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折れた親指に涙!血塗られた独占インタビュー!③

「でもな、その話についてはあまり好意的に見ることが出来ないんだよな……」

「んんっ!どうしてですか?!」


「そりゃあれだよ……あの変なおばさんを助けようと思ってとかじゃなくて、ただ単に力が有り余ってたから暴れたってだけの可能性もあるわけで……」


「んっ、んんっ……でっ、でも、それでもですよ、動機はどうあれ、あのエクソスーツを装着した数十人の治安部隊を相手にたった一人で大暴れして、一人残らず病院送りにしたんですよ!?ご存知でしたか?エクソスーツはタングステンと強化樹脂カーボンの特殊複合素材で作られていて、対物ライフルによる狙撃にも耐えられる強度を誇るらしいんですよ!?また強力なパワーアシスト機能を有していて、50トンの重量があるダメージガ社製の戦車を体当たりだけで横転させるほどの性能を持っているんです!ボッキマンさんはそんなものを身に着けた屈強な男達を次々と殴り倒し、ボーリングのピンみたいに吹き飛ばしていったんですよ!それってもう超人っていうよりバケモノって感じじゃないですか!そんな化け物じみた力を持った男が一人の不幸な女の人を守るために……」


「……おいおい、落ち着いてくれよ。お前は演説じゃなくて取材がしたいんだろ」


どうやらこいつは俺のことを本気でヒーローだと思っているようだ。


俺は首筋を掻き、困ったような表情を浮かべると軽く手を振ってみせた。すると門戸は我に返ったような表情を浮かべて、慌てて謝罪の言葉を口にする。


「あっ、す、すいません……つい興奮してしまって……」

「いや、別にいいんだけどさ……まあ、その、確かにボッキマンは強かったけど、あいつが助けるまでもなく、あのおばさんは無事だったと思うよ」


「ええっ、そ、そんなことないですよ!治安部隊に拘束された人々が最終的にどうなるかご存知ないんですか!?そりゃ家族や身元を保証してくれる人がいるならどうにかなりますよ。でもそうでない場合、あの人は隔離施設行きとなって、二度と日の目を見ることはなかったとしてもおかしくはないんですよ!!」


「そんな大げさな……なんの理由があってんなことするんだよ。あいつがいなかったとしても、結局は釈放されてたって……」


俺がたしなめるように言っても門戸の息は荒く、額には脂汗が浮いており、頬は紅潮したままだ。


こいつ、なんでこんなに必死になってるんだ?


「……ボッキマンさんは思わないんですか?弱い人たちを守りたいと……正義の味方になりたいと……」


「んー……俺、いやー、あいつは別にそんな大層なこと考えてないんじゃね……?」


俺は少し考えるふりをして、興味なさげに呟いてみせる。

この話に乗ったら最後、興奮した門戸の熱弁にどこまでも付き合わされることになるだろうと思われた。


「んっ、んんっ、で、でも、ボッキマンさんはさっき僕が転びそうになった時、助けてくれたじゃないですか!」


「そりゃ目の前で死なれると俺のせいだと思われて迷惑だから……って、俺はボッキマンじゃねえよ」

「す、すみません……」


「つーかお前さ、なんかそういうヒーローとかに憧れてんの?さっきからやたらと正義の味方がどうとか言ってるけど」

「えっ?ええっ、そっ、それは……」


門戸は俺の言葉に目を泳がせながら、唇の下を指で掻く。


「……んっ、ええっ、憧れというか……その……んっ、僕はですね。子供みたいなと笑われるかもしれませんが、漫画やアニメが好きなんですよ。それで、そういったものに出てくるキャラクターに自分を重ねて見てしまうことがよくあって……超能力者とか変身ヒーローとか……そういう強い力を持っているものに憧れるところがあるのかもしれません……んっ、んんっ……」


「へえ、そうなのか……」


「もっ、もちろん強さだけを求めているんじゃないですよ!?こう、理不尽な社会に立ち向かったり、虐げられている弱き人々を守る、正義のヒーロー……それこそが僕の理想とする姿であり……」


「そうか……うん、わかった」


俺はつま先でダクトをコツコツ叩きながら相槌を打つ。


正直まったく理解できないが、こいつがそういうキャラに興味があることは十分に伝わってきた。


「ではそんなお前に朗報だ。ボッキマンを上回る真の正義の使者がいたとすればどうする?」

「えっ、ええっ!そっ、そんな人がいるんですか!?」


「ああ、いるとも……その名も……ケンドーマスクだ」


「は、えっ……?け、ケンドー……?」

「そう、ケンドーマスクだ」


面倒になった俺は門戸にケンドーマスクを押し付けようとしていた。

このまま共倒れにでもなってくれた方が好都合だからな。


しかし、門戸の表情はなんとも微妙でこいつは何を言っているんだと言わんばかりだ。


ケンドーマスクのことを知らないのかと思ったらそうじゃなかったようで、門戸は困惑した様子のままとんでもないことを言い出した。

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