作戦開始と異常事態
「こちらが訓練所です。」
将軍の案内で訓練所に行くと大勢の大人が軍服で訓練をしていた。俺とルーカスを見て黙礼している訓練をしていない大人四人は団長と班長達だろう。称号をつけているし、指示らしきものを出している。
「いやぁ、それにしてもルーカス王子が軍に興味を持たれるなんて思ってもいませんでしたよ。」
シュバルツ将軍が人当たりのいい笑みで話しかけてきた。
「ああ。オーウェンが軍に興味があると言っていたため、私も気になったのだよ。あとはオーウェンに見せたいと思ったからでしょうかね。オーウェンには感謝しなくてはね。」
「いえいえ。ルーカス王子、こちらこそ訓練を見れる機会を作っていただきありがとうございます。シュバルツ将軍も私も一緒に参加させていただきありがとうございます。」
「とんでもない。騎士団に興味をお持ちいただけるだけで私は嬉しいのですよ。それにしてもお二人は仲がよろしいのですな。」
「二つ歳は離れているが、話が合うので。」
「ルーカス王子は物知りで、お話ししていて楽しいのですよ。」
作戦室の近くに行くと予想通り団長達がいた。
「ルーカス王子、オーウェン様、初めてお目にかかります。現国家騎士団の団長を務めさせて頂いております、ワイアット・カーターで御座います。」
短髪の好青年の様な人。思ったより若い。スティーブと同じくらいだろうか。
「私は副団長を務めさせて頂いております、グレイソン・ラクセリアです。」
少し長めの白髪を下ろし、眼鏡をかけている真面目そうな人。少し鋭い雰囲気を、持っている。五十歳から六十歳の間だろう。
「第一班班長を務めさせて頂いております、カルラ・ミノカネトです。」
「第二班班長を務めさせて頂いております、ジャクソン・ナヤベクトです。」
班長二人は歳がまあまあいっているな。そういえば全然会っていないが、スティーブは第二班の班長だった気がする。最年少でなったにも関わらず何で辞めたのだろうか。スティーブ元気かな。
「第二王子のルーカスだ。」
「よろしくお願いします。ジェルディア公爵家次男のオーウェン・ジェルディアです。」
当たり障りのない挨拶でその場は収まった。しかし、この後の団長ワイアットの一言で俺とルーカスは凍りついた。
「今日は国王陛下とルイス王子が訓練所に後で来るらしいですよ。ルーカス様の母君も後から来るらしいです。今日は王族が殆ど集まりますね。」
うそ…
王族が後からきたら掌握が難しくなる。ただでさえ、団長と班長が勢揃いなのだ。
ならば王族が来る前に終わらせるしかない。
そう思いながらルーカスを見るとルーカスはわかった様で、頷いて返した。
「ちょっと作戦室の中でシュバルツ将軍とワイアットと話したい。」
ルーカスが切り出した。俺は副団長と班長二人の相手だ。
「でしたら、私は副団長様と班長様達と話していても?」
「喜んでお相手いたします。」
ルーカス達が完全に作戦室に入るのを見ると俺は少し離れながら冷静に30秒を数えながら会話した。
「副団長様は何故魔法を?」
「私は子爵の家の出にも関わらず魔力が多いと言われまして、そのまま魔法を使う道を選んだのですよ。」
「あの、爆発を促す魔法はあります?」
「え?ええ、ありますよ。大規模になるだけ大きな魔法陣と魔力を使うため、時間が掛かりますし、高位な魔術師しか使えませんね。」
「では、一瞬で爆破を出来る人がいたら?」
「それはもう地獄のようですな。勝ち目がないし、被害が大きい。その様な人がいたら会っては見たいですが敵対はしたくないですな。」
地獄…か
まさにそのまんまだ。30秒は経っただろう。班長二人は近くに立っている。これなら俺の固有スキルで3人を無効化出来る。
「お話しありがとうございました。そして申し訳ない。」
「え?どういたしましたオーウェン様?」
「ふふ、いえいえ。ここにいましたね?では地獄へようこそ。」
俺は言い放つと固有スキルを素早く発動させた。出来るだけ抑えて、殺さない様、丁寧に無効化だけを考えて―
バーンバチバチバチ!
小さな爆発が起きた。班長二人は上手く当たり気絶している様だ。副団長はまだ意識があるため、もう一度爆発を起こし吹き飛ばしたら意識を手放した。
「オーウェン、早く3人を作戦室の中へ!」
ルーカスが作戦室から出てきた。ルーカスの眼には大量の魔力がこもっていた。それに息切れがすごい。ルーカスの固有スキルは相当反動が大きい様だ。
「わかった!」
元々持っていた拘束具で3人を拘束すると俺は一人ずつ作戦室の中へ引きずり込んだ。作戦室の中に入ると二人が拘束されていた。5人全員一つの場所にまとめると爆発音を聞いた団員が躊躇いながら近づいてきた。
「団長?殿下?どうされました?」
返事がないことを怪しんだのか団員が入ってきた。
「っ!将軍!団長!陛下っどういうことですかっ!?」
「動かないで。団長や将軍を殺すよ?」
「っ!」
他にも団員が来たが団長達を人質に取られているため身動きがとれない様だ。
「要望を呑んで頂けたら、開放いたしますから。私とお話し合いしましょう?」
俺は団員達に話しかけた。作戦通りに進んだ時騒ぎが起こった。
「国王!お逃げください!竜が来ました!暴走中の竜です。しかもとても大きい!!!」
なんと国王達がもう近くにいた様だ。それだけではない。竜が暴走して近づいて来ている。