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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

世界の終わりが来る事が見えたから将来は山暮らしと決めている

作者: セロリア

バージニア皇国。


四季がある国。


山も海もあり、広大な森も沢山ある豊かな国だ。


国王と王女との間に生まれた長男。


それが、本作の主人公、シュタイナー・ヘンドリクセン・バージニア。


愛称はシュタインと呼ばれている。


次男、三男と続いた為、後継ぎ問題が出てくる。


産まれて直ぐ、儀式により、才能が鑑定され、長男は賢者と錬金術、植物を操るスキルを持っていた。


賢者の部分に大層喜んだ両親。


しかし。


本物の天才とは、親の道具にはならない者だ。


シュタインは放蕩息子だった。


勉強はやらない。


習い事は意地でもやらない。


何度物置小屋に折檻で閉じ込められようとも、絶対に反抗した。


両親は諦め、次男に愛情を注ぐようになった。


次男は長男を庇うが、本人はそんな次男を殴る。


それでも次男は長男を庇う。


両親は何故そこまでシュタインを庇うのか次男に聞くが、次男は答えない。


シュタインを殴ろうとする父を、次男は止める。


シュタインは含み笑い。


益々怒る父。


それでも、庇う次男。


その理由は、以前、大型熊魔獣が幼稚園近くに現れた時だ。


次男は探知魔法が得意だったから、直ぐに理解した。


巨大な魔獣と何かが、今ぶつかる寸前だという事。


そして、魔獣の方が殺られる可能性が高い事。


急いで先生に説明するが、しどろもどろしている間に、戦闘は始まり、そして一瞬にして終わった。


何ともなかった様子で、シュタインが幼稚園に現れる。


次男「何してたの?」


シュタイン「うんこ」


それだけの会話だった。


でも、そんな兄を誇らしく思った。


しかし、日に日にシュタインの様子は変わった。


乱暴者になっていったのだ。


放蕩息子を演じているようだった。


そして、問い詰めても、乱暴な拳しか返って来なかった。


5歳。


教会で、正式な職業を貰う。


シュタインの賢者は消えていた。


隠蔽したのだ。


両親はかんかん。


そのタイミングで、冒険者になりたいと伝えるシュタイン。


次男はこれが答えか?と思った。


国王「冒険者になるなら、昔世話になったギルドに預ける、好きに生きろ、次男に国王は継がせる、次男の創造魔法は凄い、きっと素晴らしい王になる、お前と違ってな!」


出家5歳。


シュタインは迎えの馬車に揺られ、王都の最南西部の最大ダンジョン、龍の鱗と呼ばれる岩山の近くにある要塞都市、サイゴンに送られた。


サイゴンはモンスター行進災害が起きた時に王都を護る壁の役割を担っている。



出ていく時、次男はシュタインにあの時、うんこじゃなくて魔獣退治してくれて、ありがとうと言った。


するとシュタインは、次男を抱き寄せた。


シュタイン「世界は終わる、大陸が移動し、海が広くなる、50年以内だ、だから、悔いのない人生を生きろ、立派に生きるも善し、暴君になるも善し、好きにやれ、じゃあな」


次男「え!?待って兄さん!」


シュタイン「お前は貴族の生活からは抜け出せない」


次男「!・・」


シュタイン「お前はこっちの生活は無理だ、少しでも、幸せな時間を生きろ、じゃあな」


次男「あ・・」


扉が閉まった。






シュタインはサイゴンのギルド長に多額の魔石を支払った。


シュタイン「俺の目的は、カノラン山で農業をしながら、自給自足な生活をする事です」


ギルド長「確かにあそこは未開だが、A~Sランクのモンスターがうじゃうじゃ出るぜ?」


シュタイン「はい、構いません、強くなりますから、お金は心配していません、ただ、俺の目的を伝えたのは、俺が、地位、名誉、金に興味がなく、後継ぎを わ ざ と 蹴ったという事を初めに知っといて貰いたかったからです」


