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116 コロニアス砂漠での決戦 part4

砂漠の空が赤紫に染まり、冷たい夜風が吹き始める頃、戦場の雰囲気は一層緊迫感を増していた。


どちらの軍勢も体力と士気を削られ、動ける者はわずかとなっていた。

それでも、誰も退くことは許されなかった。

勝利を掴むのは力ではなく、最後に盤面を動かす策士の一手だと、誰もが感じ取っていた。


モントリア帝国軍を率いる策略家、アルティエルは戦場の隅で地図を睨みながら、冷静に状況を見定めていた。

その脳裏に浮かんでいるのは、これまで自ら編み出してきた数々の勝利の記憶と、敵将ライナー将軍の次の一手。


アルティエル「カンタレラ軍の鉄壁の部隊はまだ残っている。だが、奴らも消耗しているはず。今、決定打を繰り出せばこの戦争は終わる。」


アルティエルは背後に控える副官に命じた。


アルティエル「隠しておいた魔獣部隊を投入しろ。砂丘の影から敵を奇襲する形だ。精鋭部隊が対応している隙に、残存兵力を一点突破で指揮系統に叩き込む!」


副官は躊躇した。


副官「ですが、我々も疲弊しています。この奇襲が失敗すれば…」


アルティエルは冷たく微笑み、静かに答えた。


アルティエル「失敗しないさ。敵国の将はきっと私のこの策を予想し、対策を講じるだろう。だが、それが罠だと気づいた時にはもう遅い。」


一方、カンタレラ軍の策士、ライナー将軍もまた、アルティエルの動きを警戒していた。


ライナー将軍「敵将は必ずこの混乱を利用して一気に勝利を狙ってくる。奴のやり口は、相手の自滅を誘うものだ。」


彼は残存する兵士たちを鼓舞しつつ、静かに次の指示を下した。


ライナー将軍「敵が何を仕掛けてきても慌てるな。まずは奴らの動きを観察しろ。そして、こちらの防御陣を崩させた瞬間に、迎撃部隊を逆突撃させる。砂漠の地形は我々の味方だ。」


ライナー将軍は続けて、副官に耳打ちした。


ライナー将軍「敵将が策を講じるのは分かり切っている。だが、あえてそれを利用する。彼の策に見せかけた我々の罠で、相手を自滅させるのだ。」


アルティエルの命令通り、砂丘の影に隠れていた魔獣部隊がカンタレラ軍の側面に突撃を開始した。

砂塵を巻き上げながら進軍する魔獣たちの咆哮は、疲れ切った兵士たちの心に恐怖を植え付けた。


だが、ライナー将軍は冷静だった。


ライナー将軍「来たか…予想通りだ。」


彼はカンタレラ軍の魔法部隊に命じた。


ライナー将軍「炎壁を展開しろ!砂丘の地形を利用して敵の進路を制限するのだ!」


魔法部隊の一斉攻撃により、砂丘の一帯が巨大な炎の壁で覆われた。魔獣部隊は進軍を強いられながらも次第に隊列を崩され、効果的な攻撃を行えなくなった。


だが、アルティエルはそれすら計算に入れていた。


アルティエル「カンタレラ軍の将軍の読みは正確だが、奴が全てを見抜けているわけではない。」


魔獣部隊の背後から、さらに隠していた騎馬隊が突撃を開始する。


その時だった。ライナー将軍が動きを見極め、最終指示を下した。


ライナー将軍「敵将は二段構えの策を使ってくる…予想通りだ。だが、第三の奇襲はない!」


ライナー将軍は精鋭部隊に直接指示を出す。


ライナー将軍「迎撃に向かえ!奴らを完全に崩壊させるのだ!」


精鋭部隊が全速力で敵陣に突撃した。鉄壁の剣が砂嵐を切り裂き、戦線を押し広げる。精鋭の魔法部隊が敵を押し流し、騎馬隊を次々と撃破していく。


アルティエルは、己の策が逆手に取られたことに気づいた。


アルティエル「カンタレラの将軍め…完全に読まれていたか。」


最終的に、モントリア帝国軍の残存兵力は全滅に近い状態に追い込まれた。アルティエルは退却命令を出し、わずかな兵士を連れて砂漠の夜闇に紛れ込んだ。一方、ライナーも消耗しきったカンタレラ軍を立て直すため、戦場の整理を急いだ。


この戦いで得た勝利は決して容易なものではなかった。しかし、この勝利は、カンタレラ軍にとって希望の灯火となり、モントリア軍にとっては新たな策略を練る必要性を示すものだった。


