王子との出会いと地獄への切符
「おはようございます。オーウェン様。」
俺は十二歳になった。七年前、俺は自らの部屋を爆発した。反省の色を見せない事(演技)や、制御できず(わざと発動)たまに爆発を起こす事で俺は公爵家本家のお屋敷から少し離れた別荘に移り住んだ。そのおかげで面倒な王族との交流や、社交会に出ることは少なくなり少し嬉しい。俺はいつの間にか捻くれた正確になったらしい。
段々と周囲からの目線も厳しくなり、次第に俺は孤立していった。
「あいつ、親に見捨てられたんだろ。」
「だって別荘にいるもんな。」
「しっ!一様公爵家の人なのよ。」
「不幸の子なんだって。」
「悪魔じゃない?」
「建物を破壊するんだって。こわいわ」
よく分からない噂が流れ、恐ろしいものを見るような目や、蔑むようなような目が俺に向かってくる。
しかし、それが一番いいだろう。俺の近くに居たら皆んな傷ついてしまうし、俺は壊す事しかできないのだ。
だけど、たまに思う。
こんな俺でも生きやすい、楽しい、認められる、求められる世界にならないだろうか、と。
そして、もう疲れた。俺は何をすればいいのだろうか。ゆっくりと庭のベンチに座り考えていると植木の方から物音がした。
ガサガサガサ バタ ガサ
「わっ!」
植木の方から出てきたのは人だった。しかも、ただの人ではない。
この国の第三王子、ルーカスだ。
シャンパンゴールドの少し長いウェーブのかかった髪に真っ赤な宝石の様な目。甘いマスクで色気の多い、俺の二つ年上の王子。
「あっ!居た。君が噂の破滅の使い手くん?」
愉快そうに、怪しげに、侵入者は俺に話しかけた。
「何の様ですか?血染め王子。」
『血塗れ王子』
第三王子ルーカスのあだ名。
ルーカスの母はルーインラッド帝国の王族だ。
ルーインラッド帝国は過去、この国ルエディア王国の国民を誘拐する事件が多数起きたため国内では評価が悪い。その為、帝国の出の母を持つルーカスの、帝国の王族特有の赤い目を揶揄したあだ名だ。ただ、帝国の母を持つだけで差別される王子は災難でしかないだろう。
「ははっ!破滅の使い手に血塗れと言われるなんて光栄だな。」
「私こそ、王子様に異名で呼ばれるなど光栄ですよ。」
お互い、皮肉で返す。相手の目は注意深く俺を見ている。俺の目も同じような目になっているだろう。
「ねえ、キミ、退屈していない?」
まるで俺を試すようにルーカスは聞いてきた。つまり、この国がつまらなくないかと聞かれているのだろう。だったらそんなの、
「当たり前でしょう。ずっとこの別荘に住んでいるのだから。」
気づかないふりが一番いい。面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。
「えー、まあそうだろうけど。じゃあキミなんで生きてるの?」
そんなの、俺も考えている。
「俺に死んで欲しいと?」
「あはは、違うよ。俺は才能ある奴を怖がる底辺共とは違って、才能ある奴こそが活躍する世界がいいと思っているから。」
「つまり、俺には才能があると?」
「せいかぁーい。だって大きな術式と魔力、時間がかかる大規模な爆発をキミは一人で簡単に出来るんだろ?凄いじゃん。」
「そうでしょうか。」
「そうでしょー。それに、キミもたまに思うだろう?こんな俺でも生きやすい世界にならないだろうかって。ね?」
王子と俺は思考が似ている。そして、この王子は俺の固有スキルを知っているらしい。俺は王子の固有スキルを知らない。第二王子だけ公表されていないのだ。
因みに今、王妃が四人、王子が8人いる。
三年くらい前に第八王子、ノアが生まれた。と、思う。
「俺と組んで国に何をしたいのです?」
惚けるのは飽きたため、確信をついた。それにこの王子は話すのが面倒臭い。取引などに長けているだろう。
「やっぱり、俺が聞きたいこと分かってたねー。そう、こんな生きにくい世界を変えようよ。俺らが必要で必要で堪らなくして、俺らがこの世界の実権を握ろう。」
まるで、無垢な子供の様な笑みで復讐、報復を促した。そして、退屈に身を持て余していた俺の体にゾクゾクとした刺激を与えた。
「具体的に、何を?」
気付いたら言葉を発していた。
ルーカスは目を見開き驚いた後、妖艶に笑った。
「そうだね、まずは国家騎士団の掌握かな?」
『国家騎士団』
いくつかの班があり、王族の護衛から国民の護衛、各地への調査なども行う防犯、政治の要。
そこを掌握したら一気に立ち場が変わる。現に、この国の最高権力者たちが集まる『最高国議会』という会議に騎士団団長や副団長は参加出来る。各班の班長もたまに参加が認められる。
「国家騎士団。成る程、作戦立てるところはどうします?ここにはお忍びで来ているのでしょう?」
「その前に、キミは俺に協力してくれるという事でいいかな?」
「ええ。」
これは国家反逆罪に値するだろう。しかしもう、この世界は飽きた。つまらない、疲れた。だったら、俺は壊そうと思う。この決断は地獄に向かう早道の切符だろうけど。
「だけど、俺の固有スキルを聞いても協力してくれるかな?」
急にルーカスは言い出した。ルーカスの固有スキルはどの様なものなのだろうか。
「固有スキルはなんですか?」
「俺の固有スキルは『神眼」
「神眼…」
第一王子の神声は洗脳作用のある声だから、神眼は洗脳作用のある眼だろうか。そしたら確かに
「恐ろしい。」
「でしょ?」
ルーカスは自嘲気味に言った。
「神眼はお察しの通り魔力を眼に流すことにより、目を合わしている相手を洗脳できる。つまり、キミも洗脳出来るんだよ。」
成る程。ルーカスが言いたいことは分かった。協力すると言ったのは洗脳されたせいなのではないかと言っているのだ。そして、これからも簡単に洗脳が出来るから利用しているだけかもしれない、と。
「それがなんです?貴方はまだ、魔力を流していないはず。洗脳されているせいで分からないかも知れませんが。たしかにそのスキルは貴方を終始疑いの眼に晒す。しかし、俺の固有スキルだっていつでも貴方の命を刈り取ることが可能ですよ?」
舐めないで欲しい。
俺だって地獄に行く覚悟は出来ている。それに洗脳されていても魔力があるだけで俺は爆発を起こせるのだ。
「ははっ。そんなこと言われたのは初めてだよ。じゃあ改めてよろしく。」
「ええ。」
「さっき言っていた作戦立てる場所は俺の王宮の部屋にしよう。目立っちゃうけど…」
「構いませんよ。」
この決断が正しかったかどうかはわからない。この決断の所為で俺は命を晒した。だか後に俺がこの決断を後悔することはなかった。
オーウェンは可愛いとカッコいいの中間
ルーカスは甘いマスクの色気多い、妖艶な雰囲気です。