ギルド長「・・君は聡明なようだ、何か深い訳があるんだろう?話してくれないか?」


シュタイン「言ってもどうせ信じないから言いません」


ギルド長「は!おいおい!それじゃ聞いてくださいって言うのと変わらんぜ?」


シュタイン「・・後50年で、この世界は滅びます、少数が生き残りますが、だから、カノラン山に避難計画を建てました、以上です」


ギルド長「未来が見えた、と?」


シュタイン「可能性です」


ギルド長「いやあ、想像以上だなあ、こりゃあ、ははは」


シュタイン「構いませんよ、あなたの反応は知ってましたから」


ギルド長「言うねえ、んじゃ、明日はこのギルドで何人死ぬ?当ててくれたら考えるがよ?」


シュタイン「・・そんな小さい事見えませんよ、そもそも俺のは未来視ではないと、可能性と言ってます」


ギルド長「可能性可能性って・・そんなん・・俺でも言えるが?」


シュタイン「そうですね」


ギルド長「はあ・・解った、とにかく、お前は、一人前の冒険者になって、Sランクにまで登って、カノラン山へ移住したい、そうだな?」


シュタイン「はい」


ギルド長「よく解ったよ、取り敢えず、冒険者になるまでは、このギルドに寝泊まりするといい」


シュタイン「今日試験を受けたいです」


ギルド長「は?」




シュタイン試験歴代トップ合格のところ、改竄。


シュタインまあまあの成績で合格、という事に。


Eランク冒険者として、5歳、ギルドから依頼を受け、完了し、ギルドに帰宅の毎日。


大量の報償金。


当然狙われたが、生き物専用アイテムボックスにより、全て殺さず捕縛。


シュタインのお陰でかなり治安が安定。


しかし、功績は全てギルド治安部隊に譲るシュタイン。


かなりのお金がどんどん貯まっていくが、魔石収集、ドワーフ、薬師から様々な技術を学ぶ毎日。


お金は殆どそれらと、生活費、家賃、魔術本に消えた。


一酸化炭素が出ない火の魔石収集には特に感心が高い。


火の魔石と水の魔石を用いた蒸気タービンエンジン開発成功。


新しい文明の為に。


シュタインは技術の収集、開発を促進していた。


あまり難しい技術は本に残す程度に止め、一般人にでも扱える技術を出来るだけ開発していく。


魔力は遥か地下に潜るから。


魔力無しで生活出来るように。


汗を拭う。


油圧、開発成功。


ポンプ、ろ過、フィルター、ダム、橋、船、それらの技術を大まかに分けられた本棚達。


本の技術では足りない部分を書き足していく。




20年経過。


シュタイン、25歳。


カノラン山視察。


気配遮断。


果実が沢山。


きのこ、薬草、沢山。


獣、沢山。


それらを確認、採取しながら、着いた。


山の主、龍の家族が住む頂上火口の凍った湖の岸部。


吹雪の中。


龍父「ん?」


シュタインは土下座した状態で、気配を現した。


龍父「・・何の用だ、人間、喰うぞ」


フードを脱ぎ、顔を晒す。


シュタイン「私は嘘はつきません、話して良いですか?」


龍父「・・許す、申せ、賢者よ」


シュタイン「・・ありがとうございます、では、申し上げます、残り30年以内に地殻の大移動が起こります、ここしか安全な地がないのです、どうか私と私が認める人間を、この山の中程にある廃村へ住む事、許可を頂きたく参りました」


龍父「・・」


龍母「あなた?何か臭いわね、何かしら?あら?人間?」


龍長男「人間だあ!初めて見たあ!触って良い?」


龍次男「僕も触る!食べて良い?美味しい?」


龍父「あっちへ行ってなさい」


龍母「あなた・・」


龍父「大丈夫、 こ の 人 間 は 無害だよ、さあ」


龍母「・・人間よ、何かしたら滅ぼします、良いですね?」


シュタイン「御意」


益々頭を下げる。


龍母「はあ、解りました、触ったら駄目よ、病気になるわ、ほら、あっちへ行きますよ」


龍兄弟『ぶーぶー』


龍父「・・さて・・どうしたものか」


シュタイン「・・龍も病気になるのならば、我々の薬に関する知識が、役立つと存じます、例え、魔力がこの地上から消えても」


龍父「?どういう意味だ?」


シュタイン「魔力の源は地下の世界樹と、昔に死んだ魔獣らの魔石が原因ですが、地殻変動により、それらはもっと深く潜ってしまいます、そうなれば、この地上からは魔力は無くなります」


