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家族の絆と地獄への道

段々と足音と声が近づいて来ているため王族達は作戦室に入ろうとしているみたいだ。


「ルーカス!どうするっ竜の出現に王族の接近!」

「くっ!この状況で続けるのは不可能だ!神眼を解いたから取り敢えず逃げるぞオーウェン!」


ルーカスと素早く情報共有をし、作戦室を出ようとしたらちょうど王族達と鉢合わせになってしまった。


「ルーカス!何故お前がここに…!」

「なんでルーカスが!」

「ち、父上。兄上。」

「うっ、ここは…」

「ひゃあ!シュバルツ将軍!」


ルーカスが神眼を解除したため将軍の意識が戻ってしまった。そしてルーカスの母に拘束していた将軍達がバレた。ますます俺らの逃げ場はなくなった。俺らは諦め逃亡を断念した。元々この世界に未練はないのだ。それに俺みたいな人はいつ死んでもいいだろう。作戦室で現王は厳しい目で俺らを見ると問い詰めて来た。


「どういうことだルーカス。それにジェルディア家のオーウェン君もいるじゃないか。」

「父上、騎士団は俺ら二人の様ないらない出来損ないな穢らわしい子供に負けるのですよ?この国はやっぱり衰えてきている!」

「なっ!何を言っているルーカス!」


ルーカスと現王の口論が始まった時とてつもなく大きな音が鳴った。


「陛下!竜が近づいて来ます!」


竜が近づいて来た様だった。

現王は舌打ちをすると団長や将軍を解放し、竜の討伐に向かった。副団長達は使い物にならない様だった。俺のせいで。


「暴走した大規模な竜がこちらに向かっている!竜は複数いる様だっ総員討伐を命じる!」

「「「「「「「はっ!」」」」」」」

「ルーカス達は私の近くに来なさい。」

「「はい」」


俺とルーカスは現王の側に行くと全員で作戦室を出た。空を見上げると複数の大きな竜が舞っていた。


「お前達は後で問い詰める。今はここにいて安全を考えろ。」


現王はそういうと騎士団と一緒に討伐に向かった。


「ルーカス、どうしたの?何がしたかったの?」


ルーカスの母であるクリスティーナ様がルーカスに話しかけた。


「…」

「ルーカス、兄である私にも話して欲しい。そこのオーウェン君も。」


第一王子で正妃アン様の子であるルーカスの兄ルイス王子も話しかけて来た。


「…私はこの国の現状が嫌いだ。ただ、帝国の出であるだけで母上が差別され、帝国の血を引くだけで私が差別される。その他に王族の固有スキルの神がつく洗脳スキルを持つだけで信じて貰えず、努力しているのに固有スキルのせいにされる。兄様だって努力と才能を磨いたのに固有スキルで片付けられる。オーウェンだって素晴らしい能力なのにただそれだけで敬遠される。おかしい、腐っている!だからお前らが怖がり、差別した俺達が必要不可欠である国にしたら変わると思ったんだ。愛されると、必要とされると、穢らわしくもなくなる思ったんだよ。」


ルーカスは吐き捨てる様に言った。

討伐によりすごい風が吹き俺は思わず目を瞑った。そうしたらいつの間にか現王が近くにいた。討伐が少し落ち着いたため少し戻って来た様だった。そして、先程のルーカスの放った言葉も聞いていた様だった。

現王はルーカスの肩を掴むとルーカスの目を覗き込み言った。


「ルーカス、すまなかった。私の力不足で差別なんかを受けさせてしまい、本当にすまなかった。だが、私達はルーカスを愛している。必要としている。ルーカスは穢らわしくも、おかしくも、出来損ないでもない。ルーカスは私達の大事な家族だ。私達はルーカスをいらないと思ったことなど一度もない。」

「そうだよ。ルーカスを私は兄として愛している。」

「もちろん私もよ、ルーカス。」


ルーカスへの王族の言葉をルーカスは涙ぐみながら否定する。


「そんなわけない!父上は帝国の血を引く俺が洗脳スキルを持って生まれてしまったから俺の固有スキルを発表しなかったんだろ!兄上だって洗脳スキルを持つ人間は一人しかいらないから俺が邪魔だろう。ありえない、ありえないんだよ。」