戦場には、夜空に輝く星々が広がっていた。その下で、策士たちの新たな戦いが幕を開ける兆しが見えていた。


砂漠の夜空が満天の星々で覆われ、静寂が訪れる頃、戦場にはわずかな残響だけが残っていた。しかし、この静けさは嵐の前の静寂にすぎなかった。モントリア帝国軍とカンタレラ王国軍の最後の決戦が、歴史に刻まれる瞬間として刻々と近づいていた。


カンタレラ王国軍の精鋭、アリスを中心とする部隊は、疲弊しつつも気高さを失わずに立ち続けていた。

アリスは剣を握りしめ、仲間たちに語りかける。


アリス「私たちはここで引くわけにはいかない。この戦いで勝利を掴み取り、未来を守るのだ!」


アリスの言葉に、ミクリ、ディアブロ、ルシファー、メリッサも力強く頷いた。彼らはすべてを懸ける覚悟を決めていた。


一方、ライナー将軍は戦場全体を見渡しながら、モントリア帝国軍の動きを冷静に分析していた。


ライナー将軍「敵将はまだ何かを隠している。だが、奴の策には必ず隙がある。それを見極めるのが私たちの役目だ。」


モントリア帝国軍の策士、アルティエルもまた、疲れた兵士たちに最後の鼓舞を送っていた。


アルティエル「ここで勝てば、我々の名は歴史に刻まれる!残った力をすべて使い、この戦場を制圧するのだ!」


アルティエルは密かに、戦場の裏手に隠されていた最後の切り札――魔導砲列を展開させていた。それは砂漠の地形を利用してカンタレラ軍を一掃するために用意されたものだった。


アルティエル「敵がこちらに気づく前に、この砲列で戦場を終わらせる…!」


しかし、アルティエルの策は完全に読まれていた。ライナー将軍は戦場を慎重に観察し、魔導砲列の位置を特定していたのだ。


ライナー将軍「アリス、君たちの力が必要だ。」


ライナー将軍はアリスたちに懇願した。


ライナー将軍「敵の魔導砲列を無力化して欲しい。それが成功すれば、この戦いは私たちの勝利だ。」


アリスは仲間たちとともに、砂漠の闇に紛れながら魔導砲列へと接近を開始した。

ディアブロは影の中を疾走し、フノンとメリッサは魔法の結界を張って砲列の防御を無効化。

ミクリがその圧倒的な剣技で砲兵たちを排除していった。


アルティエルは焦りを感じ始めていた。


アルティエル「何かがおかしい…敵がこちらの動きを読んでいる?」


その時、遠くで爆発音が響いた。魔導砲列が破壊されたのだ。アリスが黄金の剣を掲げ、全軍に向けて叫ぶ。


アリス「砲列は無力化したぞ!今こそ総攻撃を仕掛ける時だ!」


カンタレラ軍はその言葉に奮い立ち、最後の力を振り絞って突撃を開始した。

砂漠を駆ける兵士たちの怒号が、戦場を震わせる。


一方、モントリア軍は砲列の破壊による混乱で指揮系統が乱れ、防戦一方となった。

アルティエルは撤退を命じようとしたが、カンタレラ軍の猛攻を前に、撤退すらままならなかった。


戦場の中央で、アリスはアルティエルと向き合った。


アリス「お前が民衆を扇動したという、敵将アルティエルなのか。」


アルティエルは剣を抜き、冷たい笑みを浮かべた。


アルティエル「そうだ。私がアルティエルだ。このまま簡単には終わらせないぞ。私にはまだ、最後の手段が残っている。」


二人の剣がぶつかり合い、火花を散らした。アルティエルは巧妙な剣技と魔法を駆使して応戦したが、アリスの力と覚悟はそれを上回っていた。


アリス「お前のせいでこの戦場が始まったんだな。いったい何を考えているんだ。目的はなんだ!」


アルティエル「えい!忌々しい。お前に私の気持ちなどわかるまい。」


アリスの剣が閃き、アルティエルの剣を弾き飛ばした。

彼は膝をつき、敗北を認めざるを得なかった。

アルティエルは、短剣を出して自害した。


アリス「しまった。死ぬな!死んでは背後で仕組んだ者がわからないじゃないか。」


夜が明け始め、砂漠の地平線が朝焼けに染まる中、カンタレラ王国軍は完全な勝利を収めた。


アリスは剣を納め、戦場を見渡した。

その目には、戦いの悲劇と未来への希望が映っていた。

ライナー将軍がアリスの元に歩み寄り、静かに語りかけた。


ライナー将軍「君たちの力が、この勝利を掴んだ。だが、この戦いが終わりではない。これをどう生かすかが、我々の使命だ。」


アリスは頷き。


アリス「この勝利が平和への一歩となるようにと願おう。」


砂漠に新しい風が吹き始め、未来への扉がゆっくりと開かれたのだった。

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