龍父「ダンジョンも無くなると?」


シュタイン「はい」


龍父「そうなれば、私達はどうなる?」


シュタイン「年を取る速度が増すかと」


龍父「魔法は?」


シュタイン「徐々に使えなくなるかと、それと、寿命を犠牲にしながらかと」


龍父「・・人間はどうなる?」


シュタイン「魔獣が居なくなり、天敵が居なくなり、益々栄えるかと」


龍父「・・そうか」


シュタイン「は」


龍父「・・人間は・・強いな」


シュタイン「・・」


龍父「・・あい解った、居住を許す、が、条件がある」


シュタイン「は!なんなりと」


龍父「息子達の墓を、建てて欲しい、出来れば、我々龍族が存在したと、後世に伝わるような形で、それから移住は1000人までだ、それ以上は一人たりとも許さん、妊婦が居る場合は、お腹の子供は数に入れなくて良い」


シュタイン「はは!畏まりました!」


龍父「・・そうか、では、取引成立だな、帰れ」


シュタイン「はは!失礼します!」




かなり古い、岩山をくり貫いた廃村だ。


魔法で片付けていく。


持ってきた物資を次々に取り敢えず置いていく。


細かい整理は後回し。


大まかに、食料、書類、本、魔石、道具、どんどん置いていく。


村の本部にする予定の穴にはもう入らない。


錬金術魔法により、住みやすい穴を掘る。


本部倉庫をもっと大きくする為だ。


地上にも屋敷を建てた。


凄く巨大な屋敷だ。


シュタイン「よし、まあまあかな、魔法が使える内に建設はしとかないとな」


病院、雨水処理上水道、下水道、浄化層工場、鍛冶工場、油分解バクテリア処理施設、魔物が絶滅してからも、星を汚さないようにと、シュタインは頑張った。


5年後。


シュタイン30歳。


Sランク冒険者達が無人発展街を見つけた。


結界を張っていたのだが、見破られた、流石一流冒険者。


街道を進む冒険者達。


槍男「まじかよ・・」


魔法使い女「魔王の街なの?」


剣士男「信じられん、本当に街だ」


弓エルフ男「・・何なんだこれは」


聖女「・・怖いです」


ドワーフ男「何だか知らんが怪しいな、全部ぶっ壊すか?」


シュタイン「止めてください」


皆『!?』


後ろにシュタインの姿が現れた。


剣士「敵か?」


シュタイン「どちらでもない、この街は看板まで、全て僕の手作りなんだ、壊さないでください」


剣士「何故こんな街を作った?」


シュタイン「後25年以内にこの星に大変動が起き、巨大な地震が起きます、この街は、その時偶然選ばれた者達の避難場所です」


聖女「その事は国王はご存知なのですか?」


シュタイン「いえ、知りません、全て僕の独断と予測です」


聖女「?予測?未来を見たのではないの?」


シュタイン「はい、あくまでも、僕個人の予測です」


魔法使い「あんた何歳?凄く若く見えるけど」


シュタイン「30歳になりますが、見た目は26歳に留めるようにしています」


聖女「・・ただの予測でここまで大規模な街を作るには余程な確信が無ければ出来ません、その確信の元は何ですか?」


シュタイン「占星術を用いた、精霊占いです」


聖女「災害なら的中率100と謳われる、アレですね?」


シュタイン「はい、何度も詳しく占いました、国の行く末を占い、結果は最悪、他の国も占いましたが、同じ時期に結果は最悪となりました」


聖女「その時期とは?」


シュタイン「大体50年の誤差があるとされています、もう正直いつ起きてもおかしくありません、今日かもしれないし、明日かも、25年後かも」


魔法使い女「それ精度本当に100%なの?だったら、国王にその事を知らせたの?」


シュタイン「いいえ、わざと知らせていません」


魔法使い女「どういう事?」


シュタイン「このカノラン山の頂上には、龍族の伝説、白の英雄が住んでいます、当然大規模移住は、彼らが許す筈がありません、無理に移住するには、まず国の騎士や、Sランク冒険者達が彼らを滅ぼそうとするでしょう、しかし、それをされては困るのです」


