115 コロニアス砂漠での決戦 part3
砂嵐が収まり、砂漠の戦場にわずかな静寂が訪れた。その光景はまるで嵐の後の荒野のようだった。
双方の軍勢はすでに疲弊し、多くの戦士が地に伏している。
アリスたちの5人は激しい戦いの末、聖騎士団を全滅寸前まで追い詰めた。
しかし、聖騎士団のリーダーであるアークレイだけは、倒れるどころかなおも剣を握りしめ、神聖な光をその身に纏い立っていた。
アークレイ「全ての決着をつけるのは、私とお前だ。」
アークレイが純白の聖剣をゆっくりと構える。対するアリスは、その鋭い眼差しで彼を睨み返した。
彼女の黄金の剣は傷つきながらも、なお輝きを失っていない。
アリス「いいね。私もそのつもりだ、アークレイ。ここで終わらせる!」
周囲に散らばる兵士たちは、その場から後退し、二人の一騎討ちを見守ることしかできなかった。
アークレイとアリスが互いを見据え、一瞬の間に無数の可能性を読み合う。
次の瞬間、アリスが先手を取った。
アリス「はあああっ!」
黄金の剣が砂漠の空気を裂きながら、アークレイの胸元を狙う。
しかし、アークレイはその一撃をまるで読んでいたかのように、純白の聖剣で正確に弾き返す。
アークレイ「見事だが、浅い!」
アークレイが反撃に転じ、光の刃を伴った横斬りを繰り出す。
その一撃は、アリスが間一髪でかわしたものの、彼女の頬に浅い傷を刻んだ。
戦場は、光と影の激突で彩られる。アリスの剣は疾風のごとく速く、アークレイの聖剣は重厚かつ神聖な力で満ちていた。二人の剣がぶつかるたび、火花が散り、衝撃波が周囲の砂を巻き上げる。
アークレイが高らかに宣言する。
アークレイ「闇に属する者よ、この聖剣で裁きを受けよ!」
その言葉とともに、彼の聖剣から放たれる聖光の波動がアリスを包み込む。
しかし、アリスはその力に屈することなく叫んだ。
アリス「酷いなあー。魔王かもしれないけど、闇に属する者なんて!普通?の女の子でもあるのに!傷つくなあー!」
黄金の剣が輝きを増し、アークレイの光を切り裂くかのように一閃した。
二人の力は拮抗し、どちらが勝利を掴むのか全く分からない状態が続く。
アリス「クソー!聖なる光の力の前では、オートキャンセルも効かない!かと言って、純粋な聖気だけだと負けている。ディネ!どうする?」
ディネ「剣に全精霊の力を込めるしかないでしょ!アリスだけだと勝てないんだから!」
アリス「やっぱりそれしかないよね!」
戦いが終盤に差し掛かったころ、アリスは隠していた技を解放する決意を固めた。
彼女は剣に聖気と全精霊の魔力を込めて、低い声で呟くように呪文を唱える。
アリス「これで終わりにする…『黄金流星の舞』!」
剣が瞬く間に光の残像を残しながら、無数の精霊の魔力が籠った斬撃を繰り出す。
その速度と力は、アークレイの防御を突破し、彼の鎧に深い傷を刻みつけた。
しかし、アークレイも最後の力を振り絞る。
アークレイ「ならばこちらも、全てを懸ける…『天光滅覇剣』!」
彼の聖剣から放たれる神聖な光の斬撃がアリスに迫る。
聖光と全精霊力がぶつかり合い、戦場は爆発のような光で包まれた。
砂漠の空気が震え、遠くの兵士たちまでその衝撃を感じるほどだった。
光が収まり、アリスは片膝をついていたが、なおもボロボロになった剣を握りしめて立ち上がった。
対するアークレイは、その場に倒れ、静かに息をついていた。
アークレイ「見事だ…アリス。お前の力と信念には、私も敬意を表そう。」
アークレイはそう言い残し、静かに目を閉じた。
アリスは荒れ果てた戦場に立ち尽くしながら、仲間たちの元へとゆっくり歩み寄った。
アリス「終わったよ!…私たちが勝った。」
ミクリやディアブロ、ルシファー、メリッサが彼女を迎え入れ、それぞれに疲労と安堵の表情を浮かべる。
アリス「グスタフ将軍。我々はもう無理だ。後は任せた。」
グスタフ将軍「アリス殿。誠にご立派でした。後は任せてください。」
こうしてアリスたちと聖騎士団の闘いは終わった。
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荒涼とした大地に砂嵐が舞い上がる中、モントリア帝国の広大な砂漠に、二つの大軍が対峙していた。
