傘
どうしてこうなった。
中学1年生になったばかりの春の日。午前中に降っていた雨はもう上がっていて青空が広がっていた。いつもの様に皆で話しながら帰っていた時だった。最初はくだらない言い争いだった。温泉卵は白か黒か。そこから段々と喧嘩になっていった。強気の詩乃ちゃんと見栄っ張りな芽依ちゃん、その2人を見守る私とわらび。どうやって喧嘩に発展したかは覚えてないけれど芽依ちゃんのこの一言だけははっきり覚えている。
「別に成績が良ければ他の事はどうでもいいし」
この時、詩乃ちゃんの中でゴングが鳴った。
「じゃあ、うちらと一緒にいなくてもいいって事だよね」
「そんな事言ってないじゃん!」
「でもお前が言ってる事はそうゆう事だろ」
これはまずい。慌ててニ人を引き剥がす。私が詩乃ちゃんに、わらびが芽依ちゃんに付く。そこからは悪口大会。そしたら悪口を聞いた詩乃ちゃんが突っかかる。また詩乃ちゃんと芽依ちゃんが喧嘩する。もう、私とわらびはどうしたらいいのか分からなくなって、黙って見守るしかなかった。
「もう、明日からうちらと登下校しなくていいよ」
「言われなくてもそのつもりだよ!」
芽依ちゃんは泣いていた。傘を地面に叩きつけ、走って行ってしまった。詩乃ちゃんも家に帰って行った。私達は呆然とした。
私は芽依ちゃんの家に傘を持って行った。芽依ちゃんは家に居なかった。芽依ちゃんのおばあちゃんの家にも。仕方なく喧嘩をした所にあるフェンスにかけておいた。けれど、一週間経っても二週間経っても傘はフェンスに掛けっぱなしのまんまだった。