剣士「というと?」


シュタイン「世界が海に沈む、そんな世界で生活するには、彼らのように、頂上付近に住む羽龍の協力なくしては生活出来ません、船は簡単に沈むからです、海底からはガスが吹き上がっていて、泡で船は簡単に沈みます、他の羽龍では駄目なのです、魔力がない人間が空を飛ぶ、そんな機械を発明しない段階ではね」


剣士「住み分けか?」


シュタイン「いいえ、星は温暖化します、その後急激に寒冷化します、普通の羽龍では寒冷化に対応出来ず死んでしまいます、これが、生活の為に彼らが必要な理由です」


剣士「成る程、理解した、用は大規模移住は出来ない、そういう事だな?、何人までなら良いんだ?」


シュタイン「1000人まで」


聖女「少ない!これだけの設備、1万、いえ、2万はいけます!」


シュタイン「人は増えます、勝手にね、それに、治安維持部隊もないですし、治安が保てません」


聖女「騎士団を治安維持部隊にすれば」


シュタイン「そういう問題ではありません、白羽龍様が、1000人までと仰いました、妊婦さんのお腹の人間は数には入りません」


聖女「うぐ!?」


剣士「具体的にどうやって決めるのだ?その・・移住権利というのは?金か?」


シュタイン「移住を決めるのは私ではありません、神が決めます」


剣士「・・解るように頼む」


シュタイン「私のように、本能が訴える人々が居る筈、どうしようもなく、この山に住みたいと願う人々です、放っておいても来ますよ、ところで、あなた方はどうしてわざわざこんな危険な森へ?」


聖女「依頼を終えた後、迷ってしまったんです、この山は起伏が激しく、下っているつもりがいつの間にか登っていたようで」


剣士「そういう事だ」


シュタイン「お導きでしょう、どうですか?帰らずに、このまま移住しませんか?」


皆『・・』


シュタイン「体が弱い人はどちらにせよ、ここでは長生き出来ません、下界の方が幸せな時間を多く取れるでしょう、よくよく考えて下さい、それから、大量に騎士やら、商人やらを連れてきた場合、絶界を使い、隔離します、私には出来ます」


剣士「今ここでお前を殺す方が良いか?」


シュタイン「私を殺し、大規模移住を始めたら、白羽龍達の理解は得られず戦争になります、白羽龍達を全滅させれば、寒冷化に耐えられず、輸送手段が閉ざされます、船は直ぐに沈むからです」


剣士「泡で船が沈むとは・・本当か?」


聖女に聞く。


聖女「・・解りませんが、確かに船の構造上、泡で持ち上げられたら・・沈む可能性は高いですね、左右の海面の高さが変わっても沈むでしょうし」


シュタイン「そういう事です」


剣士「・・大体がよ、この話自体眉唾だ、世界が終わる?は!馬鹿馬鹿しい」


魔法使い女「そうよそうよ!こんな終末論、酔っぱらいの戯れ言よ、もう帰ろう?」


帰っていった。


シュタイン「・・」


エルフ男弓使いが2週間後、帰って来た。


エルフ男「宜しく頼む」


エルフ男は綺麗なエルフ奥さんを連れて来た。


シュタイン「はい、部屋はこちらです」


エルフ男「ありがとう」


エルフ奥さん「ありがとうございます」


翌日、剣士男が来た。


人間の小さい娘ら3人を連れて。


剣士「流れで、俺が面倒見る事になった子供達だ、孤児でな、体は丈夫な子達だ、だからー」


シュタイン「はい、部屋はこちらです」


剣士男「~~・・すまん」


シュタイン「導きのままに」


その3日後魔法使い女が来た。


剣士を追って来たようだった。


二人で何かを話している。


最後は抱き合った事から、女の告白は成功したようだった。


聖女がその夜に来た。


教会をクビになったと泣きついてきた。


シュタイン「お、落ち着いて」


聖女「天啓部門では既に破滅が予兆されていたんですう!それなのに、それなのにい!教会は責任を取る事を恐れ隠蔽してたんですう!わたしが国王へ進言出来る筈もなく・・こんな悔しい事がありますかあ!?」


