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15歳編⑤

「くそっ…あのチビ女め…入学式の時は覚えてろよ…」

 同じ船に乗船していた入学希望者の少女にくしゃくしゃにされたヘアスタイルを直しながら、エクレール・ブレッドソンは少女に対して怒りを露わにする。憧れの姉と同じ道を辿ろうとしていた矢先、栄光の道を邪魔されたような気分だ。そんな彼女は僧侶の少年と巫女の少女と真剣な話をしているようだ。


『そういえば、さっき…赤い髪の少年と話をしていたみたいだが、アレが勇者様と仲いいワケ、ナイナイ!!!それに、勇者様なら甲冑姿で街中を歩くんだから、さしずめ親しい現地人だろ!』


 そう思いつつ、エクレール少年はもう一度羊皮紙に記された魔法文字に目を向ける。これからお世話になる卒業生の名前の下に、新たにその卒業生がいる場所が魔法文字で記される。


「ジュリア・テリーヌ・ショコラーデ…場所は…」


 羊皮紙に記された場所と地図を照らし合わせながら確認する。彼女がいる場所は、港からそう離れていないようだ。エクレール少年は港から出るや否や、早足で卒業生のいる場所へと向かった。




 本当なら、エクレール少年の姉・シフォンも今年は入学希望者の面倒を見るはずだった。だが、母親が僧侶の手の施しようがない原因不明の病で急死してしまったのである。マフィン魔法アカデミーの校則では、親族を亡くした生徒は1年間の休学、卒業生は1年間の魔法の使用停止となっている。つまり、母親の喪が明ける翌年まで、シフォンは魔法が使えないのである。ただし、入学希望者はあくまで「入学希望」という位置づけであり、親族の不幸の有無は関係ないようだ。

『でも、父上の世話を姉様に押し付けたのはマズかったなぁ…』

 故郷に帰っている姉の心配をしつつも、エクレール少年は森の開けた場所に1軒の小さな小屋を見つけた。羊皮紙に記された場所を確認すると、どうやらここに1年間少年の面倒を見る卒業生がいるようだ。期待と不安を同時に抱えながら、見習い魔法使いの少年は小屋のドアをコンコンとノックする。


「ごめんください。僕、エクレール・ブレッドソンと言います!こちらに、ジュリア・テリーヌ・ショコラーデさんはいらっしゃいますか?」



「ギィ…」


 少年の言葉に答えるかの如く、小屋のドアは「ギィ」と音を立てながら開き、まるで少年に中に入るように促すかのように小屋の中がぱっと明るくなった。少年は少々疑心暗鬼になりかけるが、羊皮紙に記された場所はここで間違いないと確信し、小屋に入った。


「バタン!!!」


 少年が小屋に入ると、小屋のドアは音を立てて閉まり、まるで少年をもてなすかのように、テーブルに2人分の食事が用意される。

「ひ…ひぃっ…」

 人間界で言うホラー映画を見ているような恐怖感を覚えたエクレール少年だが、きっと卒業生による魔法だと確信した少年はぐっと息を呑む。


「エクレール・ブレッドソンです!!!ジュリア・テリーヌ・ショコラーデさん、居たら返事してください!!!!!」


「パチパチパチ…」


 小屋の壁にかけられている肖像画から拍手が響き渡ると、肖像画は齢15ぐらいの魔法少女に変化した。マフィン魔法アカデミーの制服に、チョコレート色のロングヘアーからのぞく赤いインナーカラー…息もできない程の間隔を覚えた少年は、思わず腰を抜かしてしまった。

「良いお返事やな…エクレール・ブレッドソンはん。ウチがジュリア・テリーヌ・ショコラーデや!今日からよろしゅうな?」

 まるで朝焼けのような紫色の瞳に、エクレール少年は思わず言葉を失ってしまった。


「ウチの修行は厳しゅうなるで?せいぜいきばりや。」

15歳編はここで終わりです。

次回から16歳編へ入ります。

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