西側の丘陵地帯を埋め尽くすのは、モントリア帝国の指導を受けて再編成されたサクミリア共和国軍4万。その前方には、精鋭揃いのカンタレラ王国軍5万が、鉄壁の陣形を敷いていた。
この戦いは、単なる領地争いを超え、砂漠の覇権を巡る一大決戦であった。
サクミリア軍はアルティエルの命を受け、モントリア式の軍制を導入していた。
彼らは3つの主力部隊に分かれており、前衛には槍兵と重装歩兵が整然と並び、後方には弓兵隊と投石機が配置されていた。
さらに、右翼と左翼には騎馬隊が控え、敵陣を挟み撃ちにするための準備を整えていた。
司令官は、モントリアの名将であるグスタフ将軍が務めており、アルティエルから「カンタレラ軍を挫き、帝国の威信を示せ」と厳命を受けていた。
一方、カンタレラ軍はその緻密な軍事戦略と、伝統的な重装歩兵の強さで知られていた。
彼らの中央には、鋼鉄の鎧をまとった「鉄壁部隊」が配置され、まるで動く要塞のように堅固な防御を敷いていた。
両翼には、迅速な機動力を誇る騎兵隊が配備されており、特に東側には「砂漠の鷲」と呼ばれる名将ライナー将軍が率いる部隊が控えていた。
彼らの戦術は、敵の隙を突いて一撃離脱を繰り返し、徐々に敵軍を消耗させるものだった。
朝陽が砂漠を黄金色に染める中、ついにサクミリア軍が動き出した。
グスタフ将軍「全軍、前進せよ!」
グスタフ将軍の号令とともに、7万の兵士が一斉に進軍を開始した。
その足音が大地を揺るがし、まるで地鳴りのような音が戦場全体に響き渡った。
カンタレラ軍は静かにそれを見据えながら、陣形を崩すことなく待ち構えていた。
彼らはサクミリア軍の接近を待ち、弓兵隊に合図を送る。
次の瞬間、空を覆うほどの矢の雨が降り注いだ。
グスタフ将軍「盾を上げろ!」
サクミリア軍の前衛が盾を構え、何とか矢を防ぎながら進軍を続ける。
しかし、その速度は大幅に鈍り、陣形に乱れが生じ始めていた。
両軍の距離が縮まり、ついに前線での衝突が始まった。
サクミリア軍の槍兵は鋭い突進でカンタレラ軍の防衛線を打ち破ろうとしたが、「鉄壁部隊」の前にその勢いは止められた。
カンタレラの重装歩兵は密集した盾の壁を築き、その裏から槍を突き出して敵を迎撃した。
その戦術は完璧で、サクミリア軍の前衛は次々と倒れていった。
しかし、ここでグスタフ将軍は後衛の弓兵隊に命じた。
グスタフ将軍「敵の後列を狙え! 砲撃を開始せよ!」
投石機と火矢が次々とカンタレラ軍に降り注ぎ、後方に混乱が広がった。
その隙を突いて、サクミリア軍の左翼の騎兵隊が突進を開始した。
しかし、カンタレラ軍の東側を率いる「砂漠の鷲」ライナー将軍はこの動きを見逃さなかった。
ライナー将軍「騎兵隊、迎撃に出る! 敵を包囲せよ!」
カンタレラの騎兵隊は迅速に動き、サクミリアの左翼を反転して包囲した。
砂漠の地形を熟知している彼らは、地の利を活かしてサクミリア軍の騎兵隊を壊滅させた。
一方、サクミリア軍の右翼も動き出し、中央の歩兵隊を援護しようとしたが、ここでもカンタレラ軍の巧妙な伏兵に遭遇し、大きな損害を被った。
戦闘は熾烈を極め、両軍ともに甚大な被害を受けていた。
カンタレラ軍の「鉄壁部隊」は依然として中央を死守しており、サクミリア軍はその堅固な防御を崩すことができなかった。
一方、カンタレラ軍も物量で押され、全軍が次第に消耗していった。
ここでグスタフ将軍は再び動いた。
彼は兵力を再配置し、後衛に温存していた予備兵を投入することで、敵陣を突破しようと試みた。
同時に、砂嵐を利用して隠密行動を命じ、少数精鋭の部隊を敵の指揮官がいる後方に送り込んだ。
しかし、その行動はすでにライナー将軍に見抜かれていた。
カンタレラ軍は素早く陣形を変え、サクミリア軍の新たな攻撃を迎え撃つ準備を整えた。
この戦いは、まさに「戦略と耐久力の勝負」だった。
サクミリア軍は圧倒的な数の利を活かし、次々と攻撃を仕掛けたが、カンタレラ軍の鉄壁の防御と卓越した戦術の前に、完全な勝利を掴むことはできなかった。
日が沈み、砂漠の空が赤く染まる頃、両軍ともに戦いを続ける体力を失い始めていた。