シュタイン「はい、そうですね、あなたは良く頑張りました、偉い偉い 〈ナデナデ〉」


聖女「ああん、シュタインさん優しい!うにゃあん」


聖女は孤児院の子供達15人連れて来ていた。


聖女はテレポート出来るらしい。


槍男も彼女を連れて来た。


ドワーフ男も大家族を連れて来た。


高価なテレポート石を使って、結局皆来た。


そして、有名な冒険者パーティーが消えた事で、噂が噂を呼び、魔法使い女がお婆ちゃんに口走った終末論が広がっていった。


その噂を聞いた王子三男。


興味本位でお婆ちゃんを尋問。


場所を聞き出す。


カノラン山中腹にある廃村。


歴史を調べてもそんな場所は出てこない。


騎士団編成。


その騎士団編成を邪魔したのが、次男。


次男「辞めるんだ!シュタイン兄さんが黙ってるなら、理由があるんだ!辞めるんだ!」


三男「うるせえ!この国を捨てた奴を兄さんなんて呼ぶな!お前だって兄さんだったら、兄さんだったらって良く言ってんじゃねえか!恨んでるんだろ!ああ?好き勝手生きてる兄貴もどきをよお!?」


次男「お前は何も解ってない、兄さんの強さも、誇りも、わざわざ嫌がらせの為に兄さんに関わるな、あの人は我々凡人とは違うんだ、関わるな」


三男「うるせえ!お前の指図は受けねえ!行くぞ!許可無しに街を作りやがって・・全部奪ってやる!女も!金も!街も!全て俺んだ!!」


次男「・・ふう」


椅子に座り直す。


次男「父上が死んで半年・・兄さん・・終末論なんか広めてどうしたいんだ?・・兄さん」


名のある冒険者達が一回見学に来て、次に親しい人々を連れて来るサイクルが増えた。


ゴブリン村ごと連れて来て良いか?と訊かれたが、魔力はなくなるから、どうせ長生き出来ないと聞かせられると、諦めた。


名簿は、あっという間に900人を越えた。


見学者に移住するつもりがある予約人数を別の台帳へ記入させる。


その時点で残り32枠。


その時。


門に騎士団が来たと駆け込んで来たエルフ弓男。


門外。


シュタイン「何か用?エルバ」


エルバ「・・こんな辺鄙な街で一生過ごすつもりか?」


シュタイン「何か用?」


エルバ「この街は税金を納めていない、よって、全て我が騎士団が没収する!この男は逆賊ぞ!引っ捕らえろ!終末論を吹聴しているのもこの男だ!混乱を招いたこいつだ!」


シュタイン「・・」


《シーーーーーーーン》


エルバ「?どうした?早く動かんかあ!」


騎士団『あ・・ぐ・・あ・・ぎぐふ・・』


200人の騎士団が全く動けない。


エルバ「どうした!?おい!?」


シュタイン「無駄だよ、縛ったから、彼らは動けない、気道は縛ってないから、息は出来てる」


エルバ「何だと・・馬鹿な!?魔法障壁は起動していない・・何故だ!?」


シュタイン「魔法というのは、科学なんだ、エルバ、仕組みが解れば、簡単に侵入出来る、それだけだ」


エルバ「~~・・こんな力がある癖に!!何で祖国を裏切る真似をする!何がお前を動かす!?敵国へ加担する訳でもなし!何がしたいんだお前はあ!!?」


シュタイン「俺はただ、役に立ちたい、それだけだ」


エルバ「何?」


