」
ミクリ「捕まえたアルティエルは?」
フノン「なにも話していないそうです。」
アリス「確証かぁ。」
ミクリ「確証ね。」
フノン「ないのですよ!」
アリス「黒マントの他の男を捕まえれば。」
フノン「おそらくもう黒マントの男たちも白状しないでしょう!」
ミクリ「万事休す。上手くやられましたね。」
アリス「悔しい。」
フノン「前回にあれだけ脅しているからね。」
ミクリ「今回の戦争では、魔族も使っていないし。」
アリス「カマをかけてみては?」
フノン「乗らない可能性大ですね。それだけ自信持っているでしょうから。この抜け目の無さは。」
ミクリ「そうだよね。」
アリス「まさか人間の忠実な僕がいるとは。」
メリッサ「そういえば、南の魔王の諜報部隊の中に、魔族に混じって人間がいたような気がします。不思議でしたけど。」
アリス「それだけでは確証にはならないね。クソー!バーストエンドミラージュは何か掴んでいないの?」
レイ「確証はありませんが、南の魔王の諜報機関「黒マントのアルティエルは、南の魔王が生み出した「影の軍団」の可能性大です。各地で同時に暗躍できるこの存在は、互いに連絡を取り合いながらも、自律的に行動しています。
さらに、彼らの活動は単なる混乱の創出にとどまらず、世界を破壊に導く緻密な計画に基づいているようです。
アルティエルの真の目的は人間同士を戦わせ、互いに滅びさせることで、この世界を“純粋な静寂”へと変えようとしているのです。争いが生む憎しみ、怒り、恐怖――それらは彼らにとって最高の糧であり、その感情が世界を埋め尽くす時こそ、彼らの勝利となるらしいです。」
アリス「なんということ。」
ミクリ「これは即刻なんとかしないとまずいね。」
レイ「黒マントの男たちは神出鬼没で、個々に倒しても次々に代わりの者が生まれます。
彼らをすべて消し去るためには、奴らの核である影の集合体『影の源泉』を破壊するしかありません。」
レイが調査した結果、アルティエルたちが存在するための源泉が「漆黒の奈落」と呼ばれる領域にあることが分かった。そこは次元を超えた異空間であり、通常の手段では到達不可能だった。
アリスは、レンブラン王国に戻って、次元を超えるため、ライラに協力を依頼してモントリア帝国に戻った。
アリスたちはまず「漆黒の奈落」の手掛かりを見つけるために、古代の遺跡や神話の伝承を辿ることにした。
黒マントの男が多く出没していた戦争の傷跡が癒えぬモントリア帝国とサクミリア共和国内で、アリスたちは、黒マントの陰謀の痕跡のカケラを追い続けた。
各地で起きる争乱の裏に、謎めいた力が働いていることは明白だったが、その核心に迫る手がかりを得ることは少なかった。
そんなある日、荒廃した辺境の村で、アリスたちは一人の盲目の予言者と出会った。
彼女は、どこからか聞こえるような声でこう告げた。
盲目の予言者「黒マントの真の本拠地はこの世界には存在しない。それを見つけたければ、サクミリア共和国内にある『漆黒の奈落』への扉を開くがよい。」
アリス「どういうことですか?この世界には存在しないとか? 漆黒の奈落の扉とか? 意味がわからない。」
予言者はさらに続けた。
予言者「その扉は、人々の憎悪と絶望が生んだ場所に存在する。だが気をつけなさい。その先は、ただの旅ではない。過去の罪と向き合い、真実を知る覚悟がなければ、戻ることは叶わないだろう。」
これを聞いたアリスたちはわからないながらも、真実を知るため、扉を探す決意を固めた。
予言者に話を聞いた後、彼らが最初に向かったのは、サクミリア共和国内のかつて激戦地となった砂漠の中の「忘却の塔」であった。
そこには戦争で犠牲になった者たちの怒りの魂、怨念が渦巻いていた。
アリスたちが忘却の塔に足を踏み入れると、周囲の空気が灼熱に変わり、地面から無数の炎の手が伸びてきた。
炎の中から現れたのは、亡き兵士たちの幻影だった。
彼らは嘆きの声で訴えた。
亡き兵士たちの幻影「お前たちがこの世界を焼き尽くした。戦いを止めなかった人間の愚かさが、この憎悪を生んだのだ!」
この幻影たちは、アリスたちの心の弱さを暴き、彼らを追い詰めた。だが、アリスは毅然と答えた。
アリス「過去を背負って未来を創るのが私たちの使命だ。憎悪に囚われるのではなく、将来の幸福の道を探し続ける!」
幻影「憎悪があるから、我は存在する。」
アリス「未来の幸せに過去の憎悪は必要がない。」
幻影「我が存在する必要がないというのか。」
アリス「その通りです。人間は幸せになる権利を持っている。憎悪はされ!」
その言葉が鍵となり、塔の中心に隠されていた「奈落への地図」が現れた。
アリス「これは地図。」
フノン「ですが、この地図だけだとどの地点の地図かわかりませんね。」
ミクリ「簡単にはわからないよということだよね。」
メリッサ「この地図ですけど、サクミリア共和国の北東部の地図に似てますね。」
アリス「メリッサはすごいね。」
メリッサ「これでも元諜報機関ですから。」
メリッサはニコッと笑った。
アリス「納得です。」
さっそくアリスたちが向かったのは、サクミリア共和国の北東部にある戦争で滅ぼされた村「ヴァルグリフ」の跡地だった。
ディネ「アリス。やばいのがいるよ。」
サラ「人間じゃないね。」
アリスたちは静寂の中で佇む亡霊の一団と対峙した。
その中心に立つ女性の亡霊―彼女は、かつて戦争で全てを失い、憎しみと悲しみに囚われて「漆黒の奈落」の影響下に置かれた存在ということであった。
その姿は薄く透けており、瞳には深い絶望が宿っていた。