別れと犠牲
「オーウェン、オーウェン、大丈夫?」
母上の呼び声が聞こえ、僕は目を覚ました。どうやら僕の部屋のベットの上の様だ。
「ははうえ?僕は…」
鈍い頭の痛みと体の痛み、として寝起きであった為、僕は意識がはっきりしていなかった。
「あぁ、オーウェン!よかった。このまま目が覚めないのかと思うと気が気ではなかったわ。スティーブは部屋の外にいるわよ、会いたかった後で会ってちょうだいな。」
だんだん意識がはっきりしていくと、さっきまで起きていたことを思い出した。僕は、部屋を爆発してしまい母上を傷つけてしまって…
「ご、ごめんなさいっ!」
僕は勢いよく謝った。どうしよう、母上に嫌われたかも。どうしよう、見捨てられるかも。
どうしよう、どうしよう、どうしよう…
「いいのよ。あれが貴方の固有スキルなのだもの。私は怪我をしていないし、ねっ。」
母は優しく笑いながら言った。なんて事のない内容だったかもしれない。しかし、僕の心には深く鋭く刺さった。この些細な言葉で僕は八年の年月を母上とギクシャクした関係で過ごすことになった。
「オーウェン?どうしたのかしら、まだ体調悪い?」
「ううん、悪く無いよ。疲れたから少し一人で休んでもいい?」
「勿論よ!ごめんなさいね無理させてしまって。」
母上は快く僕の部屋を出て行ってくれた。
しかし、僕の心は深く沈んだまま。
僕の固有スキルがあんなのだから母上は、僕が人を傷つけるのは普通の人だと思ったのかな。僕は母上の心配をする事も許されないのかな…
悶々と悩んでいた僕は固有スキルや、僕が魔力を吸収した原因を一番詳しく知ってそうな人物を呼んだ。
「スティーブ、部屋に入って。一人でお願い。」
ドアのすぐ近くにいるであろうスティーブを呼んだ。
「畏まりました。失礼いたします。」
予想通りスティーブは礼をしてすぐ入ってきた。
「さっきはごめんね。魔力をたくさん吸収してしまって。」
「全然、大した事ありませんよ。それより、オーウェン様にお怪我がなくてよかったです。」
「ありがとう。あのねスティーブ、固有スキルについて教えて欲しいのだけど…」
スティーブは少し黙って何かを考えていると、顔を上げて承諾してくれた。
「畏まりました。」
「ありがとう!」
(だめ!こんな事で喜ぶな!)
話してくれることに安心した自分を叱咤した。そう、これからが本番。話の後僕はある行動をするのだから。
「オーウェン様は固有スキルについて、どれくらい知っていますか?」
「固有スキルは王族や公爵家の人が多く持つ、魔法を助けたり、特別な魔法を使える様になったりするもの?」
「大体、あっています。
固有スキルはたまに、王族や公爵家では無いものにも現れますが殆どありませんね。因みに私は伯爵家の人間ですので固有スキルは有りません。
固有スキルはこの国に保持者が多い為、この国独自のスキルの様になっていますが、他の国の王族が持って生まれる事も普通にあります。ただ、この国の王族で固有スキルを持って生まれなかった人が一人もいない為、有名になったのかと思われます。」
「固有スキルはどんなものがあるの?」
「そうですね、今の王族の方のスキルを上げてみましょう。
第一王子のルイス様は今十歳ですね。この方もスキルをもう発動されているらしいです。
『神声』これがルイス様のスキルです。」
「神声…どんな能力なの?」
「スキル神声は洗脳作用のある声を魔力を流す事で発する事が出来るスキルです。」
「せんのうってなに?」
「すみません、オーウェン様。洗脳とは相手の思考を改めされる事。つまり、相手を操る様なものです。」
「凄い!他には?」
「第二王子のルーカス様は発表されてませんね。では現王のスキルを上げてみましょう。現王のスキルは『術式解体』です。」
「術式かいたい…どんなスキル?」
「はい、術式解体は魔法式の解体です。つまり、魔法を無効化するスピードが他の人より物凄く早いです。」
「むこうか?」
「えーと、王様には魔法があまり効かないという事です。」
「すご!王様には魔法が効かないんだ!」
「はい。まだ、スキルを上げてみますか?」
「ううん、ありがとう。」
やっぱり色々なスキルがあってとても、強くてカッコイイスキルだ。でも、そろそろ聞きたい事を聞かなくては。
「僕のスキルは?」
スティーブは予想していた様で、少し黙った後教えてくれた。
「オーウェン様の固有スキルは『破壊』だと思われます。」
「破壊…どんなスキル?」
「固有スキル破壊は自らの魔力を爆破させるスキルです。大規模な爆発から、小規模な爆発まで自らの魔力だけで簡単に引き起こすことが可能です。」
「爆発…」
「はい。戦闘に向いており、とても強い固有スキルです。殺傷性が高い固有スキルですが、貴重ですよ。」
スティーブはオーウェンが落ち込んでいるのかと思ったのか、オーウェンの固有スキルの良さを力説した。
しかし、僕は自虐的に笑った。
「殺傷性なんて、求めてないよ…」
前、間違えて使ってしまったナイフで近くにいた鳥を傷つけてしまった事がある。その時、母上に殺傷性のあるナイフだったと言われ、殺傷性の意味を教えてもらった。
「オーウェン様?どうかされましたか?」
幸い、僕の呟きはスティーブに聞かれていなかった様だ。
「なんでもないよ。あと、さっき言っていた魔力かどきゅうしゅうたいしつってなに?」
「魔力過度吸収体質ですね。
魔力過度吸収体質とは人より魔力を多く吸収する体質の人です。
魔力を魔力量より、吸収してしまうのです。それらを抑える魔道具がありますので、後ほど渡します。
普通の人は魔力を空気中の自然なものから吸収するため、寝たり、時間がかかったりしないと魔力が回復しません。しかし、この体質の人は他人や動物からも魔力を吸収する事ができます。
ただ、自らの魔法量よりも多く超えた魔力を吸収してしまうと魔力が暴走します。
また、魔力暴走を起こした場合多くの魔力を吸収してしまいます。しかし使いこなせば他人の魔力を操る事もできる為魔術師には向いている体質ですね。」
「成る程。よく分かった!ありがとう。」
やっぱり、僕の固有スキルと体質は危険だ。いや、誰もが危険がり僕から離れるだろう。異様な目で見られるだろう。父上や母上にも兄上にも迷惑がかかる。それに、拒絶は辛い。だったら、拒絶される前に僕、俺から離れていく。
「今までありがとうスティーブ。さよなら、そしてごめんね。」
俺はスティーブに笑いながら別れを告げた。そして謝罪も。だって俺は俺はこれからスティーブを傷つける。そしてもう、会えないだろう。