シュタイン「もう少しでこの世界は終わる、お前も悔いのない人生をな、残念だよ、エルバ、200人は定員オーバーだ」


エルバ「は?」


シュタイン「絶界」


《パッ》


エルバ「は?」


エルバの目の前から街、門、シュタインが消えた。





この日、予約していた者達は絶望へ落とされた。


白の街、行方不明。


そこへ通じていた登山道も、何故か消え、森と、魔獣に閉ざされた。


しかし、消えたように見えているだけで、ちゃんと白の街は存在していた。


だが、そこへたどり着く事は不可能に近くなってしまっただけだ。


9年後。


シュタイン39歳。


屋敷で聖女とイチャイチャしていたら、突然巨大地震。


シュタイン「来た!!大丈夫、地震対策は万全だ!」


聖女「はいいいい!!」





王都。


次男「報告は!?被害状況は?」


秘書男「は、現在船は全て沖に向かい走らせています、民もできるだけ高い場所に避難させており、陛下も一刻も早く高所へ避難をお願いします」


次男「避難だと?この国にこの場所より高い場所があるのか?」


秘書男「カノラン山しか無いかと」


次男「なんという事か・・兄さんの言った通りにしておけば」


秘書男「さ!お早く!」



飛行船に乗り込む次男、三男、その妻達と、臣下達。


飛行船から見えた光景は、悪夢、地獄。


夕飯時だった事が災いし、巨大な火災旋風が発生、川が煮えている。


川に飛び込んだ人々が浮いていく。


瓦礫にくっついてゆく人々。


皮膚が剥がれ、燃えていく。



その地獄を更に深い地獄へ誘う、海の壁。


秘書男「馬鹿な・・あの水門は20はあるのに・・10倍、いや、それ以上はあるぞ!?」


次男「終わりだ・・国とか・・小さい事だったのだ・・世界が今日、終わったのだ」


秘書男「カノラン山へ向かいますか?」


次男「・・ああ、そうだな・・兄さんに謝らなくては」







白の街は1キロ下にまで来た海面に怯えていた。


しかし、シュタインが言うにはまだまだ海面は上がるらしい。


最終的にはギリギリかもしれないという事。


子供達だけではなく、大人達にも街の外には行かないように徹底させた。






飛行船が森上空へ入った。


様々な羽龍が群れで襲ってくる。


防御魔法により無事に飛行していたが、白羽龍の10匹同時氷息吹きにより、防御魔法ごと氷に閉ざされた。


防御魔法内部の酸素が消費されていく。


浮くためのガス燃焼が原因だ。


かといって着陸する為にヘリウムを放出すれば、毒ガスとなる。


どうしようもなく燃焼は続き、やがて一酸化炭素中毒へ。


一か八かという判断により、防御魔法を解除。


氷の重みで墜落。


船内へ冷気が雪崩れ込む。


あっという間に肺も凍り、全員死亡。


次男「兄さん・・助け・・〈パキパキパキ〉


エルバ「畜生、ちくし〈パキパキパキ〉




ふと呼ばれたような気がして、窓から外を見るシュタイン。


シュタイン「死んだ頃か・・王様・・大規模移住出来ない時点で、お前の役目は民を愛する時間を過ごす事だけだった・・さよなら、バビロン、贅沢な暮らしを出来ただろう?さようなら」






