検査
「この板に胸をつけて……そう、そのまま立っててね、」
そう言って研究員が部屋を出ていく、
「もういいわよ、楽にして、」
……何処からか研究員の声がする、私は板から離れ、研究員を待つ、
「……うん、左腕と肋骨にヒビが入ってる、でもあの薬を使ってこれなら全然軽傷ね、」
……今、痛くて左腕が全く動かせない位なのに、これで軽傷か……
「556番、骨が治るまで部屋に戻って休養に励みなさい、」
「分かりました」
「今日はもう何もないので、部屋に戻っていいわよ……誰か!部屋に戻してきて!」
今度はマスクを付けた研究員が来る
「……来い、」
私は言われた通り、研究員について行く、
……長い廊下だ、白くて何も無く、ずっと同じ所を歩いているような、奇妙な感覚を覚える、
そういえば、この研究所はどんな所にあるのだろう、この研究所は外が見えないから、今が昼なのか夜なのかも分からない、
そういえば、みなみが外の世界の事を話していた、みなみが言うには、外には色んなものがあると言っていた、
天と地を繋ぐコンクリートの柱、そしてその柱には人が住む所があったり、大きな湖と呼ばれる所があったり、人を運ぶ箱が動いてたり、
1度でいいから、みなみと一緒に見てみたい、
「着いたぞ、入れ」
……いつの間にか部屋に戻っていたようだ、私は素直に部屋に入る、
「こころおかえり!」
「……ただいま、なんでいるの?」
「えーひどーい、いちゃダメ?」
「…………」
「あれっ?」
「で、なんでいるの?」
「今日はもう、実験終わりって帰されたの、」
珍しい……みなみはいつも私より先にいなくなって、私より後に帰って来るって事が多い、でも最近は私より早い事がよくある……
「そうだ、今日ね、ぱんもらった!」
「……ん?」
パン?あの外の人達が食べているという……
「はい、半分あげる」
「え……あ、ありがと……」
……パン……小麦を焼いたものだと言うからもっと植物っぽい物だと思ったが……なんか……薄い茶色?……中は……白い……
「……固い」
「でもいつものより美味しいよ、」
「うん、」
まぁいつもの食事は栄養満点のゼリー状の何かとか部屋の水道から出る水とかだ、それと比べたらましな方だ、
「果物食べたい」
「彼処の研究員に言ったらくれるかもしれないよ?」
「無理だよ、あれは私達を人として見てないね」
……確かに……
「ねえ、こころ?」
「なに?」
「外の世界が見られる方法があるとしたらどうする?」
……なんでそんな話をするのだろうか……うーん、?
「もしそんな方法があるなら、2人で……」
「え!2人で、何?」
「……なんでもない……」
「えー、」
もし外に行けるのなら……一緒に……