「ルーカス!目を覚ませ!たしかに私はルーカスの固有スキルを公表しなかった。しかし、それは…」

「私がお願いしたのよルーカス。」

「は、母上が…」

「えぇ。ルーカスの神眼を知った人で帝国の血を引くからと言って利用する人が出るかもしれなかったから発表を遅れさせてもらったの。だからカベルウィンド様は貴方を嫌って発表しなかったわけではないのよ。」

「そ、そんなわけ…」

「ルーカス、ごめんね。たった一人の兄なのに弟の悩みを分かってあげられなくて。私はルーカスが邪魔だなんて思っていない。しかもたかが固有スキルなんかで兄弟を差別するものか。私はルーカスをとても大切に思っている。」

「兄上、でも俺は…」

「ルーカス、私はこの国の現王カベルウィンド・ヴィルディストだ。その私がルーカスを愛しているというのだ。国民もルーカスを愛してくれるさ。そして勿論、私やクリスティーナなど王族もルーカスを愛している。ずっと愛している。大好きだよ。今まで気づいてあげられなくてごめんな。」


現王はルーカスをそう言って抱きしめた。クリスティーナ様もルイス王子もルーカスを優しい目で見ている。それを俺は悲しい様な嬉しい様な複雑な心境で見ていた。うすうす気が付いてはいた。使用人の態度や現王の態度。ルーカスは俺と違って必要とされ、愛されている。父に呆れられ、母や護衛をわざと傷つけた俺なんかとは違うんだ。

悶々と考えていたら近くで豪音が鳴り響いた。気付いたらルーカスの近くに竜がいた。ちょうどルーカスが離れて一人心境を整理していたためルーカスは一人だった。


「「ルーカス!!!」」

「きゃあっ!ルーカス逃げてっ!」


現王達が慌ててルーカスに叫んだ。そこにはルーカスの他に副団長が近くにいたが俺たちのせいで攻撃できる体制ではない。俺のせいでこのままではルーカスが死んでしまうっ!俺と違いルーカスは必要とされているのにっ…

そしたら剣が飛んできた。飛んできた方向をみると団長のワイアットが他の竜と闘っていた。


「いけ!オーウェン様っ!ルーカス様を助けられるのは今お前だけだ!」


現王達よりルーカスに近い俺しか…


そう思うと深く考えずに剣を取りルーカスに走って向かった。


「ルーカス!!!」


俺は叫びながらルーカスに近づいてルーカスを突き飛ばすと感覚的に剣を振った。俺は剣を習ったことなどないため無茶苦茶に振った。しかし、何故か剣の道筋が分かり竜を容赦なく斬っていった。固有スキルも使った。沢山の爆発が竜に降り注ぎ、竜を死に追い詰めていった。そして俺は竜の返り血で紅く染め上げられた。

温かくて、鉄の様な匂いだ。


「オーウェン!」


ルーカスは俺に勢いよく駆けて近づいて来た。ルーカスに怪我はない様だ。


「ルーカス。」

「オーウェン!何してるんだよ!大丈夫か?血塗れじゃないか。怪我は?」

「落ち着けルーカス。怪我はない。竜の返り血を浴びただけだ。」

「よ、よかった…」


ルーカスと話していると俺は大きな影に気付いた。竜の影だ。ルーカスは気づいていない様で俺を抱きしめて泣いている。俺は友達がいなかったため自分のために心配してくれていると思うと嬉しくて嬉しくて堪らなくなった。だがルーカスは必要とされている。俺と―違って。

だったら犠牲は俺一人で十分だ。必要とされていない、俺一人で―――


「ルーカス、ありがとう。俺、ルーカスと話していると楽しかったみたいだよ。ありがとう。だけどだめじゃないか、ルーカスは必要とされていた。ルーカスは出来損ないでもない。必要としてくれる家族がいるのだからね。身体を大切にしたよね。じゃあね。」

「オーウェンっ?オーウェン!!!」

俺はルーカスに別れを告げるとルーカスを突き飛ばし竜に突っ込んでいった。魔力が少なくなり固有スキルを使うことは不可能だろう。魔力過度吸収体質を上手く使いこなす方法も知らない。

ふふ、地獄にはこの竜と行くみたいだ。


「お手柔らかに、竜さん?」


俺は剣を落とすと微笑みながら魔力を膨大に取り込んだ。俺自身が魔力で爆発したら竜くらい殺せるだろう。さよなら、ルーカス。さよなら父上、母上…

俺は必要とされたかった様だ…


「オーウェンッッッッ!!!!!」


バチバチバチッッッッドドドバーンッッ!!


激しい轟音が鳴り響いた。

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