世界はカノラン山を中心に大陸が移動、沈み、隆起した。



津波を乗りきった船らも巨大な泡々により沈んだ。


燃える泡。


海は光の斑点により、夜中でも綺麗だ。


海底が光る。


その姿はまさしく神秘。



白羽龍らと共に魚をとる日々。


各国の山々に住んでいる民族らと空の貿易。


プロペラを回す事で得られる浮力により、有人ドローン開発に成功。


それを巨大化し、6人乗り、12人乗り、貨物用、順次出荷。


各国は国を一つにするべきと議会で話し合い、評議会が決定。


カノラン山の白の街を本拠地とし、病院、教育、運搬、何もかも無料へ。


それぞれの文化は大事にするが、宗教は基本的廃止。


他人に強要しない限りはこの限りではない。


しかし、経済的に困窮が無い世界に、神頼みをする人は珍しいが、やはり人は何かにすがらないと生きてはいけないらしい。


カノラン山の白羽龍への信仰が一番押し。


大きな神殿が出来た。






やがて、寒冷化が来た。


備えは万全だったが、それでも海の表面は凍り、海面から下5Mは凍った為、食料調達は厳しいモノがあった。


それでも、白の街直ぐ下の海面凍りで、雪遊びをする子供達。


微笑ましく、逞しい光景だ。


洞窟内には牧場があり、大きな動物達と、木々が生い茂る。


ダンジョン核を持ってきたのだ。


モンスター管理をすれは、大丈夫。



聖女とシュタインの間に出来た子供達はすっかり大人になり、一番賢い長女が評議会メンバー入りになった。


白羽龍の最後の子供の魔力が尽きて死んだ頃、雪溶けが始まった。


表面は凍りの世界でも、海底は激熱の世界。


新しい大陸、島々が隆起していたらしい。


白の世界から、カラフルな世界に移行するまで60年かかった。


カラフル世界が映る瞳に新しい大陸が見える。


魔獣は絶滅し、魔法も潰えた。


しかし、人間と、魔力を捨てる進化を遂げた動植物達だけが、適応し、生き残った。




シュタイン、92歳。


小春日和り。


白いシルク布屋根だけテントの下。


沢山の孫達に囲まれ、寝息を立てる年寄り聖女が隣に居る。


シュタイン「・・」


少し冷たい風が眠気を強くする。


シュタインのお腹にも、ひ孫がうつ伏せで寝ている。


シュタイン「これ」


シュタインの部下を呼ぶ。


部下男「は」


シュタイン「わしはもう寝るでな、後の事は遺言通りにな」


部下男「!?・・・・・・・・・・御意に」


涙を堪える。


シュタイン「ほ、心配するな、こんな風に行けるとは・・わしは・・幸せもー・・」


春の冷たい風が花びらを舞い上げ、魂を連れて行った。












葬式。



泣き叫ぶ年寄り聖女。


泣きじゃくる孫達。


葬式会食は異例の中止となるところを、第一王女60歳が無理矢理開いた。


第一王女「わしが死んだら、豪華な料理で送ってくれ、遺言、果たしましたわ、お父様」


第一王女の夫「無理してない?ほら、おいで」


第一王女は膝から崩れ、胸の中で、泣きつかれて気絶した。




カノラン山王朝は今もなお、栄えている。


歴史改竄は一切行われていない事が、カノラン王朝の誇りになり、それが、民達の規律となっている。


第一王女「まだまだ世界は発展途上です、魔力が無くなっても、科学があります、人は、宇宙にも行けるらしいです!さあ!頑張りましょう!」


評議会『はい!やったりますよ!楽しみですなあ!』



窓の外をみる。


第一王女「お父様、見ていて下さい、必ずや、世界政府維持の材料を揃えて見せますから!」






第一王女の寝室。


壁にある額縁にある遺書。




遺書〈好きにやりなさい、好きに生きなさい、結果は誰にも分からないから。オリヴァに全ての全権をここに譲る〉



オリヴァ「お父様、私、好きに生きてます」



部下「黒人娼婦奴隷市場を発見したと連絡入りました!」



オリヴァ「直ちに鎮圧しなさい、犯人らは全て生け捕りに、上の人間を吐かせなさい!必ずです!」


部下「はは!」


オリヴァ「こんな世界になっても、差別は無くならないのは、貧困や、鬱憤等は言い訳にしかなりません、貧困はお父様が撲滅したのですから!本音は悪業をしたいだけ!ただ、それだけ!そんな輩に同情の余地はありません!全て明らかにした後、死刑にします!」


部下「はは!」




カラフルな世界。


海は青い。


少し大きい鳥が飛んでいる。


バラバラな島々たか、新しく一つの国となった土地達。


大きい動物も沢山居る。


この国は発展していくだろう。


国を動かす者達だけでなく、国民の大半が、差別と、犯罪と、戦う意思を持っているのだから。


王都の崖、下は荒波。


崖に鳥の巣が沢山。


鳥の巣から雛が巣立っている。


ひ孫1「あ!飛んだ!ねえ!飛んだよ!?あ!あっちも!」


世話役メイド「はい!凄いですね!」


ひ孫1「僕大きくなったら飛行士になりたいんだ!」


世話役メイド「まあ!それは凄いです!今は身分で仕事は決まらないですし、良いと思います!頑張ってくださいねアラン様!」


アラン「うん!頑張るぞー!!」


巣立ち小鳥「ピィィーーウイ」




《END》



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[一言] 宇宙へフレー\(^o^)/ 飛行士エール(〃∇〃)/! 面白かったです!ありがとうございます! つ☆☆☆☆☆♡
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